【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.04.27】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22QS0117
利用課題名 / Title
空隙を有する金属間化合物NiInの水素吸蔵反応の観測
利用した実施機関 / Support Institute
量子科学技術研究開発機構 / QST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions
キーワード / Keywords
水素化物,結晶構造,X線回折/X-ray diffraction,放射光/Synchrotron radiation,水素貯蔵/ Hydrogen storage
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
佐藤 豊人
所属名 / Affiliation
芝浦工業大学工学部機械機能工学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
齋藤寛之,中平夕貴
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
水素貯蔵材料は、格子隙間に水素を原子状態で貯蔵することで気体・液体水素よりもコンパクトな水素貯蔵が実現される。一方、水素貯蔵材料の課題は、質量当たりの低い水素量の改善や既存の水素貯蔵材料LaNi5に代わる新規物質の開発である。我々は、典型的な水素貯蔵材料LaNi5の水素吸蔵反応(水素化反応)を1 GPa以上で観測した結果、既知の水素吸蔵量よりも1.5倍もの水素を吸蔵する反応、及び新規水素化物相の存在を明らかにした。即ち、汎用の圧力領域では潜在化されている水素吸蔵反応が高圧下で進行することが示唆された。そこで、本研究では、格子内に比較的大きな空隙が存在するにもかかわらず、10 MPa以下の水素圧力領域では反応を示さない金属間化合物NiInに着目し、高圧実験と放射光X線回折を利用してNiInの水素吸蔵反応の解明を目的に研究を遂行した。本研究の結果から、NiInは、9 GPa、473 Kの条件下でNiInの結晶構造を構成する層間に水素が吸蔵されることが示唆された。
実験 / Experimental
【利用した装置】:高温高圧プレス装置
【実験方法】
試料合成
NiInは、Ni小片(レアメタリック製 99.9%)とIn小片(レアメタリック製 99.99%)を2:3(モル比)で混合して、東北大学金属材料研究所水素機能材料工学研究部門が有するアーク溶解炉(日新技研製)を用いて合成された。合成された試料は、芝浦工業大学が所有する粉末X線回折装置(Rigaku SmartLab、Cu管球)を用いて評価された。
高温高圧実験
高温高圧実験は、下記の流れで実施された。
1. 水素供給源となる内部水素源(BH3NH3)と試料(NiIn)をNaClカプセルに同封
2. 1のNaClカプセルを高圧実験用セルに挿入
3. 2の高圧実験用セルをBL14B1に設置された高圧プレスにセット
4. 1 GPaまで加圧し、473 Kまで昇温
5. 473 Kに到達後、9 GPaまで加圧
6. 473 K、9 GPaを12時間保持
7. 加圧状態で室温まで冷却し、その後、減圧
8. 4から7までの一連の反応を放射光X線回折でその場観察
結果と考察 / Results and Discussion
NiInの結晶構造は(Fig. 1)、NiとInの層構造で構成される(層間:2.18 Å)。NiInは、典型的な化合物における結晶構造内の空隙よりも大きな空隙を有するが、10 MPa以下の水素の圧力領域では水素吸蔵反応を示さないことが知られている。本研究の高圧実験では、水素供給源としてBH3NH3が試料と共にNaClカプセルに同封され、1 GPa以上でのNiInの水素吸蔵反応が放射光X線回折で観測された。更に、NiInの空隙内への水素吸蔵を明らかにするためにBH3NH3を同封しない場合の実験も行った。473 K、9 GPaを12時間保持したときのNiInの放射光X線回折パターンをFig. 2に示す。図中の灰色の縦線は、473 K、9 GPaに到達直後のブラッグピーク位置を示す。473 Kに到達した時点において、BH3NH3が同封されたNiInのブラッグピーク位置は、BH3NH3が同封されていない結果よりも面間隔が広い方向へシフトしている。これは、水素源から水素が放出された時点でNiInの層間に水素が侵入したことを示唆する結果である。更に、保持時間の経過に伴い、ブラッグピーク位置は、面間隔dがより広い方向へシフトした。そのため、NiInの層間に水素が徐々に侵入することが示唆された。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 Crystal structures of NiIn viewed from (top) [001] and (bottom) [110]. In the crystal structure, green and purple shares indicate Ni and In atoms, respectively.
Fig. 2 X-ray diffraction patterns of NiIn (top) with and (botom) without hydrogen source BH3NH3 at 473 K in 9 GPa for 1–12 h. Bragg peaks at around d = 1.23 Å are shifted to longer d-space side because of overlapping with a high-pressure phase appearance.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
共同研究者:東北大学 材料科学高等研究所 折茂慎一 教授、東北大学 金属材料研究所 髙木成幸 准教授
外部競争的資金:科研費 基盤研究(B)
支援機関:東北大学金属材料研究所 共同研究(202112-RDKGE-0012)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Toyoto Sato, Hydrogen Absorption Reactions of Hydrogen Storage Alloy LaNi5 under High Pressure, Molecules, 28, 1256(2023).
DOI: 10.3390/molecules28031256
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 佐藤豊人, 齋藤寛之, 内海伶那, 伊藤純也, 中平夕貴, 尾花和紀, 髙木成幸, 折茂慎一, “高圧下でのLaNi5の水素吸蔵反応の観測” 日本金属学会2023年春期(第172回)講演大会, 令和5年3月10日.
- Kazuki OBANA, Toyoto SATO, Jyunya ITO, Akito TAKASAKI, Hiroyuki SAITOH, Reina UTSUMI, Yuki NAKAHIRA, Shigeyuki TAKAGI, Shin-ichi ORIMO, “INVESTIGATIONS OF HYDROGEN ABSORPTION REACTIONS ON La-Ni ALLOYS UNDER HIGH-PRESSURE” The 17th South East Asian Technical University Consortium, 令和5年2月23日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件