【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.17】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT0436
利用課題名 / Title
テラヘルツ波非標識センシングにむけたWTe2薄膜と表面プラズモンの研究
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
テラヘルツ波, 表面プラズモン共鳴,電子回折/Electron diffraction,赤外・可視・紫外分光/Infrared and UV and visible light spectroscopy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
西村 佳菜
所属名 / Affiliation
東京大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
テラヘルツ波(THz波)は、光波と電波の間に相当する周波数帯域の電磁波で、生体関連分子の結合による吸収帯域に相当する。そのため、蛍光分子修飾が不要の直接的バイオセンシングへ応用が期待されている。しかし、感度が低いという実用上の課題があるため、金属表面の電子が光入射により集団共鳴的に振動する現象を利用した表面プラズモン共鳴(SPR)によって信号を増強し、高感度化を図っている。テラヘルツ波帯域でSPRを発現させるため、ワイル半金属であるWTe2を用いた。Si基板上にWTe2薄膜を作製し、リファレンスのためSi基板のみのTHz波反射率測定を行ったところ、特異的な反射特性を示した。そこでSi基板の反射特性をシミュレーションするにあたり、物性値の取得のため、分光エリプソメータでの屈折率・消衰係数を計測した。
実験 / Experimental
まず初めに、理論的にSPR発現が期待できるクレッチマン配置により、薄膜とSiプリズムを組み合わせ、THz波の反射率を測定した。その際、入射角を25-55度まで5度刻みに測定を行ったまた薄膜が約150nmで薄いこと、そして薄膜の透過率が40%であることから、Si基板の影響を考慮し、Si基板のみでの反射率測定を行った。その結果、入射角θが大きくなるにつれて、低周波数側にシフトした(図1.1 右)。一方で、Si基板のみのTHz光反射率と殆ど同じ挙動をしめしていた(図1.1左)。このことから、今回観測した反射率測定は薄膜由来のものでなくSi基板由来のものであると考えられる。この反射率測定の原因を探求するため、反射率シミュレーションに必要な物性値を、分光エリプソメータにSi基板(p型, 抵抗値10000)を設置し、屈折率・消衰係数を測定した。本研究ではTHz光を用いているが、可視光域での測定を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
分光エリプソメータの結果より、文献値と近い屈折率n = 3.43, 消衰係数κ≒0という結果が得られた(図1.2)。これをもとにFDTD法を用いてシミュレーションした結果、実験で得られたような反射特性と一致しなかった(図1.3)。このシミュレーション結果において、入射角が小さくなるにつれてディップ周波数が高周波数側にシフトする点では、SPRの理論的計算と一致している。一方で実験結果と大きく異なる挙動をしめしていた。この原因として、THz帯域では物性値が異なることが考えられる。また本実験で用いたSi基板はボロンをドープしたp型であるため、n型を計測し比較することにより、ドーピングによる影響を考察できるのではないかと考える。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1.1 THz光(TM波)反射率測定(左:Si基板, 右: WTe2薄膜)
図1.2屈折率・消衰係数の計測結果
図1.3 Si基板の反射率計算
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 西村佳菜, 田畑仁, ” テラヘルツバイオセンシングのためのワイル半金属と表面プラズモン研究”, バイオを親しむ会, 東京大学本郷キャンパス,2023.1.14
- 西村佳菜, 杉本雛乃, 田畑仁, ” ワイル半金属WTe_2薄膜およびテラヘルツ波表面プラズモンに関する研究”, 2022年秋季学術第51回応用物理学会学術講演会, 2022.9.23(口頭発表)
- H. Sugimoto, K. Nishimura and H. Tabata(東京大学)、Non-labeling Detection by Terahertz Surface Plasmon Resonance of Topological Insulator Bi2(Se, Te)3、IRMMW-THz 2022、2022/8/31
- Hinano Sugimoto, Kana Nishimura, Ryo Okano, Miho Kitamura, Katsuaki Sugawara, Seigo Souma, Kosuke Nakayama, Takafumi Sato, Masaki Kobayashi, and Hitoshi Tabata、THz Surface Plasmon Resonance and ARPES in Dirac Electron System of Topological Insulator Bi2(Se,Te)3 Thin Films、The 29th International Conference on Low Temperature Physics, Sapporo、2022/8/21
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件