【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.16】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT0063
利用課題名 / Title
光機能性を有する有機結晶材料の開発
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
シッフ塩基,結晶工学,クロミズム,結晶多形,固溶体,X線回折/X-ray diffraction,エネルギー貯蔵/ Energy storage
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
吉川 功
所属名 / Affiliation
東京大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
吉川 功
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
固体材料の性質や機能は分子自体の性質だけでなく、固体中での分子の集積構造にも影響を受ける。本研究では合成が比較的容易なシッフ塩基化合物を中心として、単結晶X線構造解析により種々の有機分子の集積構造を調査する。分子の集積構造が、クロミズム特性をはじめとする各種物性に及ぼす影響を検討するとともに、新規な光機能性を示す有機結晶材料の開発を目指す。
実験 / Experimental
各種溶媒を用い、合成した有機化合物の再結晶を試みた。得られた結晶について無機微小結晶構造解析装置 (リガクVariMax Dual)を用いたX線構造解析を行い、結晶中における分子の集積構造を決定した。
結果と考察 / Results and Discussion
サリチリデンアニリン(SA, Fig.1)はUV照射によりフォトクロミズム(PC)特性を示すα1およびα2多形と、PCを示さないβ多形という3種の多形が知られている。顕微UV測定法を用いて、α1とα2のPC後の退色過程について検討を行った。解析を進めたところ、PCの飽和度が退色速度に影響することが明らかとなった。そこで可能な限りPC種の濃度が飽和に近づくように条件を検討したところ、退色速度の厳密な解析が可能となり、温度による熱失活および可視光吸収による光失活という2つの速度定数を分離することができた。退色の早いα1多形では光失活の寄与が大きいのに対し、α2多形では熱失活と光失活が同程度に寄与するものの、どちらの速度定数も非常に小さいことが明らかとなった。1)
SA誘導体のSA4B, SA4C (Fig.1)にUV光を照射すると、SA4Bの結晶はPCを示すのに対し、SA4CではPCを示さず蛍光を発する。SA4B:SA4Cが1:1の溶液からは、組成はほぼ1:1と変らないものの、UV照射でPCがみられるα多形と蛍光を発するβ多形という2種の多形結晶が得られた。α多形はSA4Bと、β多形はSA4Cと同じ結晶構造をもつことから、UV照射に対する応答の違いは、分子自体の性質ではなく、結晶中で分子が置かれた環境の差に由来することが明らかとなった。2)
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Figure 1
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
1) R.
Koibuchi et al., J. Phys. Chem. A 126 (2022) 4164-4175.
2) H. Houjou et al., Chem. Lett. 51 (2022)
1054-1057.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Ryo Koibuchi, Spectroscopic Tracking of Salicylideneaniline Photocolored Crystals: An Attempt to Quantify Polymorph-Dependent Features toward Precise Structure–Function Correlation Analysis, The Journal of Physical Chemistry A, 126, 4164-4175(2022).
DOI: 10.1021/acs.jpca.2c01689
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Qian Liu, Synthesis of 2-trifluoromethylated 3-pyrrolines/pyrrolidines via [3+2] cycloaddition of azomethine ylides with the participation of 3,3,3-trifluoroalanine, Journal of Fluorine Chemistry, 264, 110061(2022).
DOI: 10.1016/j.jfluchem.2022.110061
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Hirohiko Houjou, Nurture over Nature: Striking Difference in Chromic Behavior between Congeneric N-Salicylidene-4-haloanilines in Different Molecular Environments of Crystal, Chemistry Letters, 51, 1054-1057(2022).
DOI: 10.1246/cl.220364
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 唐蔚,周奇,吉川功,北條博彦,南豪“5-ヘキシニルオキシ-ククルビット[7]ウリルの合成とその性質” 第19回ホスト-ゲスト・超分子化学シンポジウム,令和4年6月4日
- 山路稔,岡本秀毅,鈴木健吾,務台俊樹,吉川功,北條博彦“ジフェニルナフタレンの固体発光と結晶構造の関連性について”2022光化学討論会,令和4年9月13日
- Wei Tang,Qi Zhou,Isao Yoshikawa,Hirohiko Houjou,Tsuyoshi Minami“Synthesis and Characterization of Self-Assembled Cucurbituril Derivatives” 第32回基礎有機化学討論会,令和4年9月21日
- 唐蔚,周奇,吉川功,北條博彦,南豪“Synthesis and Characterization of Self-assembled Cucurbituril Derivatives” 第12回CSJ化学フェスタ,令和4年10月19日
- 鯉渕領,黄弘伊,吉川功,北條博彦“単結晶顕微分光法と QM/QM’計算によるサリチリデン-α-フェネチルアミン結晶のフォトクロミズムの解析”第30回有機結晶シンポジウム,令和4年11月5日
- 黄召昊,曾鋭羽,吉川功,北條博彦“アルカリ金属イオンに応答してクロミズムを示すタンデム型Schiff塩基-Pt錯体の光物性研究”日本化学会第103春季年会,令和5年3月22日
- 鯉渕 領,牧田雅貴,吉川功,北條博彦 “単結晶顕微分光法とQM/QM′計算による双頭型シッフ塩基の構造-機能解析”日本化学会第103春季年会,令和5年3月24日
- 吉川功,張在翔,鈴木將宏,北條博彦“ハロゲン結合の様式に基づく4,4'-ジハロサリチリデンアニリン誘導体のポリタイプ結晶”日本化学会第103春季年会,令和5年3月24日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件