利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.04.24】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22CT0134

利用課題名 / Title

チョコレート油脂の結晶多型に対するせん断流動の効果

利用した実施機関 / Support Institute

公立千歳科学技術大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

食品製造プロセス,赤外分光,X線回折,放射光/Synchrotron radiation,赤外・可視・紫外分光/Infrared and UV and visible light spectroscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

川端 庸平

所属名 / Affiliation

酪農学園大学農食環境学群食と健康学類

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

川端庸平

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

大越研人

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

CT-016:X線小角散乱装置(SAXS)
CT-002:フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)/赤外顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

チョコレートは製造時において、ココアバターの5型結晶と呼ばれる準安定状態を作り出すことが重要である。テンパリングは温度を上げ下げしながら5型結晶を成長させる作業であるが、同時に十分攪拌し、せん断流動を与えることが効率的な5型結晶成長のポイントであることが報告されている。本研究では、レオメーターによってせん断ひずみを制御した状態でチョコレートを作成し、5型結晶の成長条件とせん断流動場との関係を調べるものである。

実験 / Experimental

試料はカカオマス(大東カカオ製 クイックメルト カカオマス)を60℃で溶融させた後、レオメーター(MCR-301:AntonPaar社製)の共軸2重円筒の外筒に入れ、ココアバターの融点33℃以下の27℃一定にしてせん断速度800 s-1を5分間かけ、せん断を印加したサンプルを取り出して15℃のインキュベーターで24時間保存して固めた。比較のためにせん断を印加せずインキュベーターで保存したものも用いた(各サンプルコード:CN800,CN0)。実験は広角X線散乱(WAXS)ならびにFT-IR測定を行い、せん断の有無による結晶多形の違いを確認した。広角X線散乱では副格子パターンから、FT-IRではカルボキシル基の吸収ピークに差異が認められるか検証した。

結果と考察 / Results and Discussion

図1はせん断の有無によるWAXSプロファイルの差異を示したものである。両サンプルとも散乱角19°近傍に副格子構造のピークが現れており、その繰り返し距離は0.54 nmとなった。この値はMalssenらによって示されたココアバターの結晶多形5、6型由来の値とほぼ一致しており、これらの結晶多形が形成されていることが明らかとなった [1]。散乱角19°近傍のピーク強度はせん断速度800 s-1を与えたサンプル(CN800)で1.2倍程度強くなっており、また、散乱角21°近傍に現れている2~4型の結晶多形由来のピーク強度がせん断によって弱くなったことを考えると、せん断を与えるとココアバターの結晶化が促進されるものと考えられる。
図2はFT-IRの結果で、C = O 伸縮振動近傍のピークを示したものである。CN800で高波数側にシフトしていることから、せん断を印加することによって分子間の水素結合が弱まったことを意味している。これは、せん断印加の効果が温度上昇と同じ効果を与えていることを示しており、せん断によって分子が再配列する効果を促進しているのではないかと考えている [2]。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 27℃、せん断速度800 s-1を5分間印加ならびに静止場でテンパリングしたカカオマスのWAXSプロファイル



図2 27℃、せん断速度800 s-1を5分間印加ならびに静止場でテンパリングしたカカオマスのFT-IRスペクトル。C=O伸縮振動由来のピーク近傍の波数領域を拡大表示している。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] K. Malssen et al., JAOCS, 76, 6 (1999).
[2] M. Okuno et al., Adv. X-Ray. Chem. Anal., Japan 50, 61 (2019).


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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