利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2024.03.05】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22UT0054

利用課題名 / Title

セルロースナノファイバーの超微細構造解析

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

セルロースナノファイバー、熱安定性、超微細構造、Iα構造、Iβ構造、フィンガージョイント,電子顕微鏡/Electron microscopy,X線回折/X-ray diffraction


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

古月  文志

所属名 / Affiliation

東京大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

福川 昌宏,木村 鮎美,府川 和弘

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術代行/Technology Substitution


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-010:クライオ透過型/透過走査型電子顕微鏡
UT-006:ハイスループット電子顕微鏡
UT-451:粉末X線回折装置
UT-102:高分解能走査型分析電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

セルロースナノファイバーは軽量で丈夫な素材などの創出への寄与を通じて社会課題の解決に貢献する有望な素材として注目をされている。本研究では、セルロースナノファイバーの熱安定性について調べるため、セルロースナノファイバーを過飽和水蒸気中で熱処理した。その結果、セルロースナノファイバーは1本のシームレスなナノファイバーではなく、短いセルロースのベーシックブロックが直列に繋がった構造をとっていることが確認されたため、フィンガージョイントモデルを提唱した。また、短いベーシックセルロースのブロックはIβ構造、ベーシックブロックとベーシックブロックの間の繋がり区域はIα又はアモルファス構造であることも明らかになった。

実験 / Experimental

 市販の2wt%のTEMPO-酸化型CNF(第一工業製薬株式会社製品)の懸濁液を脱イオン水で0.2wt%に希釈した後、熱安定性について調べた。形状観察は、原子間力顕微鏡 (AFM、島津製作所の走査型プローブ顕微鏡/原子間力顕微鏡) と高分解能走査型分析電子顕微鏡(日本電子のJSM-7800F PRIME)、高分解能電子顕微鏡(HR-TEM、日本電子のJEM-2100FとJEM-2800)を用いた。また、微細構造の解析に関しては、ラマン分光(Renishaw社のinVia Raman)、FT-IR(日本分光)および XRD(Rigaku 社のSmart Lab X線回折装置)を使用した。

結果と考察 / Results and Discussion

 TEMPO-CNFの熱安定性を調べるために、TEMPO-CNFを150℃の過飽和水蒸気の中で2時間加熱処理した。下図(Fig. 1)は、過飽和水蒸気で加熱処理された後のTEMPO- CNFのAFMとTEMの観察結果を示す。元のマイクロメートル長さのTEMPO-CNFが短いナノファイバーに変化した現象が観察された。30本を無作為に選び、長さと太さを測定した。加熱処理された後のナノファイバーは長さが200~600nm、太さが1.5~3.0nm であった。また、セルロースナノファイバーには、フィンガージョイント構造が存在していることが確認された。
  また、XRDパターンからは、加熱前のTEMPO-CNFではIαとIβの両方が確認されたが、加熱処理された後はIβのみが残っていた。即ち、Iα構造が加熱処理過程で消失した。これらの実験結果に基づき、我々は、セルロースナノファイバーはつなぎ目のないシームレス構造ではなく、より短いブロックがフィンガージョイントで連結した構造になっている新しいモデルを提唱した「参考文献:B. Fugetsu, A. K. Vipin, S. Takiguchi, I. Sakata, M. endo, A finger-jointing model for describing ultrastructures of cellulose microfibrils, Sci. Rep., 2021」。こうした植物の生合成にも関連する基礎的な研究成果は、セルロースナノファイバーが持つ可能性をさらに引き出す上で有用な知見を提供するものと考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 AFM and HR-TEM images of TEMPO-CNFs after heating. The sample was prepared by heating an aqueous suspension containing 0.2 wt% of the as-produced TEMPO-CNFs in 150 °C saturated water vapor for 2 h. 


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

・参考文献 B. Fugetsu et al., A finger-jointing model for describing ultrastructures of cellulose microfibrils, Sci. Rep., DOI: 10.1038/s41598-021-89435-6


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Bunshi Fugetsu, TEMPO‐Oxidized Cellulose Nanofibers as Pseudocatalysts for in Situ and on‐Demand Hydrogen Generation via Aluminum Powder/Pure Water Reactions at a Temperature below 50 °C, Advanced Energy and Sustainability Research, 4, (2023).
    DOI: https//doi.org/10.1002/aesr.202370016
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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