【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.18】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT1190
利用課題名 / Title
金アシスト劈開法による単層遷移金属ダイカルコゲナイドの作製
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
蒸着・成膜/Evaporation and Deposition,原子薄膜/ Atomic thin film
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
石坂 香子
所属名 / Affiliation
東京大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
坂野昌人,赤塚俊輔,渡邊瀬名
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
グラファイトや遷移金属ダイカルコゲナイドに代表されるような層状物質は、その層数が1層になるとバルク結晶では発現しない特異な物性が発現することが知られている。これは、結晶構造の対称性の変化や2次元閉じ込め効果による電子構造の変化によるものである。そういった単層物質の物性研究は、グラファイトの単原子層物質であるグラフェンの簡便な作製方法として開発された、スコッチテープを用いた剥離法と有機ポリマーを用いたドライ転写技術の発展によって精力的に行われるようになった。しかしながら、広く用いられているSiO2基板上に単層を得る転写手法では、単層物質が得られる層状物質の数に限りがあるという課題があった。そのような背景のもと、平坦な金基板上では、SiO2上への転写では得られない単層の遷移金属ダイカルコゲナイド試料を作製することができることが報告された[G. Z. Magda et al., Sci. Rep., 5, 14714 (2015).]。本研究では、金基板に新たな単層遷移金属ダイカルコゲナイドを作製し、角度分解光電子分光による電子状態の直接観測を通して単層物質における新奇物性の開拓を行うことを目的として研究をおこなった。研究対象となる遷移金属ダイカルコゲナイドは, これまで当研究室においてSiO2を用いた転写による単層試料作製と角度分解光電子分光による電子状態観測の実績があるMoTe2と WSe2、および転写で得られた試料における電子状態観測の報告例がないPtTe2とPtSe2を選定した。
実験 / Experimental
金基板上に単層の遷移金属ダイカルコゲナイドを得るためには、数 nm未満の平坦な金基板が必要であることが知られている。そこで本研究では、4インチ高真空EB蒸着装置(UT-700)を用いて、平坦なSiO2/Si基板上に金原子を蒸着し、その上に遷移金属ダイカルコゲナイドを転写した。SiO2と金の接着をよくするために、それらの間にTi原子を2 nm積層した。金の厚みは、5 nmから50 nmとした。また、高真空槽にて蒸着した金が大気中に曝されると、1時間も経たないうちに単層の遷移金属ダイカルコゲナイドが得られなくなることが知られている。そこで本研究では、高真空槽から大気中に金/Ti/SiO2/Si基板を取り出してから1分以内に遷移金属ダイカルコゲナイドを転写した。
結果と考察 / Results and Discussion
金(5 ~50 nm)/Ti (2 nm)/SiO2/Si基板上に、MoTe2、WSe2、PtTe2およびPtSe2の全てについて、50 umよりも大きい単層試料を得ることに成功した(図は実際得られたPtSe2単層試料の光学顕微鏡写真)。層数は原子間力顕微鏡によって決定した。物質の種類に依らずに大面積の単層試料が得られた理由は、遷移金属元素の種類に依らずカルコゲン(S, Se, Te)原子と金原子の結合力が遷移金属ダイカルコゲナイドの層間ファンデルワールス力よりも強いためであると考えられる。また、金の厚さが大きくなるに伴って得られる単層試料の面積が小さくなる傾向があった。これは金の平坦性が減少しているためであると考えられた。一方で、それらについて角度分解光電子分光測定を行ったところ、すべての試料について明瞭な角度分解光電子分光像を得ることができなかった。この原因は、角度分解光電子分光測定に必要な原子層レベルでの試料の平坦性が、金5 nmであっても不十分であった可能性がある。今後は原子レベルで平坦とされているhBNやグラファイトに金を蒸着し、その上に単層試料を得ることによって単層遷移金属ダイカルコゲナイドの電子状態研究を行っていく。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図 金基板(5 nm)上に転写された単層PtSe2の光学顕微鏡写真。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件