【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.26】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22AT5016
利用課題名 / Title
CsPbBr3薄膜の陽電子消滅寿命分光
利用した実施機関 / Support Institute
産業技術総合研究所 / AIST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
PALS, CsPbBr3, Perovskite
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
北浦 守
所属名 / Affiliation
山形大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
渡邊 真太(東京工業大学)
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
満汐 孝治(産業技術総合研究所)
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
AT-501:陽電子プローブマイクロアナライザー(PPMA)
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
鉛ハロゲン化ペロブスカイトは量子ドット太陽電池や発光材料として有望な材料である。中でもCsPbBr3は狭線幅の高輝度緑色蛍光体として知られ、不純物ドープによる構造制御によって発光特性の改善が試みられている。一般に、多元系材料では非科学量論組成が生じてその電荷補償のために空孔型欠陥が必然的に導入される。格子欠陥はキャリアを捕獲したり無輻射失活したりするため、多かれ少なかれ発光特性に影響を及ぼす。従って、空孔型欠陥の有無を調べることは材料の高品質化につながる材料科学の意義を有するとともに、非平衡キャリアが平衡状態へと緩和する動的過程を調べる基礎科学でも重要な課題でもある。本研究では、CsPbBr3膜中に潜む空孔型欠陥を捉えるために、陽電子消滅寿命分光(以降PALSと呼ぶ)をおこなった。
実験 / Experimental
研究に用いたCsPbBr3膜は液相合成して得られたCsPbBr3量子ドットをガラス基板上に成膜して得た。その膜厚は約100 nmであった。PALS実験には陽電子プローブマイクロアナライザー(PPMA)を用いた。既知の寿命値を持つYSZのPALSスペクトルを測定して、バックグランド成分を評価し、寿命解析の際に引き算して取り除いた。また、PALSの光照射効果を紫外光を照射して調べた。PALSスペクトルを解析して得た結果を理解するためにCsPbBr3のバルク寿命の計算を第一原理計算プログラムABINITを用いて行った。CIFデータを初期構造として構造最適化を行った後、緩和構造においてバルク状態での陽電子消滅確率を算出し、そのバルク寿命を陽電子消滅寿命とした。
結果と考察 / Results and Discussion
CsPbBr3膜のPALSスペクトルは2つの指数減衰関数の和で再現された。単寿命成分が支配的であり、その寿命値は361 psであった。長寿命成分はガラス基板の寿命値とよく一致した。膜は緻密ではなくところどころに隙間があり、打ち込んだ陽電子ビームが隙間からガラスに達して消滅したと思われる。長寿命成分が現れたために空孔型欠陥が存在するかを解析することが困難であった。
第一原理計算の結果、CsPbBr3のバルク寿命は340 psであった。短寿命成分の寿命値とはわずかに異なる。CsPbBr3では量子ドットの構造がバルクの構造とわずかに異なることが指摘されており、理論計算ではその点が考慮されていない。バルク結晶も測定して量子ドットとの違いを明らかにするとともに、量子ドットのサイズが構造に及ぼす影響を考慮した理論計算を行い、正確なバルク寿命を決定するべく準備を進めている。
光照射の下でPALS測定を行い光照射効果も調べた。光照射の有無による変化はみられなかった。光照射PALSは光誘起現象を捉える新たな手法として期待されるので継続して取り組みたい。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件