【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.09】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT1033
利用課題名 / Title
MEMS加工と3Dプリントの融合プロセスによるセンサ集積化ピペットチップを用いた細胞操作
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
ダイシング、スクライバ、細胞操作,リソグラフィ/Lithography,スパッタリング/Sputtering
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
新井 史人
所属名 / Affiliation
東京大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
杉浦 広峻,天谷 諭, 金子 真悟
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
UT-505:レーザー直接描画装置 DWL66+2018
UT-711:LL式高密度汎用スパッタリング装置(2019)
UT-906:ブレードダイサー
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本研究は細胞操作実験の自動化システムに適用可能な単一細胞を操作する実験ツールの開発を目的としている.3DプリントとMEMS加工技術を組合せた製作プロセス構築し,構築した製作プロセスを適用してMEMSセンサ一体型ピペットチップを作製した.その後,細胞を把持/吐出したい際の細胞検出および搬送実験を行ったので報告する.
実験 / Experimental
本研究においては,植物の環境耐性向上等の研究に使用されており,熟練度を要する細胞操作が必要となるアフリカツメガエルの卵母細胞[1, 2]を用いた実験を対象とした.この実験の自動化を目指したシステムのコンセプトを図 1 に示す.細胞を供給する流体デバイス系と細胞を把持して評価系に移動する搬送系および細胞特性等を評価する評価系から構成されている.細胞を吸着把持すると同時に接触検出が可能なデバイスとして本研究で提案する MEMS センサ集積化ピペットチップを搭載する.本デバイスは,先端部に静電容量型 MEMS センサを配置している.また,デバイスはポンプと接続されており,ポンプで吸引することでデバイス先端に細胞を吸着把持する.その際の静電容量変化から細胞の把持状態を検出する構成となっている.デバイスの概要図を図 2 に示す.本デバイスはMEMS センサ基板と 3D プリントで造形したピペットチップから構成されている.実験対象とした卵母細胞は直径 1 mm 程度である.細胞一つのみ把持および検出するため,ピペットチップ先端から 1.2 mm までを内径1 mmとし,それ以降については内径0.5 mm とした. MEMS センサ基板には,1 対の対向する電極からなる静電容量型センサをデバイス先端部に配置している.細胞を検出する電極は,流路幅,電極幅,電極間隔をパラメータに式1[3, 4]と製作プロセスを考慮して,細胞を検出可能な電極幅 500 μm,電極間隔 10 μm とした.本デバイスはポンプに接続し図 3a の様に卵母細胞をデバイス先端のセンサ電極上に吸引把持して固定する構造としている.卵母細胞が吸引されて電極上に載った際に静電容量が上昇し、細胞を吐出することで静電容量が低下する(図 3b).センサ集積化ピペットチップの製作プロセスを図 4 に示す.まず,ガラス基板を洗浄しスパッタ装置にて電極層を形成した.次に,レーザ描画装置で作製したフォトマスクを用いてMEMSプロセスにより電極を作製した.MEMSセンサ電極付きガ ラス基 板を 3D プリ ント 装置に設置し,ピペットチップ形状をガラス基板上に直接造形した.造形後のセンサ一体型ピペットチップ基板をブレードダイサーにより個片化し,導電性接着剤で配線を固定した.作製したデバイスを図 5 に示す.MEMS センサ電極基板上に高精度にアライメントして構造体を直接 3D プリントできていることが確認できた.
結果と考察 / Results and Discussion
作製したデバイスを使用してアフリカツメガエルの卵母細胞の把持/検出評価を実施した.評価実験システム概要図を図 6 に示す.作製したデバイスをピエゾポンプおよび治具に接続し,搬送操作用のマイクロマニュピレータに取付けた.卵母細胞は細胞供給デバイスに浸る程度の水とともに静置した.細胞検出時の静電容量計測にはLCR メータを使用した.検出実験は,マニュアル操作にて顕微鏡画像を確認しながらデバイス先端が細胞を吸引把持できる距離まで近づけ,ピエゾポンプを作動させて細胞を吸引してデバイス先端部で細胞を把持した.把持した後,細胞を評価デバイスまで搬送して所定の位置に配置した.まず,細胞の吸引把持と吐出した状態の静電容量を測定した.静電容量測定結果を図 8 に示す.測定結果の赤線は移動平均を示している.デバイス先端に細胞を吸引把持した状態と吐出した状態で静電容量が 8 nF 程度変化した.細胞搬送実験の写真を図8に示す.細胞供給デバイスから測定デバイスへの細胞搬送を行い,細胞を吸引把持した状態を維持して細胞を搬送し,吐出して細胞を目的位置に設置可能であることを確認した.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 細胞操作実験自動化システムコンセプト
図2 デバイス概要図
図3 卵母細胞の検出原理
図4 センサ集積化ピペットチップ製作プロセス
図5 製作したセンサ集積化ピペットチップ
図6 細胞把持/検出実験システム概要図
図7 吸引/吐出時の静電容量測定結果および移動平均
図8 細胞搬送実験
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
References
[1] Dumont, J.N., "Oogenesis in Xenopus
laevis (Daudin). I. Stages of oocyte development in laboratory maintained
animals". J. Morphol., 136: 153-179. 1972.
[2] Barbara Sottocornola, Sabina
Visconti, Sara Orsi, Sabrina Gazzarrini, Sonia Giacometti, Claudio Olivari,
Lorenzo Camoni, Patrizia Aducci, Mauro Marra, Alessandra Abenavoli, Gerhard
Thiel, Anna Moroni,"The Potassium Channel KAT1 Is Activated by Plant and
Animal 14-3-3 Proteins*", Journal of Biological Chemistry, Volume 281,
Issue 47, 2006, Pages 35735-35741.
[3] J.
Z. Chen, A. a Darhuber, S. M. Troian, and S. Wagner, “Capacitive sensing of
droplets for microfluidic devices based on thermocapillary actuation.,” Lab
Chip, 2004, vol. 4, no. 5, pp. 473–80.
[4] Caglar
Elbuken, Tomasz Glawdel, Danny Chan, Carolyn L. Ren, "Detection of
microdroplet size and speed using capacitive sensors, Sensors and Actuators A:
Physical", Volume 171, Issue 2, 2011, Pages 55-62.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Satoshi Amaya, A Pipette Tip Integrated with a Capacitive Microsensor Fabricated by Combined 3D Printing and MEMS Process for Cell Detection and Transportation, 2023 IEEE 36th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS), , (2023).
DOI: https://doi.org/10.1109/MEMS49605.2023.10052499
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Satoshi Amaya, Hirotaka Sugiura, Bilal Turan, Shingo Kaneko, and Fumihito Arai, "Fabrication of 3D Printed Pipette Tip Integrated with Capacitive Microsensor for Cell Manipulation", International Symposium on Micro/nano mechatronics and Human Science (Nagoya), Nov. 29, 2022
- 天谷 諭, 杉浦 広峻, Bilal Turan, 金子真悟, 新井 史人, 3DプリントによるMEMSセンサ一体型ピペット チップを用いた単一細胞操作, 日本ロボット学会学術講演会(東京), Sep. 7, 2022
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件