【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.28】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22TT0020
利用課題名 / Title
走査プローブ顕微鏡を用いた結晶表面の研究
利用した実施機関 / Support Institute
豊田工業大学 / Toyota Tech.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
ワイドギャップ半導体,パワーエレクトロニクス/ Power electronics
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
岡田 有史
所属名 / Affiliation
京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
關裕介
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
TT-019:ナノ物性測定用プローブ顕微鏡システム
TT-029:走査型プローブ顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ワイドギャップ半導体であるβ-Ga2O3は絶縁破壊電界強度が高く、融液から成長可能であることから、次世代パワーデバイスの材料として注目されている。しかしながら、この物質はn型になる一方で、p型にするのがきわめて困難であるという短所を持つ。β-Ga2O3を用いたデバイス作製のアプローチとして、p型の層に別の物質を用いたヘテロエピタキシーが挙げられる。p型の物質にはNiOが有望である。NiO層の結晶性には、基板表面のオフセット角やモルフォロジーが影響を及ぼすと予想されるため、成長初期過程を理解することは重要であると考えられる。本研究ではβ-Ga2O3表面にNiOおよびLiドープNiOを成長させた系について、走査プローブ顕微鏡を用て観察した表面モルフォロジーの変化と、X線光電子分光によって得られたバンドアラインメントからpn接合の生成の可否を調べ、清浄条件の最適化を検討することとした。
実験 / Experimental
2種類の表面オフセット角を持つSnドープβ-Ga2O3(-201)基板をカット・洗浄し、電気炉を用い、バルクの酸化・還元が起こらない温度である400℃付近においてアニールして表面にステップ-テラス構造を作製した。そこにミストCVD法によってNiOを成長させた。原料はニッケルおよびリチウムアセチルアセトナートの水溶液とし、キャリアガスはN2とした。成長温度は650℃とし、成長時間によって膜厚を制御した。本研究では初期過程を観察するため、成長時間は1分以内とし、試料をバルクNiOとみなす試料として60分の成長も行った。成長前後の試料について、原子間力顕微鏡による観察を行い、X線光電子分光法を用いて酸素、ガリウム、ニッケルの内殻ピークの位置と、価電子帯の上限としてFermi準位付近の連続スペクトルの立ち上がりを測定した。別系統の実験で、両面研磨されたSnドープβ-Ga2O3(001)を用い、NiOを成長させていない試料と60分成長させた試料についてUV-vis透過スペクトルを測定し、短波長側の立ち上がり位置から光学バンドギャップを求めた。このバンドギャップの値とX線光電子分光の種々のスペクトルの位置からβ-Ga2O3とNiOの内殻準位とバンドのアラインメントを求めた。
結果と考察 / Results and Discussion
表面の[102]方向に沿って0.7°のオフセット角を持つβ-Ga2O3(-201)基板を用いたとき、約0.3°の基板の場合に比べて60min成長させたNiO層の結晶性に明らかな改善が見られた。NiO層の生成過程を詳細に比較すると、全体的な傾向として基板表面が直径1nm程度の粒子で覆われた後に大きく成長した粒子がランダムに表れる傾向があったが、オフセット角がある場合の方がそうした粗大粒子の出現が少なく、均一に被覆されたまま成長が起こるように見受けられた。これらのことから、成長はStranski-Krastanovモードに近いが、オフセット角が大きくなるとNiOのプレカーサー(ニッケルアセチルアセトナートと水由来の吸着物)がステップエッジに到達する確率が上がり、結晶性の良い成長モードへと移行するものと思われる。さらにオフセット角を最適化することで、ステップフロー成長に近づいて行くことが期待される。Fig. 1に、オフセット角約0.7°の場合に取得されたX線光電子スペクトルの一例と、それらと透過スペクトルをあわせて用いて作製されたバンドアラインメントの概略を示す。オフセット角の有無によらず、pn接合に近い性質が発現していることが見て取れる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 (a) 異なる成長時間で得られたNiO/β-Ga2O3試料のXPSスペクトル.(b) XPSデータを元にして得られたバンドアラインメント.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・X線光電子分光と透過スペクトルからのバンドのエネルギーダイアグラムの作製は、Krautらの方法[1]および同様の系への適用例[2]に沿って行った。
・参考文献:[1] J. R. Waldrop, R. W. Grant, E. A. Kraut, Appl. Phys. Lett. 54, 1878 (1989).
[2] S. Ghosh, M. Baral, R. Kamparath, S. D. Singh, T. Ganguli, Appl. Phys. Lett. 115, 251603 (2019).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- (1) Yusuke Seki, Arifumi Okada, Yuki Kajita, Hiroyuki Nishina, kaKohei Kadono, "Effect of Surface Orientation and Morphology of β-Ga2O3 Substrates on the Initial Stage of NiO Epitaxial Growth", THE 22ND INTERNATIONAL VACUUM CONGRESS, Tue-PO1B-10 (札幌), 令和4年9月13日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件