【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.16】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT0051
利用課題名 / Title
ワイヤ放電加工機上での電解仕上げ加工の研究
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
表面処理,電子顕微鏡/Electron microscopy,イオンミリング/Ion milling
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
中野 斉
所属名 / Affiliation
東京大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
UT-104:低真空走査型電子顕微鏡
UT-103:高分解能走査型電子顕微鏡
UT-102:高分解能走査型分析電子顕微鏡
UT-153:クロスセクションポリッシャー(CP)
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ワイヤ放電加工面は熱を加工原理とするため表面に熱変質層が生じる。従来はこれを手仕上げで仕上げていたが、これをワイヤ電解仕上げ加工で代替することが本研究の目的である。
昨年は特にSKD11材の電解仕上げにおいて表面に凹凸が生じる原因を探るためSEM-EDX分析を試みた。今回はさらにクロスセクションポリッシャー(JEOL SM-09010、JEOL SM-09020)により断面サンプルを作成しFE-SEM(JSM-7000F、JSM-7800F Prime)により断面観察およびSEM-EDX、SEM-EBSD解析を試みた。これらの手法で、放電加工面の熱変質層の観察や、電解仕上げに伴う凹凸の様子を観察した。
実験 / Experimental
まず焼入れしたSKD11材料をワイヤ放電加工で切り出し、4thカットまで仕上げた。これを前加工面とし、一部サンプルではワイヤ電解仕上げ加工を試みた。
先行研究では両極性パルスの正パルスのDuty比を最適化することで,クロム炭化物の選択的溶出を抑えることに成功した[1].その際Duty30%がクロム炭化物と母相の鉄を両方とも均一に加工でき最も面粗さを抑えられる条件と結論づけた.そこで今回はDutyを20,26、30,40%と変化させたときの断面の様子も観察した.単位面積当たりに投入した電荷量を一定にするため,ワイヤの走査回数をそれぞれ8回,6回,5回,4回とDuty比に反比例するように調整している.
これらワイヤ放電加工サンプルおよび電解仕上げサンプルに対し、クロスセクションポリッシャー(JEOL SM-09010、JEOL SM-09020)により断面サンプルを作成した。そしてFE-SEM(JSM-7000F、JSM-7800F Prime)により断面観察およびSEM-EDX、SEM-EBSD解析を試みた。
結果と考察 / Results and Discussion
Fig 1に放電加工面の断面のFE-SEM像およびSEM-EDX分析のマッピング結果を示す.まずEDX分析結果を見ると,最表面に1μm程度の薄さの,酸素・亜鉛・銅が増大した層が観察される.これはワイヤ放電加工に用いた黄銅ワイヤの成分が転移してできた層と考えられる(黄銅転移層).次にFE-SEM像においてその黄銅転移層の真下を観察すると,母材部が針状の結晶粒で構成されているのに対し,1μm程度の針状組織が曖昧になっている層が観察される.ワイヤ放電加工では放電による熱により材料が溶融し飛散することで加工が進展するが,一方でその溶融した金属の大部分は再凝固し表面に留まることが知られている.こうした溶融再凝固により,材料の結晶が非晶質となった可能性が考えられる(溶融再凝固層).
次に電解仕上げ面の断面像をFig 2に示す.Duty20%では,クロム炭化物(FE-SEM像では濃い灰色に見える箇所)の残留による隆起が見られる一方,Duty40%では大きな陥没が発生しているのが見て取れ,これもクロム炭化物の選択的溶出が原因と考えられる.これらの結果は先行研究[1]と一致するものである.Duty30%の面は概ね均一に見えるが,詳細に表面を観察するとクロム炭化物箇所がわずかに陥没しているのが分かる.そしてDuty26%の面は最も均一に加工出来ているのが見て取れる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 放電加工面の断面観察像
Fig. 2 電解仕上げ面の断面観察像
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献:[1] 中野斉,国枝正典,黒川聡昭,高田智昭,冷間金型用鋼SKD11のワイヤ電解仕上げ加工の研究,電気加工学会全国大会2021講演論文集,19-20
・共同研究者:三菱電機株式会社 高田智昭様、黒川聡昭様、湯澤隆様
・総合研究機構の福川昌宏様および近藤尭之様にはクロスセクションポリッシャーによる断面サンプル作成を依頼いたしました。また走査型電子顕微鏡およびSEM-EDXの取り扱いをご教授いただきました。感謝いたします。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Sei Nakano, Wire electrochemical finishing of wire electrical discharge machined surface of highly alloyed materials with insoluble precipitates, Journal of Materials Processing Technology, 313, 117863(2023).
DOI: 10.1016/j.jmatprotec.2023.117863
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Sei Nakano, Wire electrochemical finishing of wire electrical discharge machined surfaces on the same machine, Procedia CIRP, 113, 422-426(2022).
DOI: 10.1016/j.procir.2022.09.194
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Sei Nakano, Masanori Kunieda, Daiki Saito, Toshiaki Kurokawa, Takashi Yuzawa, Wire-electrochemical surface finishing of cold tool steel SKD11 using bipolar pulse, Procedings of INSECT 2022, 2022/11/14.
- 中野斉、国枝正典、齊藤大輝、黒川聡昭、湯沢隆、2022、SKD11のワイヤ電解仕上げ面の表面性状、電気加工学会全国大会(2022)、令和4年11月25日.
- 中野斉、国枝正典、齊藤大輝、黒川聡昭、湯沢隆、2023、SKD11のワイヤ電解仕上げ面の断面観察、2023年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集、発表予定
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件