利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.12】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22UT0187

利用課題名 / Title

機能性膜および活性炭の表面解析

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)その他/Others

キーワード / Keywords

電子顕微鏡/Electron microscopy,分離・精製技術/ Separation/purification technology


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

角田  貴之

所属名 / Affiliation

中央大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

大石ももか,奥田啓司,加藤ななみ,河崎颯斗,小泉文佳,小泉真由,辰己美紀,前田寛明,森谷颯太

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

森山和彦,福川昌宏,近藤尭之

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-101:低損傷走査型分析電子顕微鏡
UT-102:高分解能走査型分析電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 水処理に用いる多孔質膜には除去性能に加えて高い透水性、物理的・化学的強度が要求される。これらを実現するために、構造の複層化や支持体への分離塗布など様々な工夫が重ねられてきた。一方で、製造工程の複雑化によるコスト上昇や製膜条件の限定などが、より優れた性能を有する次世代膜の開発における課題となっている。DLP(digital light processing)方式の3Dプリンターは、紫外線を照射して硬化させた樹脂を積層により、3次元構造を造形する。オーダーメイドで複雑かつ緻密な構造を作製できるため、従来の製膜方法(NIPSやTIPS)では実現できなかった物性や機能性の付与が期待できる。しかし、DLPの解像度は15 μm以上であり、多孔質膜を直接印刷することができない。そこで、光反応によって励起される光反応誘起相分離(PIPS)に着目した。PIPSでは、光重合によるエネルギー変化で相分離が起こり孔が形成される。また、重合速度と相分離速度の両者により膜構造が変化する。本研究では多孔質膜形成に適したPIPS条件を検討することを目的とした。本年度はモノマー濃度と製膜溶液温度が相分離速度に与える影響、照射時間や照射光エネルギーなどの照射条件と重合速度の関係を調査した。

実験 / Experimental

 モノマーに多官能ポリエステルアクリレート(M9050, 東亞合成)、溶媒にジメチルスルホキシド(DMSO, Wako)、重合開始剤に1,3-アルキルアミノフェノン(BASF)を用いた。これらを混合後、波長365 nmの紫外線を照射し膜厚0.15 mmの薄膜を得た。その後、薄膜をエタノール置換し、多孔質を得た。実験ではモノマー濃度(0-100wt%)、照射光エネルギー(120, 880 mJ/cm2)、照射時間(10, 30, 60, 120 s)、製膜溶液温度(25, 50 ℃)をそれぞれ変化させた。表面の観察に走査電子顕微鏡(SEM)を用い表面孔径と開孔率、孔数を算出した。

結果と考察 / Results and Discussion

 モノマー濃度が20 wt%のときに多孔質が形成された(図1)が、モノマー濃度が40 wt%のときは孔が閉塞した(図2)。モノマー濃度が低いほどポリマーになる濃度も下がるため、モノマーが20 wt%以下のときに細孔が形成されたと考えられる。また、製膜に最適なモノマー濃度は15 wt%、照射光エネルギーは880 mJ/cm2であることが明らかになった(図3)。
 PIPSにおける膜孔径の制御因子を明らかにするために、モノマー濃度を15wt%に固定して製膜溶液温度と照射時間の影響を調査した。温度上昇に伴うモノマー粘度の低下は相分離速度を増加させ孔径に影響を与えると予想されたが、すべての条件で表面孔径約2 nmの薄膜が得られた(表1、表2)。これは、相分離速度が十分に大きいためであると考えられる。また、孔数についても製膜溶液温度と照射時間の影響はみられなかった。一方で、製膜溶液温度が25℃と50℃の場合では、薄膜の断面構造が異なる可能性が示唆された(図4、図5)。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 モノマー濃度20 wt%のときの膜表面(×100k)(照射条件:照射光エネルギー 880 mJ/cm2、製膜溶液温度50 ℃、照射時間 10 s)



図2 モノマー濃度40 wt%のときの膜表面(×100k)(照射条件:照射光エネルギー 880 mJ/cm2、製膜溶液温度50 ℃、照射時間 10 s)



図3 モノマー濃度15 wt%のときの膜表面(×100k)(照射条件:照射光エネルギー 880 mJ/cm2、製膜溶液温度25℃、照射時間 30 s)



図4 製膜溶液温度25 ℃のときの膜表面(×100k)(照射条件:モノマー濃度15wt%、照射光エネルギー 880 mJ/cm2、照射時間 60 s)



図5 製膜溶液温度50 ℃のときの膜表面(×100k)(照射条件:モノマー濃度15wt%、照射光エネルギー 880 mJ/cm2、照射時間 60 s)



表1 製膜溶液温度が表面孔径、開孔率、孔数に与える影響



表2 照射時間が表面孔径、開孔率、孔数に与える影響


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究は公益財団法人クリタ水・環境科学振興財団の助成(No. 22A032)を受けたものである。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 加藤 ななみ, 山村 寛, 角田 貴之, "ポリマー粘度が光反応誘起相分離における膜孔径に及ぼす影響" 第59回 環境工学研究フォーラム, 令和4年11月30日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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