利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.16】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NM0047

利用課題名 / Title

透過型電子顕微鏡を用いた高濃度NVアンサンブルの作製

利用した実施機関 / Support Institute

物質・材料研究機構 / NIMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

電子顕微鏡/Electron microscopy,スピントロニクス/ Spintronics,量子効果/ Quantum effect


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

早坂 京祐

所属名 / Affiliation

早稲田大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

倉嶋敬次,長井拓郎

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NM-401:300kV収差補正電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

ダイヤモンド中の窒素(Nitrogen)と隣接する原子空孔(Vacancy)がなす欠陥であるNVセンターは量子センシングや量子通信の候補としても注目を集めている。量子センシングにおいて、NVアンサンブルを用いた磁気センサは、NVセンターの数Nに対して磁気感度が√Nに比例する。高濃度なNVアンサンブルを作製するために最も用いられる方法は、シングルエンド加速器を用いた電子照射である。窒素を多く含む試料に対して、数MeVに加速された電子ビームをダイヤモンド中の炭素原子に衝突することで原子空孔を生成させ、アニール処理によりNVセンターを形成する。しかし、高濃度なNVアンサンブル作製には電子照射時間を増やす必要があり、このプロセスで作製された世界最高濃度のNVアンサンブルにおいては電子照射時間が285時間も必要になっていることから、今後さらなる高濃度なNVアンサンブルを作製することが難しいと予想される。そこで、本研究では透過型電子顕微鏡(TEM)から照射される電子ビームを用いて高濃度NVアンサンブルを作製した。TEMでは、電子ビーム径を絞ることが出来るため、試料全域への電子照射は出来ないものの、単位時間当たりの電子照射量を増やすことが出来るため、結果的にシングルエンド加速器の照射量を上回る電子照射が可能になる。

実験 / Experimental

 本研究では加速電圧300 keVのTEMを用いた。本研究で用いた(111)ダイヤモンドでは、炭素原子をはじき出すための閾値エネルギーが220 keVであるためである。なお、試料は高温高圧(HPHT)法によって合成された窒素濃度3×1019 cm-3の試料を用いた。
 大きさ2mm四方のダイヤモンド単結晶小片をCuグリッドに乗せてTEMに搬入する。このとき、電子照射量の算出にあたり事前に電子ビームの電流密度を測る必要があるため、試料固定時は電子が透過出来るようなわずかに隙間を作ってセットする必要がある。試料への照射の前に、試料の外で電子ビームを観察し、必要に応じてビームの電流値を調整する必要がある。本研究では装置に備え付けのファラデーカップの値から単位時間当たりの電子dose量を計算し、電子照射時間を決めた。集束レンズの励磁を調整することで試料に照射される電子ビーム径を調節できる。 電子照射後は試料を1000℃で2時間アニール処理を行い、形成された原子空孔を拡散させることでNVセンターを形成した。フォトルミネッセンス測定での発光強度から形成されたNVアンサンブルの濃度を算出した。

結果と考察 / Results and Discussion

電子照射量を増やすごとにNVセンター濃度の増加が確認された。作製されたNV濃度は最高で3×1017 cm-3であった(電子照射量1×1020 cm-2)。電子照射量が1×1018 ~ 1×1020 cm-2の範囲では直径10μmの電子ビームが照射され、狙い通りに直径10μm程度の局所的なNVアンサンブルが形成された。一方で直径2μmの電子ビームが照射された領域では電子ビームが広がってしまい、直径8μm程度の局所的なNVアンサンブルが形成されてしまった。このため今後はさらなる条件出しが求められる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究は文部科学省光・量子飛躍フラグシッププログラム(Q-LEAP)JPMXS0118067395の助成を受けたものである。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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