【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.25】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT1198
利用課題名 / Title
IrOx薄膜の形成
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
スパッタリング/Sputtering,蒸着・成膜/Evaporation and Deposition,IoTセンサ,ナノシート
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
内田 建
所属名 / Affiliation
東京大学工学系研究科マテリアル工学専攻
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
梅田竜生
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
IrO2の(110)面は,150 K程度の低温であってもCH4のC-H結合を開裂させることができる[1].今回,IrO2(110)ナノシートを利用した低消費エネルギーなCH4ガスセンサの開発を目指し,東京大学武田クリーンルームの設備を利用してIrOxの成膜を検証した.
実験 / Experimental
20 mm角のSiO2/Si基板に対して,武田クリーンルームのスパッタ装置(CFS-4ES)を用い,IrOxを約30 nm堆積した.スパッタの条件はBase pressure 5×10-3 Pa,RFパワー80 Wとした.スパッタ時にチャンバー内にArとO2を総流量が20 sccm,スパッタ時のチャンバー内圧力が0.67 Paとなるように導入し,O2の流量比を10,20,40%と変化させた.IrOx薄膜を堆積した後,研究室の装置を用いてO2雰囲気下でアニールを行い,専攻の共通機器を利用してX線回折(X-ray Diffraction,XRD)測定を行った.
結果と考察 / Results and Discussion
反応性スパッタリングにおいてスパッタ中のO2流量比を10%として堆積したIrOxナノシートのO2アニール前(as-depo膜)とO2アニール後のXRDスペクトルをそれぞれ図1に示す.as-depo膜のXRDスペクトルでは基板のSi由来のピークしか見られなかったのに対し,O2アニール後のXRDスペクトルではルチル構造のIrO2結晶由来のピークが見られるようになった.この結果より,反応性スパッタリングによって堆積させたIrOxナノシートは,スパッタ直後はアモルファス状であり,スパッタの後O2雰囲気下でアニールすることでルチル構造のIrO2結晶が成長し,CH4との反応が期待できる(110)面を含む多結晶膜が得られたと考えられる.また,アニール後のIrOxナノシートのXRDスペクトルから金属Ir結晶に由来するピークは確認されなかった.同様にスパッタ中のO2流量比を20%,40%と変化させて堆積したIrOxナノシートの,500℃,30分間のO2アニール後のXRDスペクトルを図2に示す.スパッタ中のO2流量比を20%以上にすると,O2流量比10%で堆積した場合と比べて,XRDのピーク幅が広がった.これはO2アニール後のIrOxナノシート中のIrO2結晶子の大きさが小さくなったためと考えられる.スパッタ中のO2流量比の増加に伴いas-depo膜中のO原子の数が増え,O2雰囲気下でアニールを行った際に結晶化が始まる点(種結晶)の数が増えた結果,体積当たりの結晶子の数が増え,結晶子1つ1つの大きさが小さくなったと考えられる.結晶粒が単一の結晶子からなる場合は粒径と結晶子の大きさは同義となるが,複数の結晶子からなる多結晶体の粒子であった場合は,XRDのピーク幅から求めた結晶子の大きさは電子顕微鏡等で観察できる粒径に比べて小さくなることが多い.多結晶薄膜中の結晶粒径は膜厚に影響を受けるとされるため,O2流量比10%で堆積したIrOxナノシートとO2流量比20%以上で堆積したIrOxナノシートが,膜厚の値が近いにも関わらず結晶子の大きさに2倍以上の差が見られるのは,1つの結晶粒中に含まれる結晶子の数が多くなっているためと考えられる.このことから,O2流量比20%以上で作製したIrOxナノシートはO2流量比10%で作製したIrOxナノシートに比べて粒界が多く形成されている可能性があると考えられる.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 スパッタ時O2流量比10%で作製したIrOxナノシートの,as-depo膜及び500℃,30分間のO2アニール後のXRDスペクトル
図2 スパッタ時O2流量比20%及び40%で作製したIrOxナノシートの,500℃,30分間のO2アニール後のXRDスペクトル
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献:[1] Z. Liang et al., Science 356, 299-303 (2017)
・科研費 18H05243, 19H00756
・JST-CREST JPMJCR19I2
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 梅田竜生,田中貴久,内田建,“IrOxナノシートによるCH4センサの作製” the 69th JSAP Spring Meeting 2022年3月24日
- Tatsuki Umeda, Takahisa Tanaka, Ken Uchida, “Fabrication and Characterization of IrOx Nanosheets for Methane Sensors” 2022 MRS Fall Meeting & Exhibit 2022年11月28日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件