利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.11.22】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NU0072

利用課題名 / Title

ポリマー材料の無染色解析技術構築

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋大学 / Nagoya Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

ポリマーブレンド,STEM-EELS,スペクトラムイメージ,多変量スペクトル分解,電子顕微鏡/Electron microscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

梅本 大樹

所属名 / Affiliation

旭化成株式会社

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

乙部 博英

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

武藤俊介,荒井重勇

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NU-101:反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡システム


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

軽量で柔軟性のあるポリマー材料は,その特性の異なる種類の混合によってさまざまな機械特性を持つ材料を作製可能という利点がある。これらの特性を効率よく制御するためには様々なポリマーをブレンドしたときのミクロな混錬組織を明確に観察する必要がある。しかしほぼすべてのポリマーは主としてC,O,N,Hなどの軽元素で構成され,通常の顕微観察法では十分なコントラストが得られない。これまで重元素による染色後のTEM観察,Zernike位相板によるTEM位相コントラスト法,最近ではSTEM-DPC法などが提案されている。ポリマー種の同定まで行うにはエネルギーフィルターによる元素分布マッピング,またはSTEM-EELSスペクトラムイメージ(SI)が有効であるが,コアロスを利用した手法では多くの場合電子照射損傷が懸念される。そこで我々はLow-lossスペクトルを用いて低ドーズでSTEM-SIデータセットを取得し,次元削減法を適用して各ポリマーを分離可視化することを試みた。

実験 / Experimental

ゴム関連材料として典型的な三種類のポリマーを混錬した試料をミクロトームで100nm厚さで薄片化し,STEM-EELSスペクトラムイメージデータを取得してスペクトル分離した。
使用装置は反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡JEM1000K RS及び試料冷却ホルダーである。比較のためにJEM2100分光STEM(200 kV)も併用した。

結果と考察 / Results and Discussion

STEM-EELSスペクトラムイメージデータを取得してスペクトル分離した例を図1に示す。ここでは電子照射損傷を低減するために試料を-170℃まで冷却し,一点当たりのEELS取得時間は1-5msとした。 また測定中の電子照射損傷を比較するために,ポリマーを構成する化学結合種とそれに対応するスペクトルピーク帰属を図2に示す。
以上を基にして,本ポリマーブレンドの無染色イメージングには,主としてイオン化による熱損傷が最も影響が大きく,ノックオン損傷は組織を壊すほどの影響を及ぼさないことが明らかになった。このためイオン化による損傷を低減できる高い加速電圧利用を可能とする超高圧電子顕微鏡によるSTEM-EELSスペクトラムイメージ法でスペクトル強度の強いLow-loss領域利用が有効であることが示された。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 (a)STEM-EELSスペクトラムイメージデータのMCR-LLM分解によるポリマーブレンドのADF-STEM像(上段)と構成ポリマー種の分布マッピング像(下段).
(b)各成分ごとのLow-lossスペクトル.それぞれ入射電子の加速電圧及び測定温度の違いによる比較を示した.



図2 Low-loss領域の各ピークの起源である化学結合種の分類.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究は名古屋大学未来材料・システム研究所 武藤俊介教授との共同研究として実施した。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Hiroki Umemoto, Stain-free mapping of polymer-blend morphologies via application of high-voltage STEM-EELS hyperspectral imaging to low-loss spectra, Polymer Journal, 55, 997-1006(2023).
    DOI: 10.1038/s41428-023-00786-5
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 梅本大樹, 荒井重勇, 乙部博英, 武藤俊介, ”STEM-EELSハイパースペクトルイメージング 法によるポリマーアロイの無染色マッピング”, 日本顕微鏡学会第79回学術講演会(くにびきメッセ),June 26-28, 2023
  2. H. Umemoto, S. Arai, S. Muto, ”Damage-free chemical mapping of polymer-blend morphologies by applying high-voltage STEM-EELS hyperspectral imaging to low-loss spectra" The 20th International Microscopy Congress (IMC20), Busan Exhibition and Convention Center (BEXCO), Busan, Korea, Sep. 10-15, 2023.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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