【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.13】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT0223
利用課題名 / Title
リチウムイオン電池用ケイ素微粒子の構造分析
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
電子分光,PVD,PVD,二次電池/ Secondary battery,全固体電池/ All-solid battery,ナノ粒子/ Nanoparticles
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
太田 遼至
所属名 / Affiliation
大阪大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
神原淳,平岡健央
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
Siナノ粒子は,Liイオン電池の高容量負極材料として注目を集めている。中でも,全固体電池においては界面のイオン伝導性が重要であり,アモルファスSi薄膜電極を使用した場合には,含有酸素量が初期効率や界面抵抗に影響を与えることが報告されている。また,Siをナノ粒子化することで比表面積が増大するため,酸化の進行が予測される。そこで,今回はプラズマスプレーPVD(PS-PVD)により作製した種々のSiナノ粒子に対してXPSによる分析を行い,Siの酸化度及びSi-Oの結合状態を評価することで,これら構造特徴と電池特性の相関を明らかにした。
実験 / Experimental
PS-PVDにより,原料の粉末供給量を変化させることで20-180 nmのサイズの異なるSiナノ粒子を作製した。また,粒子生成直後に急速冷却を施すことで酸化を抑制した粒子と,湿式酸化処理を施して酸化度を増大させた粒子も作製した。これらの粉末をアルバック・ファイ社のXPS PHI5000 VersaProbeを用いて分析を行った。X線源にはAl Kα線(1486.6 eV)を用い,焦点サイズを100 µm,出力を25 Wに設定した。各試料のSi 2p,O 1s,C 1sについて,4 kVで5秒間のArスパッタリング処理ごとに測定を行い,ひとつの試料につきスパッタリング0~5回の合計6つのデータを得た。
結果と考察 / Results and Discussion
図には通常条件で作製した粒子S-1,生成直後の急冷により酸化を抑制した粒子S-2,酸化抑制粒子に対して湿式酸化を施して酸化度を増大させた粒子S-2'について,Si 2pのスパッタリング前のXPS測定結果を示す。また,図内には酸素分析装置により測定した各試料の含有酸素量をSiOxのxとして表記している。各試料で99 eV付近に0配位結合に由来するピークが確認できるが,S-2'は該当のピークの強度が弱いことが認められる。一方で,4配位結合(Si4+)に由来する104 eV付近のピークについては,S-2'が最も強く,S-2に関しては非常に小さいことがわかる。したがって,酸化を制御したS-2では4配位結合の形成が抑制され,湿式酸化処理を施すことで4配位結合の形成が促進されることが明らかになった。これら3種のSiナノ粒子を負極材料として,硫化物系固体電解質を用いた全固体ハーフセルに組み込んで電池試験を行ったところ,湿式酸化処理を施したS-2'に関しては電池として駆動せず,4配位結合により生成した緻密な酸化膜がLiとの反応を阻害したものと考えられる。一方で,S-2はS-1と比較して高容量を示したことから,Siナノ粒子内の含有酸素がLiとの反応に対する抵抗となっていることがうかがえる。以上の結果より,全固体電池用の負極材料としてのSiナノ粒子において,低酸化度のナノ粒子が電池特性向上に重要であり,表面上の酸化膜がLiとの反応を阻害していることが示唆された。また,酸化についても4配位結合が特にLiとの反応に影響を及ぼしていると考えられるため,酸化膜の構造も適切に制御する必要がある。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 XPS spectra of Si 2p for various Si nanoparticles.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 1. 神原淳,「プラズマスプレー法によるナノ粒子構造化と全固体リチウムイオン電池負極への適用可能性」,第92回マテリアルズテーラリング研究会,2022年8月4日
- 2. 平岡健央,太田遼至,田中暁巳,竹内啓,道垣内将司,福田健一,神原淳「全固体LiB特性の高容量と高サイクル性を両立するSiナノ粒子の最適構造」,第83回応用物理学会秋季学術講演会,2022年9月23日
- 3. 太田遼至,平岡健央,柴野佑紀,川村博昭,川本浩二,田中暁巳,竹内啓,道垣内将司,福田健一,神原淳「プラズマスプレー共凝縮によるSi系ナノ複合粒子単膜電極を用いた全固体LiB特性」,第63回電池討論会,2022年11月8日
- 4. 神原淳,太田遼至,平岡健央,田中暁巳,道垣内将司「Design of Composite Nanoparticles by Plasma Spraying for Solid-State Lithium-Ion Batteries with High Densities and High Cyclabilities」, 2022 MRS Fall Meeting & Exhibit, 2022年11月29日
- 5. 太田遼至,平岡健央,柴野佑紀,川村博昭,川本浩二,田中暁巳,竹内啓,道垣内将司,福田健一,神原淳「Control of Si Nanoparticle Structures by Plasma Spraying Physical Vapor Deposition for All-Solid-State Lithium-Ion Batteries with High Capacity and High Cyclability」,第32回日本MRS年次大会,2022年12月
- 6. 神原淳,「シリコンと熱プラズマプロセスの未来」,日本学術振興会第153委員会 第161回研究会,2023年1月27日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:1件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件