【公開日:2024.08.20】【最終更新日:2024.06.07】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KT1158
利用課題名 / Title
表面プラズモン共鳴を利用した高周波超音波センサの開発
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
表面プラズモン共鳴,超音波センサ,高周波,蒸着・成膜/Evaporation and Deposition,EB
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
松川 真美
所属名 / Affiliation
同志社大学 大学院理工学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
仲辻衆登,出竿康太
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
赤松孝義
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術代行/Technology Substitution
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
生体組織を非破壊かつ高分解能でイメージングする技術である光音響顕微法(PAM)が期待されている。PAM では、特定のレーザパルスを生体へ照射し、発生した超音波を超音波センサで計測し、解析することでイメージングを行う。PAMの面内方向の分解能はレーザのスポット径、 深さ方向の分解能は超音波センサの周波数帯域に依存する。 PAMでは組織により発生する超音波の周波数も変化する。このため、共振型の一般的な超音波センサでは組織の特徴がうまく計測されない可能性がある。この問題を解決するためには、 広い周波数帯域を持った超音波センサが必要である。近年、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用した超音波センサが注目されている。SPR型超音波センサは理論的 には広帯域でフラットな周波数特性を持つことが報告されている。 そのため、 我々はSPR型センサのPAM利用を目的に、 正確に超音波音圧の計測ができるセンサの開発を進めている。本研究では、異なる径を持ったレーザを照射した時の観測波形への影響を検討した。
実験 / Experimental
【センサ構造】KT-203:電子線蒸着装置を用いて、BK7ガラスプリズムの上に銀薄膜を厚さ48 nmで蒸着して製作した。SPR型センサでは照射レーザと金属薄膜が重なる部分がセンシング面となる。そのため、レーザ径を変化させることでセンシングサイズを変えることができると考えた。
【超音波の観測】図1に実験形を示す。レーザビームは73.07°の角度でSPRセンサに照射した. 収束型超音波トランスデューサ(B5K20I PF40,ジャパンプローブ)にパルス信号を一波入力し, SPRセンサに超音波を照射した. レーザビームの直径は0.41 mm(条件A)または1.26 mm(条件B)とし, それぞれで超音波を観測した. 観測波形の比較用としてニードル型超音波トランスデューサ(UT) (HNR-1000, Onda, 有効径1.00 mm)を使用した.
結果と考察 / Results and Discussion
図2に, 2つの異なる径のレーザ照射時とUTの観測波形を示す. 2 MHzと5 MHzも同様に3つの観測波形は互いによく一致していた.
しかし, 条件Bで観測された波の最大振幅の観測時点は, 条件AとUTに比べて若干の遅れがあった. SPRセンサでは照射レーザと金属薄膜が重なる部分でSPRが発生するため, その部分がセンシング部分となる. つまり, 照射レーザ径が大きいと, それに伴いセンシング径も大きくなる. 今回照射した超音波は収束波のため, 平面波と違ってセンサ面に到達する波面に時間差が生じる. この時, センシング径が大きいと波面の到達時間差(例えば, センシング径中央部と端部の波面到達時間の差)が大きくなる. SPRセンサの出力はセンシング面内の音圧の総和に比例する. そのため, センシング径が大きい条件Bが条件AとUTに比べ, 波面到達時間差の影響を受けて, 最大振幅の観測時点が遅れたと考えられる.
条件Aではレーザ径が0.41 mmでUTの有効径1.00 mmより小さいため, 波面到達時間差の影響を受けにくいはずだったが, レーザ径が小さい条件Aも同様に, UTより最大振幅が条件Bと比べれば僅かであるが遅れていた. SPRセンサではレーザを斜め入射するため, センシング径は図3のように面内方向に伸びて楕円形となる. そのため, 条件Aのセンサ表面のセンシング径は, 楕円形(短径:0.41 mm, 長径:1.42 mm)となる. 短径の軸方向では波面到達時間差はほとんど生じないが, 長径の軸方向では長径がUTの有効形よりも大きいため, UTと比べて波面到達時間差の影響を大きく受けて, 最大振幅の観測時点が遅れたと考えられる. また, UTの値で規格化したそれぞれの観測波形の周波数スペクトルを図4に示す.
条件Aの周波数特性は, 高周波帯においてもフラットであった. しかし, 条件Bでは高周波になるにつれて周波数特性が劣化した. SPRセンサは光学現象を利用しているため, 理論的にはフラットな周波数特性を持つはずである. 条件Bの周波数特性の劣化は上記で述べた波面到達時間差の影響で見かけ的に応答が悪くなったことが起因していると考えられる. 条件Aに関しても, さらなる高周波帯になってくると波面到達時間差の影響を受けて周波数帯域が劣化すると思われるが, 所望であればレーザ径をさらに小さくして改善することができると予想できる. しかし, センシング径と感度の間にはトレードオフである. センシング径は, 測定周波数を考慮し, 慎重に選択する必要がある.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 超音波計測の実験システム概略図.
図2 SPRセンサとUTで観測した波形の比較.
図3 センシング径サイズ.
図4 SPRセンサで観測した波形のスペクトル
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 仲辻衆登, 出竿康太, 市橋隼人, 松川真美, “SPR型超音波センサにおけるセンシング径と周波数特性の関係”, 日本音響学会 2022年秋季研究発表会, 2022年9月14日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:1件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件