【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.22】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KT1209
利用課題名 / Title
高温超伝導体の微細構造を用いた新規物性研究
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions
キーワード / Keywords
ボンディング,イオンミリング/Ion milling,蒸着・成膜/Evaporation and Deposition,リソグラフィ/Lithography,イオンミリング/Ion milling,蒸着・成膜/Evaporation and Deposition,異種材料接着・接合技術/ Dissimilar material adhesion/bonding technology,超伝導/ Superconductivity
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
掛谷一弘 カケヤイツヒロ
所属名 / Affiliation
京都大学 大学院工学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
柳生望光,小林亮太
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
高橋英樹
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術相談/Technical Consultation
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KT-223:ウェッジワイヤボンダ
KT-224:ボールワイヤボンダ
KT-104:高速マスクレス露光装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
銅酸化物高温超伝導体は、液体窒素の沸点である絶対温度77K付近の比較的高温で電気抵抗がゼロになるということだけではなく、ニオブなどの低温超伝導体には見られない新しい物性や機能を示す。その中に、銅酸化物高温超伝導体に特徴的な異方性の高い結晶構造に由来する固有ジョセフソン接合という特徴がある。これは、高温超伝導体のc軸方向の伝導特性において、薄い絶縁体を挟んだ超伝導体間に現れる、ジョセフソン効果と呼ばれる現象が明確に表れてくることを指す。我々は、高温超伝導体に内在する固有ジョセフソン接合を同期振動させることにより生じるテラヘルツ領域電磁波の放射現象を実用デバイスとして提供するための機能開発の研究を進めている。我々がこれまで作製してきたデバイスでは、このメサ構造にバイアス電流を供給する電極を形成するために、手作業によるエポキシ樹脂塗布があったために、作業者の練度によりデバイス作製の歩留まりだけでなく、特性も変わっていた。そこで、本課題では、バイアス印加電極形成にワイヤーボンディングを用いて、デバイス特性の再現性を高めることを目的としている。
実験 / Experimental
FZ法により育成されたBi2212単結晶を劈開して大きさ1ミリ角で厚さ50ミクロン程度の平行平板状の結晶を取り出し、サファイア基板に銀ペースト(TKペースト)で接着した。接着した結晶の表面をスコッチテープで劈開した直後に電子ビーム蒸着装置を用いて厚さ20 nmのチタンを蒸着したのち、厚さ300 nmの金の膜を蒸着した。その表面に、フォトリソグラフィとアルゴンイオンミリングを用いて、メサ構造を形成した。同時にサファイア基板上に形成された電極用のパッドとメサをワイヤーボンダーで電気的に接続し、得られたデバイスの電流電圧特性、テラヘルツ発振特性を評価した。
結果と考察 / Results and Discussion
まず、ボンディング手法による結果の違いについて述べる。結論としてはボールボンドよりウェッジボンドの方が適していた。これは、ボール部分の荷重が微小メサ構造に対して大きく、ダメージを与えてしまうからだと考えられる(図1) 。一方、ウェッジボンドは引っ張り応力のかからないセカンドボンドの接点を小さく取ることができることから、接触が採れる割合いが高いことが分かった(図2)。次に、金属線による結果の違いについて述べる。これは、できるだけ細い(20 µm) 金線が適していた。細い線が適している理由は、張力による微小メサ構造への影響が抑えられるからである。また、金が適している理由は、電極に金を用いており金属的に接合しやすいからで、電極と同種のものを使うことが必要である。これらの結論をふまえた上でも、ボンディングにより微小メサ構造にダメージを与えてしまうことは現状避けられない。そこで、今後はメサ構造の長手方向にボンディング用のスペースを作製し、そこにボンディングすることで、メサ構造への影響を抑えた作製手法について取り組む。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1: ボールボンドによりメサ構造がボール状に凹んでしまった様子
図2: ウェッジボンドによる結果
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- (1) 柳生 望光、小林 亮太、掛谷 一弘、「多メサ同期制御のためのジョセフソンプラズマ発振器の開発」応用物理学会第83回秋季学術講演会21p-A302-4、2022年9月21日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件