【公開日:2024.08.20】【最終更新日:2024.06.06】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KT1301
利用課題名 / Title
表面プラズモン共鳴を利用した高周波超音波センサの開発
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials
キーワード / Keywords
表面プラズモン共鳴,超音波センサ,高周波,蒸着・成膜/Evaporation and Deposition,EB
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
松川 真美
所属名 / Affiliation
同志社大学 大学院理工学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
仲辻衆登,出竿康太
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
赤松孝義
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
生体組織を非破壊かつ高分解能でイメージングする技術である光音響顕微法(PAM)が期待されている。
PAM では、特定のレーザパルスを生体へ照射し、発生した超音波を超音波センサで計測し、解析することでイメージングを行う。PAMの面内方向の分解能はレーザのスポット径、 深さ方向の分解能は超音波センサの周波数帯域に依存する。 PAMでは組織により発生する超音波の周波数も変化する。このため、共振型の一般的な超音波センサでは組織の特徴がうまく計測されない可能性がある。この問題を解決するためには、 広い周波数帯域を持った超音波センサが必要である。
近年、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用した超音波センサが注目されている。SPR型超音波センサは理論的 には広帯域でフラットな周波数特性を持つことが報告されている。 そのため、 我々はSPR型センサのPAM利用を目的に、 正確に超音波音圧の計測ができるセンサの開発を進めている。本研究では、測定空間分解能を高めるため、センシング径が調整可能なSPR型センサを作製し、 動作確認を行った。
実験 / Experimental
【センサ構造】
センサはガラスプリズムの上に台形型に銀薄膜を蒸着(KT-203:電子線蒸着装置)させたものである。 蒸着面形状を図1に示す。SPR型センサでは照射レーザと金属薄膜が重なる部分がセンシング面となる。このSPR型センサでは、 金属薄膜を台形にし、レーザの照射位置を移動させることで、 センシングサイズを連続的に変更することが可能である。
【超音波の観測】
図2に実験系を示す。水槽にこのSPR 型センサを設置した。超音波を検出する際はSPR型センサの感度が高くなる入射角73.07 度でp偏光のレーザ光(Torus mpc-300、Laser Quantum、波長532 nm、 ビーム径 1.26 mm)を照射した。照射位置は図3のようにA、 Bおよび C 点とした。集束型超音波トランスデューサ (B5K20I PF40、 JAPAN PROBE) に5 MHz のバース ト1波を入力し、SPR センサに超音波を照射した(照射音圧は約45 kPa)。SPR センサからの反射光は差動フォトダイオード (PDB435A、 THORLABS)に入射し、増幅器(NF、 SA-420F5)で増幅された。この出力の交流成分をオシロスコープ(DPO7254C、 Tektronix)で観測した。また、ニードル型超音波トランスデューサ(UT) (JAPAN PROBE、 有効径 1.00 mm)をSPR型センサの代わりに設置し、同様に集束超音波を観測した。
結果と考察 / Results and Discussion
図4にSPR型センサのA、 B及び C点で観測した波形とUTで観測した波形を示す。各波形はそれぞれの最大振幅で正規化したものである。 正規化した波形はほぼ重畳し、類似していた。 しかし、 図3の拡大波形で示すように、最大振幅を示す時間はC、 UT (有効径 1.00 mm)、 B、 Aの順で遅れていた。 SPR型センサの出力はセンシング面内の音圧の総和に比例する。 しかし、実際には音波は平面波ではないため、音圧は空間的に分布する。したがって、観測波形はセンシング径により変化するため、 波形の位相変化が観測されたと考えられる。
また、 UTの値で規格化したそれぞれの観測波形の周波数スペクトルを図5に示す。 AとBの周波数特性は高周波になるにつれて劣化した。 しかし、 Cは高周波帯でも比較的フラットな周波数特性を示した。 上記で説明したようにA、 Bの周波数特性の劣化は上記で述べた音圧分布の影響によると考えられる。 実際、 センシングサイズが大きなAはBより周波数特性の劣化が激しかった。 センシングサイズを小さくすると感度は低下するが、周波数特性は向上する。実際のPAM測定時には、これらの効果を検討し、最適なセンシングサイズを選択する必要がある。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 SPRセンサの蒸着膜形状.
図2 超音波計測の実験システム概略図
図3 蒸着膜へのレーザの照射位置.
図4 SPRセンサとUTで観測した波形の比較
図5 SPRセンサで観測した波形のスペクトル
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
-
Shuto Nakatsuji, Precise Observation of Ultrasonic Pulses Using an SPR Sensor, IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control, 70, 562-568(2023).
DOI: 10.1109/TUFFC.2023.3255257
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 仲辻衆登, 出竿康太, 市橋隼人, 松川真美, “センシング径を調整可能なSPRセンサの検討”, 電子情報通信学会 超音波研究会, 2022年12月22日
- Shuto Nakatsuji, Dezao Kota, Hayato Ichihashi, Mami Matsukawa, “Local measurement of ultrasonic pulse wave by SPR type sensors”, The 43th Symposium on Ultrasonic Electronics (USE2022), 8 November, 2022.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:1件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件