利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.26】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22AT5012

利用課題名 / Title

高分子中のポジトロニウム

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所 / AIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

陽電子、ポジトロニウム、高分子


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

小林 慶規

所属名 / Affiliation

早稲田大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

満汐 孝治

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-501:陽電子プローブマイクロアナライザー(PPMA)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

高分子に入射した陽電子の一部は、多くの場合、電子と結合した束縛状態であるポジトロニウムを形成する。ポジトロニウム(Ps)の1/4は陽電子と電子が互いに反平行のパラポジトロニウム(p-Ps)、残りの3/4はスピンが平行なオルトポジトロニウム(o-Ps)となる。寿命が比較的長いo-Psは、アモルファス領域の自由体積に捕獲され、o-Ps中の陽電子は周囲の原子に束縛されている反平行スピンの電子とピックオフ消滅を起こす。ピックオフ消滅の寿命は、o-Psが捕獲されている自由体積の大きさを反映する。このため、o-Psは高分子の自由体積を調べるためのプローブとして利用できる。また、Psの収率は結晶化度に依存し、結晶化度が小さいほど高くなることが知られているが、高分子の化学構造にも影響される。たとえば、アモルファス高分子であるポリカーボネート(PC)のo-Ps収率は29 %で、結晶性のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のo-Ps収率(31 %)よりも低い[1]。本研究では、結晶性フッ素系高分子の架橋化処理によるPsへの影響を調べることを目的として、陽電子寿命測定を行った。

実験 / Experimental

フッ素系高分子フィルムの架橋化処理を行った結果、透明度が上昇したことから、架橋化処理により結晶化度が低下したと推察した。しかし、試料の量が十分でないため、X線回折などによる結晶化度の変化の測定は困難であった。
産業技術総合研究所の高強度低速陽電子ビーム[AT-501 (PPMA)]を用いて、未処理および架橋化処理を行った試料の陽電子寿命スペクトルを取得した。試料室の真空度は、1 x 10-4 Pa、時間分解能は半値幅270 psで、300万カウント積算した。標準試料としてPCの測定を行い、測定に問題ないことを確認した。

結果と考察 / Results and Discussion

架橋化処理前後の試料およびPCの陽電子寿命スペクトルを図1に示す。二つの試料のo-Psによる長寿命成分の平均寿命は、PCに比べて長いことがわかる。フッ素系高分子では、フッ素化されていない高分子と比べて、自由体積が大きくなることが知られており[1]、自由体積の違いがo-Ps寿命の違いとして現れたと考えられる。一方、架橋化処理前後の試料のスペクトルに大きな違いは現れなかった。架橋化により結晶化度が低下すれば、Ps生成が増加すると予想されたが、o-Ps収率の顕著な増加は見られなかった。結晶化度の変化に加えて、架橋処理による高分子の化学構造変化が影響した可能性などが考えられる。今後、X線回折測定などに適した厚い試料を用いることでより詳細な情報を得たいと考えている。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 PCおよび架橋化処理前後の試料の陽電子寿命スペクトル


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] Y. Kobayashi, K. Sato, M. Yamawaki, K. Michishio, T. Oka, and M. Washio, Radiat. Phys. Chem. 202 (2023) 110590. https://doi.org/10.1016/j.radphyschem.2022.110590


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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