利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2024.05.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22UT0080

利用課題名 / Title

微小配位高分子ならびに金属錯体の構造決定

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

X線回折/X-ray diffraction,スピン制御/ Spin control,スピントロニクス/ Spintronics


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

榎本  真哉

所属名 / Affiliation

東京理科大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

金友拓哉,猪熊究,谷合亮祐

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-201:無機微小結晶構造解析装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

大きく分けて以下の2つの系統の物質を合成した。(1) ラジカル部位を持つ有機物と磁性錯体との有機-無機ハイブリッド化合物。(2) ジチオオキサレート (dto) 架橋鉄混合原子価錯体の対カチオン置換体。これらは、有機分子の高い分子設計性と、遷移金属の配位形成による高次構造を活かした化合物設計が可能である。一方でこれらは結晶が微小であることが多い。また、軽元素の含有率も大きい。そのため、一般的な装置による構造解析が困難であり、物性測定の結果と構造を結びつけることが容易ではない。VariMax Dualは上記の課題に対して極めて有効であり、多数の化合物の構造決定に成功した。

実験 / Experimental

構造解析には無機微小結晶構造解析装置 VariMax Dual (リガク)を利用した。温度因子を小さくするため、測定は主に低温 (93 K) で行った。

結果と考察 / Results and Discussion

(1)では中心金属のスピンクロスオーバー挙動と配位子による会合平衡が協奏的に発現する系として、[Co(5tpybNO)2](BF4)2を合成した。21年度に報告した内容に対し、さらにNO部位同士の接触を向上させるため、結晶生成時の条件を精査した。単結晶生成には蒸気拡散法を用いた。条件としては、拡散における良溶媒の種類、結晶生成時の温度、良溶媒に対する貧溶媒の拡散速度などを変化させた。生成した結晶の構造は、拡散速度の遅い条件では温度に対して顕著な依存性を見せ、-23, 5, 25℃の各温度で上記錯塩の組成が共通でありながら、結晶溶媒の数と錯体間の配列が異なる3種類の結晶構造を与えることが明らかとなった。一方で、拡散速度を速めた条件では、結晶化温度に拘らず、先の3種類とはまた異なる錯体間の配列を示すことが分かった。これらはNO間の相互作用と配位子のπ電子間の相互作用の両者が、各条件でどのように優先的に影響したかを考える手掛かりとなった。
(2)では、[FeIIFeIII(dto)3]- 磁性層間の対カチオン置換体の合成を行った。この磁性層は、カチオン選択により電荷移動相転移に伴う特異なスピン転移 (CTPT) を示す。(n-C3H7)4N+を用いた系で見られたCTPT現象は、(C6H5)4P+を用いた置換体では消失することは既に報告した。また、圧力下で磁化率測定を行うと、CTPT現象が発現する。これら特異な磁気挙動は、磁性アニオン層の積層様式や対カチオンと磁性層間の接触が寄与しているのではないかと考えている。そこで、対カチオン(C6H5)4P+の1つのフェニル基を直鎖アルキル基に置換した類縁体を合成した。局所的な構造変化が結晶構造に与える影響を評価するため、無機微小結晶構造解析装置 VariMax Dual (リガク) を利用して構造同定を行った。今後についても微小結晶に対する単結晶構造解析の重要性は極めて高い。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

東京大学工学系研究科総合研究機構ナノ工学研究センター・沖津康平氏の支援をいただきました。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Takuya Kanetomo, Hydrogen-bonded cobalt(ii)-organic framework: normal and reverse spin-crossover behaviours, Dalton Transactions, 51, 5034-5040(2022).
    DOI: 10.1039/D2DT00453D
  2. Ryosuke Taniai, 57Fe Mössbauer spectroscopy and high-pressure structural analysis for the mechanism of pressure-induced unique magnetic behaviour in (cation)[FeIIFeIII(dto)3] (cation = Ph4P and nPrPh3P; dto = 1,2-dithiooxalato), Dalton Transactions, 52, 8368-8375(2023).
    DOI: 10.1039/D3DT00858D
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 遠藤翼,野村響佑,金友拓哉,榎本真哉,"((n-C3H7)xPh4-xP) (x = 1-3) カチオンを用いた鉄混合原子価錯体の構造と磁性" 第16回分子科学討論会(神奈川),令和4年9月22日
  2. 谷合亮祐,遠藤翼,野村響佑,金友拓哉,榎本真哉,河口沙織,門林宏和,"2次元層状鉄混合原子価錯体における圧力誘起磁気ヒステリシスと異方的構造変化の相関" 錯体化学会第72回討論会(福岡),令和4年9月26日
  3. 猪熊究,金友拓哉,榎本真哉,"[Co(5tpybNO)2]錯体の分子間ニトロキシド接触における動的スピン平衡の制御" 錯体化学会第72回討論会(福岡),令和4年9月27日
  4. 山戸啓輔,倪真,金友拓哉,榎本真哉,"水素結合性 Co(II)-有機構造体における誘電異常とスピン転移挙動の相関" 錯体化学会第72回討論会(福岡),令和4年9月27日
  5. 遠藤翼,金友拓哉,榎本真哉,"ジチオオキサラト架橋鉄混合原子価錯体の強磁性相転移に対する層間距離縮小効果" 日本化学会第103春季年会(千葉),令和5年3月24日
  6. 山戸啓輔,金友拓哉,榎本真哉,"水素結合性Co(II)-有機構造体における逆スピン転移挙動のH/D同位体効果" 日本化学会第103春季年会(千葉),令和5年3月25日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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