【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2024.03.25】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22CT0071
利用課題名 / Title
31P NMRを用いたリン脂質の定量分析法の開発
利用した実施機関 / Support Institute
公立千歳科学技術大学 / Chitose IST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
リン脂質の定量分析法の開発,核磁気共鳴装置,核磁気共鳴/Nuclear magnetic resonance,核磁気共鳴/Nuclear magnetic resonance,細胞・組織再生誘導材料/ Materials for inducing cell and tissue regeneration
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
樋口 央紀
所属名 / Affiliation
株式会社機能性植物研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
動植物中に広く存在するリン脂質は、両親媒の性質を有することから主に細胞の膜脂質として存在している。膜脂質は活性酸素などによる酸化、過酸化反応により酸化、過酸化され、過酸化脂質などを生成し、これが生体の老化等に関与することが示唆されている。このことから、リン脂質の分析は重要であり、特にリン脂質のクラス分析(PC、PE、PS、PG、PI、CLなど)の需要が高くなっている。リン脂質は特異的な発色団、官能基、蛍光などを有していないことから、一般的な定量が難しい。これまでにTLC法、HPLC-UV法、HPLC-RI法、HPLC-ELSD法が用いられてきた。TLC法は、TLCにより各リン脂質を分離し、検出、定量する方法であるが、TLCの操作に経験が必要であり、再現性が難しい。また、各種HPLC法では、使用できる溶媒が限られ、検出感度も低い。また、ELSDなどの特殊な装置を使用する必要がある。近年では、HPLC-ESI-MS/MSによるリン脂質の網羅的な分析手法もあるが、定量のための標準品がすべて網羅できない点、イオンサプレッションによる定量精度の問題などがあり、いずれも課題の多い分析方法である。
本課題では、リン核一次元核磁気共鳴スペクトル(31P-NMR)によるリン脂質クラスの定量方法(NMR溶媒の検討、pH、温度条件の最適化など)を検証し、測定時間、測定精度、分析コストなどについて検討する。
実験 / Experimental
1.試料および試薬等
(1)試料
リン脂質の測定試料として、凍結乾燥したホヤの乾燥粉末、レシチン、卵由来(富士フィルム和光純薬)を使用した。
(2)試薬及び標準試薬
試薬および標準試薬は、以下を使用した。
コール酸・Na(東京化成工業)、EDTA・2Na(同仁化学研究所)、重水 99.8%(富士フィルム和光純薬)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(富士フィルム和光純薬)、O-ホスホ-L-セリン標準物質(富士フィルム和光純薬)
2.溶液の調製方法等
(1)1M Tris-HCl緩衝液(pH7.0)
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン12.1gを秤量し、イオン交換水約20mLで溶解させ、6M塩酸でpHを7.0に調製した。pH調製後、イオン交換水で100mLにメスアップした。
(2)EDTA溶液
EDTA・2Na2を2.5g秤量し、1M Tris-HCl緩衝液(pH7.0)25mLに溶解した。
(3)20%界面活性剤溶液
コール酸ナトリウムを2g秤量し、重水10mLに溶解した。
(4)内部標準溶液
ホスホセリン20mgを秤量し、EDTA溶液2mLに溶解した。
3.試験溶液の調製
ホヤの総脂質抽出物、レシチンを10mg秤量し、20%界面活性剤溶液を1mL、内部標準溶液1mLを添加した。窒素置換後、50℃、1時間インキュベートした。インキュベート後、0.7mLをNMR試料管(φ5mm)に添加し、NMR測定用サンプルとした。
4.NMRの測定、解析方法
31P-NMRの測定方法は、プローブ温度:30℃、待ち時間:2sec、取込時間:4sec、ダミースキャン:4回、積算回数:512回とした。
解析方法は、内部標準物質として使用した、ホスホセリンの化学シフト値を、4.54ppmとして、各リン脂質クラスを同定した。
結果と考察 / Results and Discussion
1.結果
レシチン、卵由来の31P-NMRを測定したところ図1のチャートが得られた。内部標準として使用した、ホスホセリン(PSER)と推定されるピークの化学シフト値をδ4.54ppmに設定した。その結果、δ-0.108にPCと推定されるピークが確認できた。また、δ0.447にPEと推定されるピークが観測された。PEの周辺には小さな複数のピークが確認できたが、同定することができなかった。また、ホヤの総脂質抽出物について、31P-NMRを測定したところ、内部標準のピーク以外のピークが小さく、リン脂質のピークの観測ができなかった。
2.考察
31P-NMRの測定によって、レシチン、卵由来のPCとPEのピークが確認できたが、化学シフト値が文献値と0.03ppm程度異なることから、再度条件を検討し、化学シフト値が一致する条件を見出す必要がある。また、ホヤの総脂質抽出物については、内部標準以外のピークが観測されなかったため、総脂質抽出物からリン脂質画分を調製し、リン脂質の含有率を高めてから再度測定を行う必要があると判断した。今後の予定として、内部標準物資の再選定、各種リン脂質標準品による化学シフト値の確認、測定溶媒の再検討を実施したいと考えている。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図 レシチン、卵由来の31Pスペクトル
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考論文
①Journal of Oleo Science 2018, 67, 1279-1289.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件