【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2024.03.12】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22OS0010
利用課題名 / Title
脂肪酸/界面活性剤分子集合体を介した脂質微粒子の調製
利用した実施機関 / Support Institute
大阪大学 / Osaka Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials
キーワード / Keywords
分子集合体, ソフトマター,電子顕微鏡/Electron microscopy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
田口 翔悟
所属名 / Affiliation
兵庫県立大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
脂質ナノ粒子(LNP)は、生体適合性および徐放性があることからドラッグデリバリーシステムや農薬への応用が期待されている。従来のLNP作製方法は加熱・冷却プロセスを伴う回分式操作であり、内封する薬剤への熱による影響・冷却過程における粒子間の凝集などの課題がある。本研究では希釈操作による脂肪酸/界面活性剤分子集合体を介したLNP作製に取り組み、LNPの物性評価と形成過程観察を実施した。大阪大学ARIMの協力の元、脂肪酸/界面活性剤分子集合体の希釈後の物性評価およびその形状観察からLNP形成の可能性を得た。
実験 / Experimental
分子集合体の調製には脂肪酸(oleic acid (OA), linoleic
acid (LA))および界面活性剤3-[(3-cholamidopropyl)
dimethylammonio]-2-hydroxypropanes-ulfonate (CHAPSO)を用いた。まず、OAベシクル(20 mM)を調製した。OAベシクルとCHAPSO溶液(20 mM)を異なる体積比で混合し、総濃度20 mMのOA/CHAPSO分子集合体を得た。混合比率xOA, xLAは次に定義する:xOA, xLA
= [OA or LA]/([OA or LA]+[CHAPSO])
OA/CHAPSOおよびLA/CHAPSO分子集合体の回分式希釈を実施し、脂質分子間のパッキング密度評価を行った。パッキング密度評価には蛍光プローブ分子Laurdanを用いた。Laurdanは分子周辺の極性環境に応じた蛍光スペクトルを示すため、分子集合体内部の極性環境に基づいた脂質分子間のパッキングが評価できる(Taguchi et al., 2021)。次に、希釈前後の分子集合形態の変化について、透過型電子顕微鏡(TEM)画像観察から球状の分子集合体の集合形態の変化を観察した。
結果と考察 / Results and Discussion
CHAPSOが豊富な混合比率において、Laurdan分子の蛍光スペクトルは総濃度20 mMでは440 nm付近と490
nm付近の両方でピークを示したのに対して、1 mM では490
nm付近のピーク強度の減少が確認された。これはLaurdan分子周辺の極性環境が疎水的に遷移したことを示唆しており、分子集合体内部のパッキング密度の上昇を意味する。次に、パッキング密度の上昇が観察された条件におけるTEM画像観察から球状の分子集合体の形成が確認された(図1)。したがって、希釈後のパッキング密度の上昇は脂肪酸分子がより密に集合することによって引き起こされたと考えられる。
LNPの作製は加熱、超音波処理、冷却の順序で行う回分式が一般的である(Van
Lysebetten et al., 2021; Wijakmatee et al.,2022)。そのため、加熱による内封する薬剤やペプチド等の変性が懸念される。脂肪酸/界面活性剤分子集合体を介したLNP作製は加熱冷却を伴わないため、LNPに封入するペプチドの熱変性の抑制が期待できる。本手法によるLNP作製には希釈過程における界面活性剤の挙動が重要であり、後の実験で、希釈された各分子集合体の内部脂質分子の徐放挙動を評価しており、組成比に起因する徐放挙動の差が観察された。これは希釈後のLNPにも界面活性剤が含まれていることが予想される。新規LNP作製手法として、OA/CHAPSOおよびLA/CHAPSO分子集合体の希釈操作を検討した結果、CHAPSO分子が豊富な組成にてLNPが作製できた。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. LA/CHAPSO分子集合体(xLA=0.3)の希釈による分子集合形態の変化
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考文献:S. Taguchi et al., Crystals 11(9), 1023 (8
pages) (2021); D. van Lysebetten et al., ACS Appl. Mater.
Interfaces 13(5), 6011–6022 (2021); T. Wijakmatee et al., Ind. Eng. Chem. Res.
61, 9274–9282 (2022)
謝辞:本研究を進めるにあたって電子顕微鏡観察にご助力頂きました教授・光岡薫先生、特任研究員・高木空様に感謝申し上げます。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件