利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.16】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22UT0435

利用課題名 / Title

高熱伝導率無機層間絶縁材料・プロセスの開発

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

電子顕微鏡/Electron microscopy,X線回折/X-ray diffraction,ナノエレクトロニクスデバイス/ Nanoelectronics device


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

二宮 健生

所属名 / Affiliation

先端システム技術研究組合

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

福川昌宏 ,近藤尭之,府川和弘,飯盛桂子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-202:高輝度In-plane型X線回折装置
UT-101:低損傷走査型分析電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

窒化アルミニウム(AlN)は約200W/(mK)と非常に高いバルク熱伝導率を持つ材料であることが知られていが、数100nmの薄膜になるとその熱伝導率は大きく低下する[1]。また、AlNの結晶性や不純物濃度にも大きく依存し、粒径が小さくなる、あるいは不純物濃度が高くなると熱伝導率は著しく低くなる[1]。低温の製膜でも熱伝導率の高い、すなわち結晶性が高く低不純物濃度なAlN薄膜形成プロセスの研究開発に着手するにあたり、2022年度はAlN薄膜テストサンプルを用いて評価手法の検証を行った。

実験 / Experimental

AlN薄膜はMOCVD法、及びDCマグネトロンスパッタ法を用い、狙い膜厚を200nmとして製膜した。MOCVD法ではトリメチルアルミニウムを前駆体とし、アンモニアを反応ガスとして、製膜温度を500℃、1000℃の2条件とした。スパッタ法では金属アルミニウムをターゲットとした反応性スパッタ法によりAlN薄膜を製膜し、基板温度を室温, 400 ℃の2条件とした。
得られたAlN薄膜の膜構造の評価と膜厚測定を目的として、断面SEMによる観察を行った。SEM装置はJSM-7500FAを用い、エミッション電流は20 μAとして、今回はオスミウムなどのコーティングは行わなかった。結晶性評価のためのXRD測定にはSmartLab 9kWを用い、管電圧, 電流をそれぞれ45 kV, 200 mAとし、Θ-2Θ法によるout-of-plane測定により評価を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

まず始めにSEM観察条件の調整を行った。図1, 2に加速電圧をそれぞれ5, 3 kVとして取得したAlN膜の断面SEM像を示す。加速電圧を5kVとしたときはAlNがチャージアップしてしまい膜構造を観察するのが困難であったが、3kVに下げることで観察したAlN薄膜が柱状構造であることが確認できた。一般的には加速電圧を上げた方が解像度が高くなるが、観察対象がAlN薄膜の場合、膜がチャージアップしてしまい構造の確認が困難になることがわかった。200nm程度の膜厚の測定には、図1, 2に示すように最低でも5万倍程度の倍率としたく、以降は加速電圧を3kVとすることとした。
続いて結晶性の評価を行うためにXRD測定を行った。図3にMOCVDの製膜温度を500, 1000 ℃として得られたAlN薄膜のXRD測定結果を示す。両者ともSi基板起因のピーク以外では六方晶AlNの(002)ピークが見られており、c軸配向してることが確認できるが、ピーク強度は製膜温度を下げることで顕著に小さくなる。同様に、図4に示す基板温度を室温, 400 ℃としてスパッタ法により製膜したAlN薄膜のXRD測定結果からは、MOCVD品と同様にc軸配向していることが確認できるものの、製膜温度による有意な差は判別できなかった。そこで、(002)ピークを中心にロッキングカーブ測定を行い、それぞれのAlN薄膜の配向性の優劣を評価した。この結果を図5に示す。ロッキングカーブの半値幅(Full width at half maximum)からは、基板温度を400 ℃としてスパッタ法により製膜したAlN薄膜が最も配向性が高いことが確認できる。
以上に示すように、幅広く用いられている断面SEM解析・XRD分析により、AlN薄膜の製膜手法や製膜温度依存性などによる膜質の違いを十分に評価できることが確認できた。2022年度は結晶性と熱伝導率の相関を得るまで至らなかったが、2023年度以降も評価を継続し、低プロセス温度かつ高熱伝導率なAlN薄膜の形成プロセスの研究開発を継続する。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 加速電圧を5kVにして撮像したAlN薄膜の断面SEM像



図2 加速電圧を3kVにして撮像したAlN薄膜の断面SEM像



図3 製膜温度を500, 1000℃として得られたAlN薄膜のXRD分析結果



図4 基板温度を室温(RT), 400 ℃としてスパッタ法により製膜したAlN薄膜のXRD分析結果。比較として製膜温度 1000℃としてMOCVD法により製膜したAlN薄膜の結果を並べた。



図5 六方晶AlN(002)を中心に取得したロッキングカーブ。基板温度を室温(RT), 400 ℃としてスパッタ法により製膜したAlN薄膜と、製膜温度を1000 ℃としてMOCVD法により製膜したAlN薄膜を比較して示す。括弧内に示した数字はそれぞれのロッキングカーブの半値幅(Full width at half maximum)である。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] R.L. Xu et al., Journal of Applied Physics, 126 185105 (2019)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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