【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.30】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT0291
利用課題名 / Title
微生物のタンパク質の立体構造解析
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)その他/Others
キーワード / Keywords
微生物, 酵素, 電子顕微鏡,電子顕微鏡/Electron microscopy,生体イメージング/ In vivo imaging
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
伏信 進矢
所属名 / Affiliation
東京大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
荒川孝俊,廖増威,山口雄太,翁晴
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
寺西亮佑
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub),機器利用/Equipment Utilization
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
微生物の酵素の全体構造を明らかにするため、東京大学の設備を利用してnegative染色によるTEM観察を行った。ビフィズス菌の酵素AgaBbでは凝集した粒子が観察された。水素細菌のシャペロニンでは、適度に単分散したタンパク質コンプレックスの粒子が観察された。
実験 / Experimental
親水化した(JEOL HDT-400)グリッド(支持膜あり)をピンセットに固定し、そこにサンプル(2〜3 μL)をアプライした。濾紙で余分な液体を吸い取った後、2%酢酸ウラニルを用いて2μLずつアプライし、吸い取る操作を3回以上繰り返した。自然乾燥により十分乾燥したグリッドを使って、透過型電子顕微鏡(JEM-1400)を用いて主に40k-100kの倍率で透過像を撮影した。その後、画像においてのタンパク質粒子の密度、単分散度を指標として、グリッド作成時のサンプル条件 (濃度・リガンド等) を評価した。
結果と考察 / Results and Discussion
(1) AgaBbの測定AgaBbはビフィズス菌より発見されたα-ガラクトシダーゼである(Wakinaka et al. Glycobiology, 2013)。2022.9.13測定:単粒子解析条件のスクリーニングとしてnegative染色によるTEM観察を行い、染色方法、タンパク質濃度、バッファーの種類、pH、塩濃度、界面活性剤などの条件を検討した(図1A-B)。2022.10.13測定:初回は酢酸ウラニルでの一回のみの染色で観察を行ったが、HEPESとTris両方の条件ともほとんど見えず、問題は染色方法にあると思い、二回目は複数回の染色を行った(図1C-E)。2022.11.9測定:タンパク質濃度0.2 mg/mL、二回染色で2サンプル分観察し、丸い凝集した粒子が見られた(図1F)。タンパク質濃度を0.1 mg/mLに下げ、三回染色の方法でもう1サンプルを追加観察した(図1G)。タンパク質濃度を下げることや染色回数を増やすことによる凝集の改善は見られず、観察も行い難くなったので、以降の観察はすべて2回染色で行った。2022.12.16測定:塩を抜くと凝集が更に激しく見えたため、バッファーをリン酸カリウムバッファーに変更して、塩濃度を100 mMに下げて観察したが、凝集の問題は解決できず、以前の結果に類似した観察像が得られた(図H, I)。界面活性剤を入れることで低倍率画像では分散したように見えたが、以前の観察と同じ高倍率で観察するとほとんど変わらず、凝集した粒子が観察された。
(2) 水素細菌のシャペロンの測定本研究では2種類の水素細菌(TH-1株およびTK-6株)を研究対象としている(Ishii et al., J. Bacteriol., 1987; Hayashi et al. Int. J. Syst. Bacteriol., 1999)。そのうち、まず、TH-1株のシャペロニンのnegative染色によるTEM観察を行った。観察像において、粒子は程よく単分散していることが確認できた(図2A)。さらに、明確なコントラストが存在するため、タンパク質複合体の形成も確認できた(図2B)。これらの結果は、他施設でのクライオ電子顕微鏡観察の予備実験として、有益な情報を提供した。続いて、TH-1株のシャペロニンのnegative染色によるTEM観察を行った。TK-6株と同様のタンパク質濃度、条件で測定したところ、同様に、適度な粒子の密度および複合体の形状が観察された(図2C)。したがって、試料の精製法・濃度定量・グリッドの作成法の再現性を検証できた。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 AgaBbのTEM観察像(A-B) 一回染色による観察像(2022.9.13測定)。タンパク質濃度はいずれも0.2 mg/mL。(A) 20 mM HEPES-NaOH (pH 8.0), 150 mM NaCl。 (B) 10 mM Tris-HCl (pH 7.5), 200 mM NaCl)。(C-E) 複数回の染色による観察像(2022.10.13測定)。(C) 20 mM HEPES-NaOH (pH 7.0), 150 mM NaCl, タンパク質濃度0.2 mg/mL, 二回染色。(D) 10 mM Tris-HCl (pH7.0), 200 mM NaCl, タンパク質濃度0.2 mg/mL, 二回染色。(E) 10 mM Tris-HCl (pH7.0), 200 mM NaCl, タンパク質濃度0.1 mg/mL, 三回染色。(F-G) 塩濃度検討による観察像(2022.11.9測定)。タンパク質濃度はいずれも0.15 mg/mL。(F) 10 mM Tris-HCl (pH7.0)、NaCl非添加 (G) 20 mM K2HPO4-KH2PO4 (pH 7.0), 100 mM NaCl。(H-I)界面活性剤検討による観察像。左が低倍率、右が高倍率。タンパク質濃度はいずれも0.2 mg/mL。(H) 20 mM HEPES-NaOH (pH7.0), 50 mM NaCl, CHAPS 0.5 %。(I) 25 mM Tris-HCl (pH 7.0), 50 mM NaCl, CHAPS 0.5 %。
図2 水素細菌のシャペロニンのTEM観察像(A-B) TH-1株のシャペロニンの観察像。(A) 全体像。(B) GroEL-GroEL-GroEL複合体。側面と上面からの撮影像を拡大したものを、それぞれ上下に示す。(C) TK-6株のシャペロニンの観察像。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献T. Wakinaka et al. Glycobiology 23, 232-240 (2013)M. Ishii et al. J. Bacteriol. 169, 2380-2384 (1987)NR Hayashi et al. Int. J. Syst. Bacteriol., 59, 783-786 (1999)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 廖増威ら, “水素細菌由来 Rubisco activaseの初期構造解析”量子ビームサイエンスフェスタ2022, 2023年3月15日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件