利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.16】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22UT0367

利用課題名 / Title

ナノ粒子の合成と構造制御

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)その他/Others

キーワード / Keywords

ナノ粒子, コロイド, ドーピング, 形状・形態観察, エネルギー材料, 触媒材料, 環境材料,電子顕微鏡/Electron microscopy,ナノ粒子/ Nanoparticles


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

梶山  智司

所属名 / Affiliation

三菱ケミカル株式会社

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-006:ハイスループット電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

機能性無機材料において、その物性は組成・形状・サイズが大きく影響を与える。このことから無機材料合成においては、原子スケールおよびナノスケールからその構造を精密に制御することの重要度は高いと言える。ナノ粒子の担持や無機結晶への異種元素ドーピングなど様々な材料創製が行われており、その反応の進行を確認するためにも元素レベルでの構造観察・元素分析が必要となってくる。セラミクスなど焼結反応で得られる無機材料とは異なり、溶液プロセスで比較的低温で合成される無機材料においては、電子線による構造劣化や損傷などが原因で、原子・ナノスケールの構造解析が容易ではないことが分かってきている。この電子線に対する脆弱性から溶液プロセスでのドーピング反応に置いては元素レベルでの観察が容易ではなく、加速電圧、カメラ長、絞り等の条件を変化させながら観察することが必要である。多種類の透過型電子顕微鏡を有している東京大学の透過型電子顕微鏡を用いて、反応の進行確認および合成した材料の構造解析を行った。

実験 / Experimental

水溶液プロセスにより合成を行ったナノ粒子材料をCuグリッドに載せ、透過型電子顕微鏡観察(JEM-2800)を行った。観察時における加速電圧においては、試料の観察目的に合わせて100 kVおよび200kVで行った。粒子材料の結晶学的情報を得るために、電子線回折測定を行った。また、粒子内の元素比および元素分布の解析に置いては、STEMモードでX-MaxN 100TLE(Oxford Instruments社製)を検出器として用いたエネルギー分散型X線分光(EDS)により行った。ライン分析やマッピングなどを用いて、元素分布の確認を行うとともに、高倍率での透過像取得を試みた。

結果と考察 / Results and Discussion

酸化物などの無機材料を異なる金属を含む溶液で処理することにより、金属交換1)やナノ粒子2)の担持反応などが進行する。これらの結果から溶液プロセスで異種元素ドーピング反応を進行させた場合には、ナノ粒子が担持しているのか、元素レベルで置換しているのか解析することが材料合成に重要である。本研究では、Li3PO4が10mol%以下であればLiFと固溶するという報告3)をもとに、Li3PO4にアニオンの導入反応およびカチオンの導入反応検討を水溶液プロセスで行い、反応の進行および粒子材料の解析を行った。Li3PO4溶液をフッ化物ナトリウム水溶液中で攪拌して、材料合成を行った。得られた粒子材料をCuグリッドに載せて、JEM-2800において形状観察および元素分析を行った。元素分析解析により、F/P物質量比が0.02程度であった。より詳細な観察を行うために高倍率での観察を行おうとしたところ、高倍率で絞った電子線を照射した際に電子線損傷と思われる構造変化が観察された。より詳細な構造解析はできなかったが物質量比からF-アニオンは水溶液プロセスではLi3PO4結晶中に導入できていないと考え、さらなる条件検討が必要であると考察している。さらに金属イオンの導入反応検討として、金属イオンを溶解した溶液からLi3PO4粒子の合成を行った。得られた粉末において、見た目では金属イオンに由来すると考えられる着色が見られた。透過型電子顕微鏡観察により元素分析を行ったところ、粒子内の金属イオンの含有量が物質量比でPに対して0.02であり、行った反応ではLi3PO4骨格に導入されていないことが示唆された。 今後、材料合成条件を改めて異種元素をドーピングした材料創製を行うとともに、使用装置・観察条件の最適化を行い、高倍率・高解像度の観察を行いながら、無機材料合成手法と機能性無機材料の合成手法に関する知見を醸成していく。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

1) Z. Liu, Y. Zhong, I. Shafei, R. Borman, S. Jeong, J. Chen, Y. Losovyj, X. Gao, N. Li, Y. Du, E. Sarnello, T. Li, D. Su, W. Ma, X. Ye, Nat. Commun., 2019, 10, 1394.2) F. Wang, J. Ma, S. Xin, Q. Wang, J. Xu, C. Zhang, H. He, X. C. Zeng, Nat. Commun., 2020, 11, 529.3) G. V. Zimina, M. Tsygankova, M. Sadykova, F. M. Spiridonov, V. V. Fomichev, P. P. Fedorov, MRS Adv. 2018, 3, 1309.  謝辞:本研究は、東京大学総合研究機構 先端ナノ計測ハブ拠点 寺西 亮佑 技術職員から材料観察条件などについて議論・支援をいただき行われた。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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