利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.26】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22AT5018

利用課題名 / Title

陽電子プローブアナライザーによる全固体電池を構成する粒子の欠陥・空隙評価

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

全固体電池,粉体,陽電子消滅


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

岸田 尚樹

所属名 / Affiliation

大阪公立大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-501:陽電子プローブマイクロアナライザー(PPMA)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

現在,電気自動車への応用として高い理論容量を持つ硫黄を正極材料に用いた全固体リチウム硫黄電池の実用化が期待されている.全固体電池において粒子に存在する欠陥・空隙は電池性能を低下させる要因になりうる.そこで陽電子プローブマイクロアナライザーを用いることで,粒子に存在する欠陥・空隙を評価することを考えた.本課題では全固体電池の正極材料として期待されている硫黄および導電助剤である多孔性カーボンブラックの欠陥・空隙評価を行った.

実験 / Experimental

実験はバルク法およびビーム法によって行った.まず,バルク法において,標準物質であるステンレス鋼の陽電子寿命を測定した.次に,硫黄をバルク法で測定した.測定では100万カウントで陽電子寿命スペクトルを測定した.解析では標準物質からカプトンおよび接着材の陽電子寿命を決定してから,硫黄における陽電子寿命を決定した.ビーム法では,陽電子の入射エネルギーを6.0 keV,チャンネル当たりの時間幅を25.6 psに設定し100万カウントで陽電子寿命スペクトルを測定した.測定した試料は、バックグラウンドを評価するためのテストとしてのカプトン,標準物質であるポリカーボネートおよび導電助剤である多孔性カーボンブラックを測定した.カプトンの測定結果からビーム法によるバックグラウンドを決定し,その結果を除いた陽電子寿命スペクトルよりポリカーボネートと多孔性カーボンブラックの欠陥・空隙を評価した.

結果と考察 / Results and Discussion

バルク法による標準物質であるステンレス鋼の陽電子寿命を3成分に分解した結果,ステンレス鋼の陽電子寿命として102 psが得られた.これは標準物質の参考値である106 psの95%以内の信頼区間であったため,測定の妥当性が確認できた.次に標準物質から得られた成分を基に,硫黄粉末における陽電子寿命の結果を解析した.その結果,硫黄中における陽電子寿命として319 psが得られた.この寿命値は、欠陥がない硫黄結晶における陽電子寿命よりも長いと考えられることから,硫黄粉末中にナノボイドが存在することが示唆された.ビーム法による測定ではカプトンによる測定結果から,表面で跳ね返った陽電子の影響を決定した.この跳ね返り陽電子の影響を考慮して,陽電子寿命を解析した.その結果,標準物質であるポリカーボネートの寿命は2.07 nsとなり,参考値である2.10 nsの95%以内の信頼区間であったため,測定の妥当性が確認できた.全固体電池の正極材料である多孔性カーボンブラックの測定では,第一成分として375 ps,第二成分として2.56 nsの寿命が測定された.第一成分の寿命は、過去の文献との比較から、炭素ナノボイド中での陽電子寿命であると考えられた.第二成分である2.56 nsの寿命を空孔半径に換算すると0.33 nmであり,これは多孔性カーボンブラックにおける細孔の大きさであると考えられた.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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