【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.12】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT1081
利用課題名 / Title
カーボンナノチューブ構造制御に向けた成長素過程の速度論
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
リソグラフィ/Lithography,スパッタリング/Sputtering,ナノチューブ/ Nanotube
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
丸山 茂夫
所属名 / Affiliation
東京大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
堀澤 駿太,大塚 慶吾
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
UT-504:光リソグラフィ装置MA-6
UT-500:高速大面積電子線描画装置
UT-501:卓上アッシング装置
UT-711:LL式高密度汎用スパッタリング装置(2019)
UT-900:ステルスダイサー
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
単層カーボンナノチューブ(CNT)をチャネルに用いた電界効果トランジスタは,微細化のポテンシャルだけでなく,速度や消費電力の面でも従来のシリコンを凌駕しうる[1].その潜在能力を発揮するためには,カイラリティと呼ばれるCNTの幾何構造を制御することでその電子構造を半導体性のものに統一する必要があり,CNT成長過程における速度論的選択性の解明が求められる.本研究では,昨年度の我々が報告したCNT成長の速度論モデル[2]に基づき,成長速度の支配的要因である炭素源ガス吸着効率に着目する.半導体性CNTと不純物となる金属性CNTにおいて触媒微粒子上の炭素源分子の解離吸着反応を調査することからはじめ,さらに炭素の脱離や析出を含む素過程について定量的な知見を積み上げ,新たな構造制御合成の指針を提示する.
実験 / Experimental
単結晶水晶基板に光リソグラフィと真空蒸着法を用いて局所的に堆積させた金属触媒からCNTを成長する.このとき炭素源となるエタノール中の2種類の炭素原子の原子量がともに12のもの,またOH基に近い方のみ13のも(1-13Cエタノール)のを交互に供給するため,単一のCNT中に同位体比率の大きく異なる領域が交互に現れる.一方,合成された試料のラマン分光のため,熱酸化膜付きSiウエハに対し電子線描画を行い,スパッタリング装置により金属を堆積させることでマーカーを形成した.成長したCNTをこのSi基板上に転写し,主にラマン分光法により観察を行い,半導体性・金属性が区別された個々のCNTに対して成長速度やエタノール中の炭素原子の取り込み比率を算出した.
結果と考察 / Results and Discussion
Figure 1aに同一のCNTにおいて12Cエタノールおよび1-13Cエタノールから成長した箇所の典型的なラマンGバンドスペクトルを示す。後者では、フォノンモードのダウンシフトの程度から、CNTを構成する12%の炭素原子が13C、つまりOH基に隣接していた炭素由来であり、エタノール分子中の炭素が不均等に触媒微粒子に取り込まれることがわかる。この比率をp(=12%)と定義する。Fe触媒からCNTを成長した場合、金属性CNTを平均するとp=20.6%、半導体性CNTではp=14.2%であり(Fig. 1(b)),触媒微粒子に接続されたCNTの電子構造が触媒上の解離吸着反応に影響を与えることが示唆された。金属性CNTの方が成長速度がわずかに大きいが、エタノールの1-Cがより触媒に吸着しやすいことを反映しているものと考察できる。さらにFe触媒にPdを同量蒸着した触媒系においては、1-Cの取り込み比率pがCNTごとに大きくばらついている。このことから、触媒微粒子の元素組成によってエタノールの解離吸着過程を大幅に変調できる可能性が示唆され、CNTの電子構造に依存した成長速度制御への応用が期待できる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 (a) 12Cエタノール(灰色)と1-13Cエタノール(黒)から成長したCNT部分の典型的なGバンドスペクトル。(b) 半導体性CNTと金属性CNTを構成するエタノールの1-13Cの割合p。純粋なFe触媒およびPdが約1:1で混合された触媒における結果を示す。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
[1] C. Qiu et al., Science 355, 271 (2017).
[2] K. Otsuka et al., ACS Nano 12, 5627 (2022).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- S. Horisawa, K. Otsuka, S. Maruyama, S. Horisawa, K. Otsuka, S. Maruyama, Nonequivalent incorporation of ethanol into catalyst nanoparticles for semiconducting and metallic carbon nanotubes, 第64回 フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム、名古屋大学 (2023年3月2日).
- 石丸亮哉、大塚慶吾、井ノ上泰輝、千足昇平、丸山茂夫、CO2による水平配向CNTアレイの成長速度,寿命,成長開始制御、第59回日本伝熱シンポジウム 、岐阜長良川国際会議場(2022年5月18日)
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件