利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.04.27】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22QS0106

利用課題名 / Title

放射光メスバウアー分光を用いた高圧下でのペリドタイトガラスの鉄スピン転移の観察

利用した実施機関 / Support Institute

量子科学技術研究開発機構 / QST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)その他/Others

キーワード / Keywords

ペリドタイトガラス,鉄スピン転移,メスバウアー分光,放射光/Synchrotron radiation


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

坂巻 竜也

所属名 / Affiliation

東北大学大学院理学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

三井隆也,藤原孝将

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

QS-111:放射光メスバウアー分光装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

ペリドタイトガラスは地球深部に存在しているマグマのアナログ物質である。地球内部に分布しているマグマの挙動や周囲のマントルへの影響を評価し、新知見を得るためには、高圧条件下におけるケイ酸塩メルト・ガラスの物理化学的性質を制約する必要がある。特にマグマの主成分の中で最も重い元素は鉄であるため、メルトの高密度化などを議論する上で地球内部のような高圧下での鉄の挙動を定量的に理解することが重要である。鉄は2価または3価のイオンとしてマグマ中に含まれている。下部マントルの主要構成鉱物であるフェロペリクレース(Fe,Mg)OやウスタイトFeO中の3価の鉄イオンは、高圧下で高スピン状態から低スピン状態への転移(スピン転移)を起こすことが明らかになっているが、ケイ酸塩メルト/ガラスに関しては不明のままである。マグマ中における高圧下での鉄の価数の変化及びスピン転移を調べることは、マグマの圧縮などの弾性特性を定量的に理解することに繋がる。加えて、鉄のスピン状態の変化はマントル鉱物とメルト間で鉄や他の元素の分配に大きな影響を与え、地球内部に化学組成の不均質をもたらすものと考えられている。本研究では、放射光メスバウアー分光測定を利用することで、ペリドタイトガラスの全マントル圧力条件での鉄のスピン転移による影響を明らかにし、地球マントルにおけるマグマ物性に対する新たな知見を得ることを目的とする。

実験 / Experimental

【利用した装置】:放射光メスバウアー分光
【実験方法】
ビームラインBL11XUの実験ハッチ1設置のエネルギー可変・核ブラックモノクロメータを備えたメスバウアー分光装置を用い、超高圧メスバウアー吸収測定を行った。測定試料には、ガス浮遊炉を用いて合成した57Fe2O3を含むペリドタイトガラスを用いた。試料はダイヤモンドアンビル高圧装置内に封入し、目標圧力まで加圧した後に実験ハッチ内にセットしてメスバウアースペクトルを取得した。

結果と考察 / Results and Discussion

常圧から圧力160万気圧(160 GPa)までの条件下でメスバウアーエネルギー吸収スペクトルの取得に成功した。Fig.1に各圧力条件下における代表的なスペクトルを示す。
常圧から160 GPaまでの圧力条件下において、スペクトルが連続的に変化したことを確認した。低圧力条件では2価鉄の高スピンの吸収スペクトルが見られたが、高圧力側でその高スピン鉄由来のスペクトルが減少・消失することが分かった。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 Mössbauer spectra of peridotite glass at each pressure condition


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

・本研究はJSPS科研費 22H01317の助成を受けたものである。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Osamu Ikeda, Magnetic Spin-Flop Transition of ε-FeOOH at 8 GPa, Journal of the Physical Society of Japan, 92, (2023).
    DOI: 10.7566/JPSJ.92.043702
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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