【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.23】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22TT0029
利用課題名 / Title
希土類遷移金属フェリ磁性体・電子正孔補償金属接合におけるスピン電荷結合
利用した実施機関 / Support Institute
豊田工業大学 / Toyota Tech.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
スピントロニクスデバイス/ Spintronics device
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
酒井 政道
所属名 / Affiliation
埼玉大学大学院理工学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
伊東 輝大,佐藤 圭,鈴木 颯人
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
Sina Ranjbar, 鷲見 聡,粟野 博之,花尻 達郎,中村 修,長谷川 繁彦
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
半金属や電子-正孔補償金属に代表されるアンビポーラ伝導体に電子スピンと正孔スピンが同時に注入されるとスピン拡散長が飛躍的に増大することが理論的に予測されている[1][2]. 本研究では, 実験によってスピン拡散長を評価するにあたり,スピン注入下におけるHall電圧の磁性電極(希土類遷移金属フェリ磁性体)からの距離依存性に注目した. また,磁性電極からのスピン注入の可否を確認するために,Hall効果で観測される横電圧に対する面内磁場依存性(Hanle 効果)を測定した. これらの測定結果に基づき,希土類遷移金属フェリ磁性体とアンビポーラ伝導体接合におけるスピン電荷結合の仕組みを理解する.
実験 / Experimental
フォトリソグラフィ法によって石英ガラス基板上にパターンニングを施し,磁性電極GdFeCo(Gd:Fe:Co=25:55:20)はRFマグネトロンスパッタリング,Yおよび測定電極のAuはEB法によりそれぞれ蒸着し,その後,Yを水素化してYH2を作製した.試料面内に垂直な外部磁場を印加しながら交流電流(50µA,480Hz)を試料に流し, 室温でHall電圧測定を行った.測定は, Hall-bar法による. Fig.1(a)に, Hall効果測定試料の模式図を示す.Hanle効果の測定は,注入スピンの角運動量方向に対して垂直(試料面内方向)に外部磁場 (0~1.2 mT)を印加しながら交流電流(50 µA, 480Hz)を流し,室温にてHall電圧の測定を行った.さらにスピンの向きに平行(試料面直方向)に外部磁場(約1mT)を印加しながら同様な測定を行った.Fig.1(b)に,Hanlel効果測定試料の模式図を示す.
結果と考察 / Results and Discussion
Fig. 2にGdFeCo電極(7)から20μm離れた電極間(3-4)で観測したHall抵抗の磁場依存性を示す. Fig. 3 には, Hall抵抗飽和値を磁性電極からの距離の関数として示した. 直線の傾きからスピン拡散長を算出すると, 約23 μmであった. Fig. 4 にGdFeCo電極 (7) から 40 μm離れた電極間(2-5)で観測した面内磁場に対する抵抗値の変化を示す.(A)がスピンの方向に対して垂直な面内磁場のみを印加した結果であり, (B)がさらにスピンの向き平行な面直磁場を印加した結果である.(A)では,面内磁場の増加と共に抵抗値が減少し,(B)では,抵抗の変化率が小さい.観測された結果をHanle効果であると仮定して,Larmor周期からスピン緩和時間のおおよその値を算出すると約40 nsecであった. この値と仮にCuの拡散係数(0.047m2/s[3]を用いて計算される拡散長は,約43μmである.これは,Fig.3から得られた値の2倍程度である.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 Schematic illustration of sample shape used for (a) Hall effect and (b) Hanle effect measurements. Two GdFeCo electrodes (7 and 8) work as the current-source and drain, respectively, and six Au electrodes (1–6) detect the Hall voltage.
Fig. 2 Out-of-plane magnetic field dependence of Hall resistivity measured between 3 and 4 Au electrodes shown in Fig. 1.
Fig. 3 Saturated Hall resistivities (ΔR) as a function of distance from GdFeCo electrode 7 shown in Fig. 1.
Fig. 4 (a) Out-of-plane magnetic field dependence of Hall resistance and (b) in-place magnetic field dependence of Hall resistance measured at a distance of 40 μm from spin infection electrode (7).
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献:[1] M. S. Aktar et al. Appl. Phys. Express 12, 053004 (2019).
[2] M. Sakai et al. J. Phys., Condens. Matter, 34, 055801 (2022).
[3] N. Motzko, et al. Phys. Status Solidi A211, 986 (2014).
・共同研究者:Sina Ranjbar(豊田工業大学)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Kaname Sato, Spin-charge-coupled transverse resistance in an ambipolar conductor YH2-based Hall-bar structure with perpendicularly magnetized current-injection electrodes, Physica Scripta, 98, 045912(2023).
DOI: 10.1088/1402-4896/acc4f2
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- (1) 伊東 輝大, 佐藤 圭, 酒井 政道, 花尻 達郎, 清水 正章, 中村 修, 鷲見 聡, 粟野 博之, 長谷川 繁彦, 第 83 回応用物理学会秋季学術講演会(仙台), 21a-P02-41, 令和4年9月21日.
- 伊東 輝大, 佐藤 圭, 増井 拓朗, 酒井 政道, 花尻 達郎, 清水 正章, 中村 修, 鷲見 聡 , Sina Ranjbar, 粟野 博之, 長谷川 繁彦, 第70回応用物理学科春季学術講演会(東京), 15p-PA01-35, 令和5年3月15日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件