利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2024.05.15】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22AT5017

利用課題名 / Title

酸化クロムエピタキシャル膜の陽電子消滅寿命分光

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所 / AIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

PALS, CrO, thin film, Cr vacancy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

北浦 守

所属名 / Affiliation

山形大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

渡邊 真太(東京工業大学)

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

満汐 孝治(産業技術総合研究所)

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-501:陽電子プローブマイクロアナライザー(PPMA)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

酸化マグネシウム基板上にエピタキシャル成膜した酸化クロム薄膜は岩塩型構造をとる。しかし、クロムは2価ではなく3価をとり、その化学式はCr2O3である。これらの事実は岩塩構造においてクロムの1/3 が空孔であり、酸化クロムは窒化クロムにはない特徴的な欠陥構造を持つ。摺動性に優れた硬質膜である窒化クロムよりも酸化クロムは高い硬度をもち、その原因は岩塩構造に積層欠陥としてコランダム構造が析出し一種のラメラ構造を形成することに起因すると考えられている。このような特徴な欠陥構造とラメラ構造が高硬度化とどのように関わるかを原子レベルで調べるには、クロム空孔の局所構造を調べる必要があり、そのために陽電子消滅寿命分光(以降PALSと呼ぶ)が最適である。そこで、本研究では、酸化クロムエピタキシャル膜のPALS測定をおこなった。

実験 / Experimental

実験には酸化マグネシウム基板上に膜厚150 nmになるようにPLD法でエピタキシャル成長した酸化クロム薄膜を用いた。酸化クロムエピタキシャル膜のPALSスペクトルの測定には陽電子プローブマイクロアナライザー(PPMA)を用いた。測定時の時間分解能は200 psで、300万カウントになるまで積算した。酸化マグネシウム基板での対消滅が起こらないように陽電子ビームの入射エネルギーを調整した。既知の寿命値を持つYSZのPALSスペクトルを測定して、バックグランド成分を評価し、寿命解析の際に引き算して取り除いた。寿命解析にはフリーソフトのLT9を使った。

結果と考察 / Results and Discussion

酸化クロムエピタキシャル膜のPALSスペクトルは2つの指数関数の和でよく再現された。それらの寿命値(相対強度)は192 ps(83.5%)と334 ps(16.5%)であった。参照試料として測定した窒化クロムエピタキシャルもまた2つの指数関数の和でよく再現された。それらの寿命値(相対強度)は162 ps(93.8%)と402 ps(6.2%)であった。単寿命成分の寿命値は明らかに異なる。理想的な窒化クロムにはクロム空孔は存在しないが、実際には長寿命成分が観測されたので、成膜時の窒素分圧に応じてクロム空孔が僅かに導入されると考えられる。酸化クロムの短寿命成分の寿命値は窒化クロムのそれよりも長い。酸化クロムには多量のクロム空孔が含まれるため、欠陥濃度が飽和してバルク寿命が変化したと考えられる。より高精度なデータを得るには厚膜でもPALS測定を行う必要がある。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. M. Kitaura et al., Identification of zinc and vacancy sites in zinc-doped γ-CuI crystal by X-ray fluorescence holography and positron annihilation spectroscopy, International conference on complex orders in condensed matter: aperiodic order, local order, electronic order, hidden order, Evian, France, 2023/09/24
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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