利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.13】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22UT0204

利用課題名 / Title

MOFを鋳型とした機能性ナノ材料の創製

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)その他/Others

キーワード / Keywords

ESR,ナノ多孔体/ Nanoporuous material


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

北尾 岳史

所属名 / Affiliation

東京大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-302:電子スピン共鳴装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

天然ゴムの加硫に代表されるように、高分子の高性能・高機能化のための有用な手法として、高分子鎖の架橋反応が挙げられる。通常、高分子を架橋させる際は、高分子鎖の無秩序に絡まりあった凝集構造により、3次元的なランダムネットワーク構造が形成されてしまう。高分子の配向や架橋ネットワーク構造はその材料特性に大きく影響を及ぼすと予想されるため、それらを制御することは非常に重要である。多孔性金属錯体(Metal-Organic Framework, MOF)は、金属イオンと有機配位子からなるナノサイズの細孔を有する多孔性材料である。MOFは高い規則性を有するだけでなく、その構成要素を適切に選択することで、サイズ・形状・表面環境など、細孔構造を緻密にデザインできる。さらに、架橋性配位子を用いることで高密度に架橋点をつくりだすことが可能である。本研究では、一次元細孔を有し、骨格内部に架橋点としてジチオール基を持つMOFを合成し、細孔内に天然ゴムの主成分であるシス-1,4-ポリイソプレン(PI)を導入した。その後、ホスト-ゲスト間でチオール-エン反応を進行させることで、PI鎖が完全に配列した状態で架橋反応を行った

実験 / Experimental

ホストMOFとして、一次元細孔を有するジチオール基含有MOF、[Al(OH)(2,5-dimercapto terephthalate)]n (1)を合成した。1をPIのクロロホルム溶液に浸漬した後、減圧処理によって溶媒を除去することで、PIを1の細孔内に導入した(1ÉPI)。1は、柔軟な骨格を有し、MOF内部へのゲスト分子の進入に伴い、Close構造からOpen構造へと変化する。実際に1ÉPIのPXRD測定では、1の細孔構造の変化が観測され、細孔内へのPI鎖の導入が確認された。1ÉPI のDSC測定の結果、バルク状態のPIのガラス転移点に由来する吸熱ピークが観測されなかったことから、細孔内にのみPIが存在していることが分かった。1ÉPIのMDシミュレーションから、PIは伸びきり鎖状態で細孔内に拘束されていることが示唆された。次に、1ÉPIを窒素下、200 °C、24時間加熱することで、ホストゲスト間でチオール-エン反応を進行させた(1ÉPIcross-linked)。

結果と考察 / Results and Discussion

1ÉPIcross-linkedのPXRD測定から、反応前後で1の骨格構造が変化していないことを確認した。その後、EDTA水溶液を用いて1の骨格を除去することでPIcross-linkedを単離し、種々の測定によってその構造を調べた。PIcross-linked13C-NMR測定の結果、ジチオール修飾配位子とPIに由来するピークが観測された。一方、PIcross-linkedのIR測定では、2600 cm-1付近のチオール基に由来するピークが観測されなかった。これらの結果は、ホストゲスト間でチオール-エン反応が進行し、S-C結合が形成されたことで、架橋生成物が得られたことを示している。PIcross-linkedの元素分析とMOF内に導入したPIの質量から、PIcross-linked の架橋密度は8.4×10-4 mol/cm-3 (イソプレンユニット6.5個に1個の割合で架橋)、 PIの単離収率は56%と算出された。一方、対照実験として、配位子とPIを溶液中とバルク状態で混合した際には、架橋反応が全く進行しないことが分かった。チオール-エン架橋反応は、加熱処理によって生成した配位子のチイルラジカルが、PIの炭素間二重結合に付加することで進行する。MOF内で架橋反応が進行した理由を調べるために、1とジチオール基修飾配位子のESR測定を行った。溶液中と固体状態の配位子とは異なり、1では、加熱処理後に明瞭なESR信号が観測された。この結果は、MOF細孔内では、チイルラジカルが生成・安定化していることを示している。MOF内ではPIが伸びきり鎖状態で拘束されているため、溶液やバルク状態とは異なり、ジチオール基とPI鎖が常に近接した状態で保たれている。そのため、生成したチイルラジカルが効率的にPI鎖と反応できるため、架橋反応効率が大幅に向上したと考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

スマートフォン用ページで見る