【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.19】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT1013
利用課題名 / Title
蒸発界面を保持するためのナノ細孔アレイ膜の作成
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
気液界面、蒸発速度分布,リソグラフィ/Lithography,膜加工・エッチング/Film processing and Etching,スパッタリング/Sputtering,EB,高品質プロセス材料
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
杵淵 郁也
所属名 / Affiliation
東京大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
今井 宏樹,白石 剛大,柴田 竜輔,Clint John Otic
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
UT-500:高速大面積電子線描画装置
UT-603:汎用高品位ICPエッチング装置
UT-504:光リソグラフィ装置MA-6
UT-711:LL式高密度汎用スパッタリング装置(2019)
UT-906:ブレードダイサー
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
蒸発は植物の蒸散作用のような一般的な自然現象から,除熱デバイスなどの工学的応用例まで多岐な分野にわたり解析が求められる現象である.相変化が生じている気液界面近傍には厚さが平均自由行程の数倍から数十倍ほどの薄い非平衡領域(Knudsen層)が存在し,相変化を伴う気液混相流の解析を行うには適切な境界条件の設定が必要である.蒸発・凝縮による質量流束の境界条件として,これまでHertz-Knudsen-Schrageの式が広く用いられてきたが,この式はMaxwell-Boltzmann平衡速度分布をもとに構築された式であり,非平衡領域への適用には物理的妥当性に疑問がある.そこで本研究では,蒸発直後の真の速度分布を計測することを目的とし実験系の構築を進めている.
実験 / Experimental
本研究では飛行時間(TOF: Time-of-flight)法を用いて蒸発分子の速度分布を計測する.気液界面から蒸発した分子の非平衡な速度分布を計測するためには,蒸発後の分子間衝突による速度分布の緩和を防ぐ必要がある.本研究では,図1に示すようなナノスケール細孔の出口にピン止めされた微小液面を蒸発源として用いる.蒸発後の分子は三次元的に広がり,分子数密度が距離の二乗に反比例して急激に減少するため,従来手法と比較し分子間衝突回数を大幅に低減できる.
真空容器内に気液界面を保持するために,シリコン窒化膜に直径約400 nmの細孔が100個程度並んだ構造を電子線リソグラフィにより作製した.シリコン基板をKOH溶液により非等方性エッチングすることでメンブレン構造を作製した.
結果と考察 / Results and Discussion
図2に本実験系で計測された重水(D2O)の速度分布を示す.図中の赤実線は蒸発源の温度(305 K)におけるMaxwell-Boltzmann分布である.測定された速度分布にはMaxwell-Boltzmann分布からのずれが見られ,遅い分子の割合が少なく,速い分子の割合が多い結果となった.この結果は,分子動力学シミュレーションで報告されている非平衡速度分布に対応するものであると考えられる.今後,計測の信頼性について検証を進め,蒸発源の温度を変化させたときの速度分布を吟味することで,蒸発直後の分子の速度分布について理解が進むものと考えている.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 実験装置
図2 蒸発分子の飛行時間分布
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 松嶋篤志, 吉本勇太, 高木周, 杵淵 郁也, "蒸発直後の水分子の非平衡速度分布計測系の構築", 日本機械学会2022年度年次大会(富山), 2022年9月13日
- 松嶋篤志, 白石剛大, 吉本勇太, 高木周, 杵淵郁也, "液面から蒸発する水分子の速度分布計測の試み", 日本流体力学会年会2022(京都), 2022年9月28日
- 松嶋篤志, 白石剛大, 吉本勇太, 高木周, 杵淵郁也, "蒸発水分子の非平衡速度分布計測", 日本機械学会熱工学コンファレンス2022(東京), 2022年10月9日
- Ikuya Kinefuchi, Atsushi Matsushima, Takehiro Shiraishi, Yuta Yoshimoto, Shu Takagi, "Constructing a measurement system for the nonequilibrium velocity distribution of evaporating water molecules from a liquid-vapor interface", 75th Annual Meeting of the APS Division of Fluid Dynamics (Indianapolis), November 22, 2022.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件