利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.14】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NU0075

利用課題名 / Title

ZnS結晶における室温塑性変形機構

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋大学 / Nagoya Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

塑性変形,結晶格子欠陥,化合物半導体,電子顕微鏡/Electron microscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

小椋 優

所属名 / Affiliation

名古屋大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

樋口公孝

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NU-101:反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡システム
NU-106:試料作製装置群


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

代表的なII-VI族化合物半導体の1つである硫化亜鉛(ZnS)は,暗室環境下で塑性変形させることで,室温下であっても延性的な挙動を呈す[1] .近年の理論解析[2] により,ZnS中の転位(線状の結晶格子欠陥,塑性変形の担い手)が光励起キャリアと相互作用する効果を有し,光環境下においてその運動性が低下するために脆性的な挙動を示すと考えられている.一方で,塑性変形に伴う内部組織変化については不明な点が多い.そこで本研究では,暗室環境下にて塑性変形させたZnS結晶について,電子顕微鏡を用いた内部組織観察を実施した.

実験 / Experimental

未変形ZnS結晶および暗室環境下にて塑性変形させたZnS結晶について,電子顕微鏡観察用試料を作製した.なお,試料作製において共用設備(Dimple grinder, PIPSII)を適宜使用している.作製したTEM試料について,反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡 (JEM-1000K RS)により内部組織観察を実施した.

結果と考察 / Results and Discussion

図に,未変形結晶および変形後結晶より得られたTEM像および電子回折像を示す.変形の有無によらず,(110)面を境とした2つのドメインが観察された.閃亜鉛鉱型構造の(110)面における電子回折像を図中に緑線で示す.未変形結晶では,それらに対して[111]方向を含み紙面に垂直な面で鏡面対象となる電子回折像が観察された.このようにして,未変形結晶が双晶の関係性にある2つのドメインで構成されていることがわかった.なお,未変形結晶を構成する2つのドメインの比率はおおよそ1:1であった.一方で,変形後結晶におけるドメインの体積比率は1:1から大きく変化している.これは,塑性変形によって一方のドメインが他方のドメインへとその構造を変化させていることを示唆する.暗室環境下における塑性変形が,双晶の消滅を伴って進行することが明らかになった.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図.未変形結晶および変形後結晶から得られたTEM像および電子回折像.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] Y. Oshima, A. Nakamura, K. Matsunaga, Science 360 (2018) 772-774. [2] K. Matsunaga, S. Hoshino, U. Masaya, Y. Oshima, T. Yokoi, A. Nakamura, Acta Materialia 195 (2020) 645-653. 技術支援をして下さった樋口公孝様に深く感謝申し上げます.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Shunsuke Kitou, Room-temperature plastic deformation modes of cubic ZnS crystals, Acta Materialia, 247, 118738(2023).
    DOI: https://doi.org/10.1016/j.actamat.2023.118738
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 大島優,鬼頭俊介,中村篤智,横井達矢,澤博,松永克志,“閃亜鉛鉱型ZnS単結晶における室温塑性変形機構”,日本金属学会2022年秋期大会,2022年9月21日.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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