利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2024.05.22】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22UT0033

利用課題名 / Title

黒色酸化チタンのナノ微粒子化に関する研究

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials

キーワード / Keywords

電子顕微鏡/Electron microscopy,エネルギー貯蔵/ Energy storage,電子顕微鏡/Electron microscopy,エネルギー貯蔵/ Energy storage,ナノ粒子/ Nanoparticles


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

賈  方達

所属名 / Affiliation

東京大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

所 裕子,吉清 まりえ,豊崎 雄樹,続麻 優菜,川口 泰史,藤澤 聖斗,清木 陸,川上 航太郎

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

福川 昌宏,押川 浩之

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-008:高分解能トップエントリー型透過電子顕微鏡
UT-103:高分解能走査型電子顕微鏡
UT-101:低損傷走査型分析電子顕微鏡
UT-102:高分解能走査型分析電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

酸化チタンの一種、五酸化三チタン(Ti3O5)は、α-Ti3O5、β-Ti3O5、γ-Ti3O5、δ-Ti3O5といった様々な結晶構造を有しています。2010年、当研究室では、Ti3O5の新しい結晶構造を見出し、ラムダ型五酸化三チタン(λ-Ti3O5)と命名し、この新しい結晶相が、室温で可逆的な光誘起相転移を示すことを報告しました[1]。この現象は金属酸化物において初めて観察されたものでした。さらに、低圧で圧力誘起相転移を示すことがわかり、その際に蓄えた熱エネルギーを放出する蓄熱性能を持つことも報告されました[2]。2019年には、ブロック型λ-Ti3O5を合成し、蓄熱セラミックスとしての性能を見出しました[3]。この新しい型のλ-Ti3O5は、より低い圧力でも放熱することができるという利点がありました。本研究では、λ-Ti3O5のマグネシウム置換体に注目し、相転移挙動および蓄熱特性への影響について調べました。

実験 / Experimental

合成:マグネシウム置換型λ-Ti3O5の合成手順は以下の通りです。まず、ルチル型TiO2の水分散液に酢酸マグネシウム水溶液を加え、混合溶液を調整しました。次に混合溶液に対してアンモニア水を滴下することにより、TiO2をMg水酸化物で被覆したTiO2前駆体を得ました。最後に、前駆体を水素雰囲気下で1300°Cで2時間焼成することにより、マグネシウム置換型λ-Ti3O5の試料を得ました。
実験:試料のナノ粒子の形状と粒径は、JSM-7000F走査型電子顕微鏡(SEM)及びJEM2000EX透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して観察しました。SEMの加速電圧は10 kVまたは15 kV、TEMの加速電圧は200.0 kVにそれぞれ設定しました。X線回折装置(XRD)を使用して結晶構造を調べました。蛍光X線分析装置(XRF)を使用して元素分析を行いました。示差走査熱量計(DSC)を使用して相転移温度及び熱量を測定しました。

結果と考察 / Results and Discussion

合成した試料はλ-MgxTi3-xO5(0<x≦0.053)であり、圧力を加えることによりβ-MgxTi3-xO5に相転移することがわかりました。また、Mg置換により、β相からλ相への相転移の蓄熱の温度を、x=0の196℃(469K)からx=0.053の80℃(353K)まで低下させることに成功しました。この相転移温度域は、火力発電所からの廃熱の再利用に適しています。蓄えられた熱エネルギーは、0<x≦0.053の範囲で215〜227kJ L-1という大きな値を維持していました。このように潜熱エネルギーを長期間保存できる環境に優しい圧力応答性蓄熱セラミックスは、発電所や工場などで捨てられている熱エネルギーを持続的に再利用するために有効です。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


λ-Mg0.015Ti2.985O5の粒子形状のSEM画像。



λ-Mg0.022Ti2.978O5の粒子形状のSEM画像。



λ-Mg0.043Ti2.957O5の粒子形状のSEM画像。



λ-Mg0.053Ti2.947O5の粒子形状のSEM画像。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] Ohkoshi, S. et al. Nat. Chem. 2, 539–545 (2010). [2] Tokoro, H. et al. External stimulation-controllable heatstorage ceramics. Nature Commun. 6, 7037/1–8 (2015). [3] Ohkoshi, S., Tokoro, H., Nakagawa, K. et al. Scientific Reports 9, 13203 (2019). 本研究では、特にTEM観察において総合研究機構ナノ工学研究センターの押川様に、SEM観察において総合研究機構ナノ工学研究センターの福川様にご協力を頂きました。厚く御礼を申し上げます。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Shin-ichi Ohkoshi, Pressure effect on long-term heat storage ceramics based on Mg-substituted λ-Ti3O5, Materials Advances, 3, 4824-4830(2022).
    DOI: https://doi.org/10.1039/D2MA00278G
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. ○続麻優菜(東京大学),大越慎一(東京大学),吉清まりえ(東京大学),生井飛鳥(東京大学),Dielectric properties of λ-Ti3O5 in the sub-terahertz wave region and their applications,日本セラミックス協会関東支部 研究発表会,9/7/2022
  2. ○続麻優菜(東京大学),大越慎一(東京大学),吉清まりえ(東京大学),生井飛鳥(東京大学),Dielectric properties of λ-Ti3O5 in the sub-terahertz wave region and their applications,日本セラミックス協会関西支部 若手フォーラム,10/4/2022
  3. ○続麻優菜(東京大学),大越慎一(東京大学),吉清まりえ(東京大学),生井飛鳥(東京大学),機能性ナノセラミックスλ-Ti3O5の誘電特性とその応用,日本材料学会 材料シンポジウム,10/11/2022
  4. ○続麻優菜(東京大学),大越慎一(東京大学),吉清まりえ(東京大学),生井飛鳥(東京大学),機能性ナノセラミックスλ-Ti3O5の誘電特性とその応用,日本化学会秋期事業 第12回CSJ化学フェスタ2022,10/20/2022
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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