【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2024.06.26】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22QS0001
利用課題名 / Title
放射光メスバウアー4 軸回折計の開発
利用した実施機関 / Support Institute
量子科学技術研究開発機構 / QST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)その他/Others
キーワード / Keywords
磁気構造,局所構造,電荷秩序配列,メスバウアー分光,放射光/Synchrotron radiation
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
中村 真一
所属名 / Affiliation
帝京大学理工学部リベラルアーツセンター
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
下村晋
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
三井隆也,藤原孝将
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
BL11XUで供されている放射光メスバウアー分光装置に小型多軸回折計を組み込み,放射光メスバウアー4軸回折計を開発した。回折計はSPECソフトウェアーによって制御・計測を行い,試料周りには小型磁石をつけて,試料のスピンを散乱面内に向けられるようになっている。装置の性能テストとして,自然鉄Fe3O4単結晶を用いて,禁制反射から生じる純核ブラッグ散乱によるサイト選択的スペクトルの測定を試みた。
実験 / Experimental
【利用した装置】:放射光メスバウアー分光装置
【実験方法】
実験は,BL11XUで供されている放射光メスバウアー分光装置に新たに4軸回折計を組み込んだ回折測定の配置で行った。高分解結晶下流へのPb板による遮蔽,核モノクロメーター上流のビームラインをステンレスパイプで遮蔽,カウンター周りのPb板による遮蔽,などを行い,バックグラウンドノイズの極限までの低減化を図った。今回のセットアップでは,試料には0.16 Tの外部磁場が印加できた。目的の反射のロッキングカーブ測定とその反射γ線を用いた回折スペクトルの測定を300 Kにおいて行なった。測定試料は,自然鉄Fe3O4単結晶を用いた。まず,10 10 0反射による45度法を用いてAサイトのみのスペクトル測定を試みた。外部磁場によってスピンが[001]方向に向いている時,それが可能になる[1]。次に,禁制反射00l (l = 4n +2)を用いて,Bサイトのみのスペクトル測定を試みた。スピンが<111>方向に向いている時に,BサイトFeから純核ブラッグ散乱が生じることを利用するものである。
結果と考察 / Results and Discussion
10 10 0反射による45度法を用いたAサイトのみのスペクトル測定では,試料面内の[001]軸を散乱面内に置き[001]方向に0.16 Tの外部磁場を印加して測定を行なった。Fig.1には,10 10 0反射のロッキングカーブ測定結果を示す。1点あたり100 sの積算時間で測定したもので,明瞭なピークが見えている。図中の破線のブラッグ角位置の反射γ線を用いて回折スペクトルを測定した結果がFig.2である。積算時間は6時間である。Aサイトスペクトル主体の核共鳴発光スペクトルが得られたが,依然として,純核ブラッグ散乱によるBサイトスペクトルが重畳している。2-5ラインは消えているので,スピンは散乱面内には向いているが,面内の[111]軸,[11-1]軸にスピンが向いた成分があるものと思われる。A, B共存による干渉効果により,6ライン強度が極端に弱まっている。印加磁場をさらに強くしないと,スピンは[001]に揃え切らないようである。
一方,禁制反射00l (l = 4n +2)を用いたBサイトのみのスペクトル測定では,低角側の002反射,高角側の00 14反射を<111>方向に外部磁場を印加するなどして探したが,明瞭な反射ピークは見つからなかった。格子定数からピーク位置と思える角度にセットして,回折スペクトルの測定も試みたが,明瞭なスペクトルは得られなかった。反射強度が想定外に弱いものと思われる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 Rocking curve of 10 10 0 reflection of natural iron Fe3O4.
Fig. 2 The 10 10 0 reflection spectrum of natural iron Fe3O4.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献
[1] S. Nakamura, et al., J. Phys. Soc. Jpn. 90, 104713 (2021).
・謝辞
三井隆也氏,及び,藤原孝将氏(QST)に感謝します。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Shin Nakamura, Anomalous Interference Effect in Pure Nuclear Bragg Reflection of Fe3O4, Journal of the Physical Society of Japan, 92, (2023).
DOI: 10.7566/JPSJ.92.124708
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Kosuke Fujiwara, Synchrotron Mössbauer Micro γ-ray Diffractometer Installed on BL11XU at SPring-8, Proceedings of 11th International Workshop on Sample Environment at Scattering Facilities (ISSE Workshop Nasu 2022), , (2024).
DOI: 10.7566/JPSCP.41.011002
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 藤原孝将,三井隆也,下村晋,中村真一, “4軸回折計を使った放射光メスバウアー回折実験の試行” 日本物理学会 2022年秋季大会, 令和4年9月13日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件