利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.07.28】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22OS0034

利用課題名 / Title

多機能ゼオライト触媒の開発

利用した実施機関 / Support Institute

大阪大学 / Osaka Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者)/Internal Use (by ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials

キーワード / Keywords

carbon, nanopore, fuell cell,電子顕微鏡/Electron microscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

西山 憲和

所属名 / Affiliation

大阪大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

三宅浩史

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術相談/Technical Consultation


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

OS-009:200kV回折コントラスト電子顕微鏡
OS-003:200kV原子分解能走査透過分析電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

ベンゼン, トルエン, キシレン(BTX)は石油化学産業における重要な物質である. 従来は, ナフサの水蒸気分解により製造されてきたが1), 近年は,天然ガスに豊富に含まれるエタンから直接BTXを生成するエタンの脱水素芳香族化(EDA)反応が注目されている. これに伴い, EDA反応向けたゼオライト触媒開発が盛んに行われている. EDA反応の触媒として, MFI型ゼオライト(ZSM-5)が幅広く検討されている.MFI型ゼオライトはその細孔径がベンゼン環とほぼ同等であることから, 高いBTX選択性を示す. 特に,Zn2+でイオン交換したZnZSM-5は, エタンからBTXへの反応を促進するとの報告がある2)。しかしZnZSM-5では、ゼオライト骨格を構成するAl由来の強酸点により,コークが生成し, 急速に触媒失活が起こる.この問題の解決策の一つとして, ゼオライト粒子内の拡散性の制御がなされてきた.ゼオライトのミクロ孔は, 細孔径が小さく拡散抵抗が大きい.そこでメソ孔の導入や微粒子化によって拡散性を向上させ, 触媒寿命を向上させている3).またゼオライトの酸性質の制御も行われている.過剰なAl由来の強酸点の弱酸化を行うことで4), 触媒の長寿命化が図れる.そこで本研究では, EDA反応の触媒として, MgとZnを修飾したZSM-5を合成した.この触媒では細孔内のZnにより, エタンから選択的にBTXへの変換を進行させ, そしてMgによる弱酸化効果により, コーキングが抑制されると期待した.

実験 / Experimental

硝酸マグネシウム6水和物,脱イオン水, 市販のHZSM-5 (TOSOH, SiO2/Al2O3=23.9) 0.5 gを乳鉢内で混合した.その後, 90 ℃乾燥器内で乾燥させ, 5 ℃/min, 550 ℃, 5 h空気中で焼成することでMg/HZSM-5を得た. 次に, Mg/HZSM-5, 硝酸亜鉛6水和物, 脱イオン水を, 3:6:200の重量比で調製した前駆溶液を, 80 ℃で一晩攪拌した.その後, 得られた固形物を回収し, 遠心分離機を用いて脱イオン水で, 11000 rpmの条件で3回洗浄し, 90 ℃で乾燥させた. 乾燥させたサンプルを, 5 ℃/ min, 550 ℃, 5 h空気中で焼成し, Mg/ZnZSM-5を得た.比較として,  HZSM-5をZnイオン交換したZnZSM-5も調製した. キャラクタリゼーションとして, XRD, SEM, EDX, N2吸着, TEM, STEM, NH3-TPD, CD3CN吸着FT-IRおよびCO2-TPD測定を行った.またEDA反応試験を実施し, 試験後にTG測定を行った.反応試験は大気圧固定床流通型反応器を用い, W/F=7.5g h/mol, 反応温度 873 K , キャリアガス(He)流量 1.86 ml/min, エタン流量 2.60 ml/minの条件で行った.

結果と考察 / Results and Discussion

XRD測定の結果から, 全てのサンプルにおいて, MFI型ゼオライト特有のピークが得られた. また, NH3-TPD, CD3CN吸着FT-IRおよびCO2-TPD測定により, Mgを導入したサンプルでは, 強酸点の減少及び固体塩基性の発現を確認した. さらに, N2吸着測定により, Mg/ZnZSM-5においてのみ, メソ孔の形成が確認された. またTEM像から, Mg/ZnZSM-5において,結晶表面に化合物の形成が確認された. STEM-EDSにより詳細な分析を行った結果, 化合物はZinc silicateであることがわかった. 
EDA反応試験による触媒性能比較から, HZSM-5およびMg/HZSM-5は, BTXを生成しなかった. 一方,ZnZSM-5およびMg/ZnZSM-5は高いBTX収率を示し, Zn種がEDA反応の活性点であることを確認した. BTX収率の経時変化に着目すると, Mg/ZnZSM-5では3時間後もZnZSM-5よりはるかに高いBTX収率が確認された. また使用済み触媒のコーク量を測定した結果,  Mg/ZnZSM-5(6.6 wt%)は,ZnZSM-5(8.3 wt%)より少ないコーク生成量を示した. Mg/ZnZSM-5の適度な酸性質とメソポーラス性により, コーク生成は抑制され, その結果, BTXの収率及び触媒寿命が向上したと考えられる.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

参考文献1)        A. Hagen et al., Catal. Rev. Sci. Eng., 2000, 42, 403-437.2)        Y. Ono, Catal Rev Sci Eng., 1992, 34, 179-226.3)        Y. Wang et al., Energy Fuels, 2000, 34, 3100–3109. 4)        R. Inoue et al., Fuel, 2021, 305, 121487.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Tomoka Sumi, Mg and Zn co-doped mesoporous ZSM-5 as an ideal catalyst for ethane dehydroaromatization reaction, Catalysis Science & Technology, 12, 7010-7017(2022).
    DOI: 10.1039/D2CY01129H
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 鷲見知香, 三宅浩史, 内田幸明, 西山憲和, Mg, Zn導入ZSM-5を用いたエタンの脱水素芳香族化, 第 38 回ゼオライト研究発表会, (徳島)2022年12月1日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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