【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.26】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KT1285
利用課題名 / Title
酸化ガリウム表面におけるヘテロエピタキシー初期過程の研究
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
ワイドギャップ半導体,パワーデバイス,走査プローブ顕微鏡,蒸着・成膜/Evaporation and Deposition,CVD,3D積層技術/ 3D lamination technology,パワーエレクトロニクス/ Power electronics
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
岡田 有史
所属名 / Affiliation
京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
竹本利々子,村上翔平,山路法哉,山脇聡真
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
竹内弥生
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KT-219:ダイシングソー
KT-220:真空マウンター
KT-221:紫外線照射装置
KT-222:エキスパンド装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
β-Ga2O3を用いたデバイス構造を作製する上で、別の物質をp層としたヘテロエピタキシーが有望な方法と考えられる。ヘテロエピタキシーで結晶性が良く欠陥が少ない構造を作製するには、成長初期過程に着目し、基板表面のモルフォロジーと欠陥生成を関連付けて理解することが重要である。本研究では成長初期過程のモデルとして、β-Ga2O3の表面にNiを蒸着し、酸素暴露を行うことで構造の生成および変化を観察することとした。研究を行うにあたり、β-Ga2O3の結晶は[010]方向にきわめてへき開しやすい性質を持つので、ダイシングソーを用いて切断加工を行った。
実験 / Experimental
Snドープβ-Ga2O3(-201)ウエハの表面にフォトレジストを塗布して保護し、ダイシングソーを用いて超高真空装置に導入できるサイズにカットした。カットした試料は洗浄後、超高真空チャンバに導入し、熱処理による脱ガスおよびステップ-テラスの作製を行った。次いで電子ビーム蒸着装置を用いてNiを1 ML以下で少しずつ蒸着し、走査トンネル顕微鏡(STM)で観察した。
図1に、Ga2O3(001)基板に対し最適化された温度条件で大気中での熱処理を行った際のAFM像を示す。挿入図はそれぞれ直線ABに沿った断面プロファイルとゾルゲル法によってごく薄いNiO層を作製した後のAFM像で、挿入図のスケールバーは100 nmである。
STMで観察困難となった試料(後述)については非接触原子間力顕微鏡(NCAFM)で観察を行った。NCAFMを行う際には、AFM探針の発振は専用の発振回路(easyPLL)を用いた。
結果と考察 / Results and Discussion
表面にNiを蒸着すると、面内の大きさ約1nmの粒子がテラス上のランダムな位置に生成し、1 minの蒸着でほぼ表面全域が被覆された。これらのNi粒子は表面から受ける束縛が弱く、STM観察中に表面を移動する様子が観察された。図1のAFM像の断面プロファイルから、凹凸の高さは結晶の面間隔に対応しており、表面の原子配列がよく制御できていることが示唆される。
表面全域が被覆された試料を超高真空中において700℃程度で加熱すると、トンネル電流が不安定となり、STM観察が著しく困難となった。このトンネル電流の不安定化の原因として、Niの粒子が成長したことにより運動によるトンネル電流の変化がSTMでフォローできないほど大きくなったか、Niとβ-Ga2O3の間に反応が起こってp型の領域が生成し、トンネル電流がダイオードの逆方向に対応してしまった等が考えられた。NCAFMでは粒子の成長が見られ、粒子の運動の影響が大きいと考えられた。しかしながら、Niとβ-Ga2O3の反応の影響も排除できないため、今後は熱処理温度を下げるなどしてトンネル電流の変化を詳細に調べる必要があると思われる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 β-Ga2O3(001)基板に対し最適化された温度条件で大気中での熱処理を行った際のAFM像。挿入図はそれぞれ直線ABに沿った断面プロファイルとゾルゲル法によってごく薄いNiO層を作製した後のAFM像。挿入図のスケールバーは100 nm
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- (1) 竹本利々子, 岡田有史, 角野広平, "β-Ga2O3(-201)表面におけるNi粒子の生成および成長のUHV観察", 第70回応用物理学会春季学術講演会(東京), 17a-PB01-7, 令和5年3月17日
- (2) Y. Seki, A. Okada, Y. Kajita, H. Nishinaka, K. Kadono, The 22nd International Vacuum Congress, Tue-PO1B-10 (2022/9/13, Sapporo) poster.
- (3) A. Okada, R. Takemoto, K. Kadono, The 22nd International Vacuum Congress, Tue-PO1C-15 (2022/9/14, Online) poster.
- (4) 村上翔平, 關裕介, 岡田有史, 角野広平, 第83回応用物理学会秋季学術講演会(2022/9/23仙台), 23a-P06-3, ポスター
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件