利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22TT0030

利用課題名 / Title

シリコンレンズ広帯域反射防止加工による高感度電波観測望遠鏡の実現

利用した実施機関 / Support Institute

豊田工業大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

リソグラフィ/Lithography,膜加工・エッチング/Film processing and Etching,メタマテリアルメタマテリアル/ Metamaterial


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

長谷部 孝

所属名 / Affiliation

東京大学 カブリ数理連携宇宙研究機構

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

佐々木実

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub),技術代行/Technology Substitution


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

TT-005:マスクレス露光装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

ミリ波・サブミリ波長観測天文学装置開発において望遠鏡に搭載するレンズの光学性能が科学成果に直結する。本研究ではこれまでにない高周波かつ広帯域をカバーする光学レンズを開発するため、シリコンレンズの曲面に多段の反射防止用微細周期構造をドライエッチング加工を用いて形成する手法に挑戦した。曲面へのパターン転写には、ポリビニルアルコールフィルム上に塗布したフォトレジストにパターンを露光し、フィルムと共にレンズ曲面に吸着させる手法を採用した。直径1インチのシリコンレンズ曲面に2段のフォトレジストマスクのパターン転写を行うことに成功した。

実験 / Experimental

シリコンレンズはTydex社製で、直径25 mm、中心厚2.6 mm、凸面の曲率半径131 mmを持ち、中心から円周端まで0.6 mmの高低差がある。この曲面に、平面基板と同様のレジスト成膜と、ガラスマスクからのパターニングをしても、明瞭なパターンは得られない。そこで、水溶性ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにフォトレジストをスピン成膜し真空乾燥させた。曲面への2段ステップ構造の加工を実証するため、フォトレジストにも2段のマスクパターンが必要となる。そこで、1段目のパターン用のガラスマスク (幅135 μmの正方形が180 μm周期で並んだ正方格子パターン)上にPVAフィルムを張り付け、その上にフォトレジストを成膜した (Fig. 1, (1)(2))。パターン1の露光には深UV-LEDを用いることでレジスト膜内部での露光深さを調整することが可能である (Fig. 1, (3))。反対面からi線を用いてパターン2(幅73 μmの正方形が180 μm周期で並んだ正方格子パターン)の露光をした (Fig. 1, (4))。レジスト膜付きフィルムをガラスマスクから剥がし、レジスト膜面をレンズ曲面に真空チャンバー内で吸着させ、水洗いにてPVAを溶解させたあと現像を行った (Fig. 1, (5)~(8))。

結果と考察 / Results and Discussion

上記プロセスの結果、レンズ曲面から1段目厚み約1マイクロメートル、2段目厚み約2.5マイクロメートルの2段レジストマスク構造が得られた (Fig. 2)。その後、東京大学武田先端知クリーンルームにてドライエッチングを行い、レンズ曲面に周期180 μm、深さ217 μmの2段のステップ構造を作成することに成功した(Fig. 3)。これはミリ波・サブミリ波観測用レンズの反射防止構造としては最小スケールであり、さらに多段構造という点で世界初の成果である。今後さらなる広帯域化のために3段、4段加工の実証が必要となる。そのための技術的な基盤が本課題によって立証された。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig.1, PVAフィルムを用いた2段レジストマスクの転写プロセス



Fig. 2, 1インチ径シリコンレンズ曲面に2段レジストパターンを形成した。



Fig. 3, ドライエッチングを用いてレンズ曲面に2段ステップ構造を加工することに成功した。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

・共同研究者:佐々木実 教授(豊田工業大学)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. (1) 日本天文学会2023年春季大会「曲面エッチング加工を用いたサブミリ波観測用広帯域シリコンレンズの開発」、長谷部孝, 佐々木実、立教大学、2023.3.13
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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