利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.24】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22TT0003

利用課題名 / Title

強磁性体-非磁性体界面制御による磁壁構造の制御

利用した実施機関 / Support Institute

豊田工業大学 / Toyota Tech.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

スパッタリング/Sputtering,EB,スピントロニクスデバイス/ Spintronics device


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

田中 雅章

所属名 / Affiliation

名古屋工業大学大学院工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

粟野博之

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

TT-021:偏光顕微鏡(青色レーザー照射可能)
TT-002:多機能薄膜作製装置
TT-014:電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)(電子ビーム描画機能付属)
TT-022:磁気光学効果測定装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

貴金属薄膜に電流を流した場合、スピンホール効果により貴金属層を流れる電子にスピン分極が生じる。強磁性体層と貴金属層の2層からなる細線の場合、貴金属層で生じたスピン分極により強磁性体層にスピン流が流れ、このスピン流は強磁性体層の磁気モーメントにスピン軌道トルク(SOT)を与える。強磁性体層に存在する磁壁はこのSOTによりその位置を高速で移動できるので、磁壁をデジタルデータとして扱い、電流で高速移動する新しい磁気メモリーに利用できる。
本研究では、貴金属層と接する強磁性体層の元素の違いにより、貴金属層から与えられるSOTが強磁性体層の磁気モーメントに与える影響に変化が生じるか調べた。強磁性体層として{Tb/Co}5多層膜を、貴金属層として強磁性金属の上下にそれぞれPt膜を用いた「貴金属層/強磁性体層/貴金属層」構造の細線を用意した。上下のPt層と接する強磁性体層のCoの膜厚を0 nmから0.60 nmの範囲で変えた試料を用意した。
本研究から、Pt層と接する強磁性体層のCoの膜厚が厚くなるほど、SOTが強磁性体層の磁気モーメントに与える影響が大きいことがわかった。このことから、界面元素を適切に選択することで、SOTによる効率的な磁壁駆動が可能になり、駆動速度を高速化することが可能であることがわかった。

実験 / Experimental

線幅10 μm、長さ50~80 μmの細線を電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)と多機能薄膜作製装置を用いたリフトオフ法で作製した。細線の構造は、Pt(3 nm)/Co(tBottom)/{Tb(0.26 nm)/Co(0.60 nm)}5/Tb(0.26 nm)/Co(tTop)/Pt(3 nm)である。強磁性層には{Tb/Co}n多層膜を、貴金属層にはPtを用いて、貴金属層/強磁性層および強磁性/貴金属層の界面にあるCo層の膜厚tToptBottomを変化させ、膜厚差Δt (=tToptBottom) を、0、±0.36、±0.60 nmと変えた5つの試料を作製した。
細線に磁区を生成して、細線長手方向へ磁場Hを印加した状態で細線にパルス電流印加して、電流の印加前後の磁区の位置を偏光顕微鏡で調べ、電流印加による磁壁の駆動速度の磁場H依存性を測定した。また、強磁性体層の磁気特性は磁気光学効果測定装置を用いて調べた。

結果と考察 / Results and Discussion

磁場Δt=0の試料では外部磁場Hを変化させても磁壁の速度がゼロであった。この試料では、上下のPt層からは互いに逆方向のSOTがかかり、SOTによる磁気モーメントへの寄与が同じため、互いのSOTが相殺されたと考えられる。一方で、外部磁場Δt≠0の試料では、Δtの符号が逆の場合は、磁壁の移動方向が逆になることがわかった。磁壁の移動方向から、界面Co層が厚い方のPt層からのSOTが優勢に作用して磁壁が駆動していることが分かった。以上より、貴金属層と接する界面Co層の膜厚を厚くした磁性細線では、SOTによる磁気モーメントへの寄与が向上することがわかった。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

・共同研究者:・粟野博之教授(豊田工業大学)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Takafumi Suzuki, Correlation between interlayer exchange coupling and domain wall velocity in multilayered magnetic wires, Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 565, 170218(2023).
    DOI: https://doi.org/10.1016/j.jmmm.2022.170218
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. (1) M. Sugino, D. Abe, F. Niimi, T.Suzuki, M. A. Tanaka, S. Honda, H. Awano, and K. Mibu, "Effect of Interfacial Co Thickness in Nonmagnetic-heavy-metal/Ferromagnetic-metal Wires on the Electric-current-driven Phenomena of Magnetic Domain Walls", ICMFS-2022 (Okinawa), July 12, 2022
  2. 阿部大悟,新實史也,杉野真健,田中雅章,本多周太, 粟野博之, 壬生攻、「非磁性重金属層と強磁性層の界面状態がスピン注入効率に与える影響」第82回応用物理学会秋季学術講演会(宮城)、2022年9月
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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