【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2024.07.03】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22QS0125
利用課題名 / Title
Bragg-CDI による正方晶巨大負熱膨張物質のドメイン構造温度変化の観察
利用した実施機関 / Support Institute
量子科学技術研究開発機構 / QST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
負熱膨張,ペロブスカイト,強誘電体,X線回折/X-ray diffraction,放射光/Synchrotron radiation,セラミックスデバイス/ Ceramic device,アクチュエーター/ Actuator
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
東 正樹
所属名 / Affiliation
東京工業大学フロンティア材料研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
西久保匠,酒井雄樹,小池剛大
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
大和田謙二,押目典宏,町田晃彦
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ナノテクノロジーの進展に伴って、熱膨張による位置決めのズレや異種材料接合界面の剥離の問題が顕在化している。そうした中で、構造材料の熱膨張を抑制できる、負熱膨張材料が注目されている。我々はBL22XUでのDACを用いた高圧下X線回折実験で発見した、圧力下の金属間電荷移動や極性-非極性転移による巨大な体積収縮を、化学置換によって常圧化での昇温で起こるようにする、という手法で、多くの負熱膨張材料を開発してきた。これらの負熱膨張は、体積の大きな低温相と、体積の小さな高温相が、昇温によって分率を変化させながら2相共存する、一次相転移がバックグラウンドにある。共存する2相の分率が温度によって変化するという振る舞いはギブスの相律に反している。これは、相境界では応力のために圧力一定の条件が崩れているのだとして理解できるが、転移温度幅や温度履歴を予測するためには、こうした特殊な相転移力学を解明する必要がある。そのためにはドメイン構造の解明が必要であり、10年以上にわたって透過型電子顕微鏡(TEM)によるドメイン観察を試みてきたが、観察のための試料の加工の段階で低温相、あるいは高温相に完全に転移してしまい、2相共存を観察することはできていなかった。昨年度、約10%の体積差を持つ正方晶相と立方晶相が共存しながらも、その相分率(68:32)が温度変化しないPb0.72Sr0.18VO3のBragg-CDI観察が量研のメンバーによって行われ、ドメイン構造の3次元的解析に初めて成功した。また、TEM観察で界面の構造も明らかにする事ができた。この結果はChemistry of Materials (IF: 10.508)に掲載され、日経電子版、日経産業新聞、日経サイエンスでも報道された。この結果を受けて、温度変化、即ち負熱膨張を起こすBi0.6Na0.4VO3のドメイン構造の温度変化を明らかにするために高温でのBragg-CDI観測を行った。
実験 / Experimental
【利用した装置】:コヒーレントX線回折イメージング装置
【実験方法】
東工大で高圧合成したBi0.6Na0.4VO3粒子をMEMS heating chip(NORCADA製HTN-0101H予定)に分散担持させ、これをNORCADA製heating holder(NHB-5100)に搭載し、回折計上の真空チャンバー内に搭載した。高分解能X線顕微鏡(160 nm分解能)により試料位置をモニタリングしながら試料位置を制御する軸(st2x、st2y、st2z)により回転中心を合わせ込み、最良の結晶候補を探索した上で、330 Kから680 Kまで10 KおきにBragg-CDI測定を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
610 Kで高温相の立方晶相が出現し、680 Kでは立方晶単相になる事がわかった。位相回復計算で、室温の正方晶相空間的なドメイン構造を特定することに成功した。図1(a)は粒子外径の3次元像、(b)は200反射密度をプロットした物で、密度の低い領域は方位が異なっていると考えられる。(c)は断面位相像であり、位相変化は境界部に歪みがあることを示している。相転移過程の,正方晶相と立方晶相の分布については現在解析中である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 (a) Reconstructed three-dimensional image of the particle. (b) Tetragonal 200 reflection density map in the horizontal plane in (a). (c) Phase image of same plane in (b).
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献T. Nishikubo et al., Chem. Mater. 2023, 35, 870.
・科研費基盤S
・Qiumin Liu, Hena Das, Takumi Nishikubo, Yuki Sakai, Ko Mibu, Tomoko Onoue, Takateru Kawakami, Tetsu Watanuki, Akihiko Machida, Xubin Ye, Jianhong Dai, Zhao Pan, Lei Hu, Satoshi Nakano, Masayuki Fukuda, Shiori Kihara, Koomok Lee, Takehiro Koike, Youwen Long, Masaki Azuma, "Pressure Induced Amorphization of Pb2+ and Pb4+ in Perovskite PbFeO3", Chemistry of Materials, 36 (2024) 1899-1907, DOI:10.1021/acs.chemmater.3c02569
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
-
Takumi Nishikubo, Polar–Nonpolar Transition-Type Negative Thermal Expansion with 11.1% Volume Shrinkage by Design, Chemistry of Materials, 35, 870-878(2023).
DOI: 10.1021/acs.chemmater.2c02304
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Takumi Nishikubo, Takashi Imai, Yuki Sakai, Masaichiro Mizumaki, Shogo Kawaguchi, Norihiko Oshime, Anumu Shimada, Kento Sugawara, kenji Ohwada, Akihiko Machida, Tetsu Watanuki, Kosuke Kurushima, Shigeo Mori, Takashi Mizokawa, Masaki Azuma, " Domain structure observation and design of phase transition-type negative thermal expansion materials", The 4th International Symposium on Nagative Thermal Expansion and Related Materials (ISNTE-4) (Padua, Italy), 令和5年7月7日
- 西久保 匠、今井 孝、酒井 雄樹、水牧 仁一朗、河口 彰吾、大和田 謙二、町田 晃彦、綿貫 徹、押目 典宏、島田 歩、菅原 健人、久留島 康輔、森 茂生、溝川 貴司、東 正樹、”PbVO3の圧力下巨大体積変化を活かした負熱膨張設計と分域構造の観察”、日本セラミックス協会第36回秋季シンポジウム(京都)、令和5年9月7日
- 西久保 匠、今井 孝、酒井 雄樹、水牧 仁一朗、河口 彰吾、大和田 謙二、町田 晃彦、綿貫 徹、押目 典宏、島田 歩、菅原 健人、久留島 康輔、森 茂生、溝川 貴司、東 正樹、”PbVO3の圧力下巨大体積変化を生かした負熱膨張設計と分域構造の観察”、日本物理学会第78回年次大会(仙台)、令和5年9月16日
- 西久保 匠、酒井 雄樹、大和田謙二、押目典宏、久留島康輔、森 茂生、東 正樹、”Domain Structure Observation of PbVO3 based Negative Thermal Expansion Material”、第33回日本MRS年次大会(横浜)、令和5年11月14日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件