【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.08】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KT1248
利用課題名 / Title
亜臨界水処理による糖の異性化に及ぼす卵殻の効果
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
卵殻,亜臨界水処理,希少糖,異性化,表面構造,電子顕微鏡/Electron microscopy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
小林 敬
所属名 / Affiliation
京都大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
尾西佑一朗,高谷道也,二俣真
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
佐藤政司
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ガラクトース溶液に卵殻または炭酸カルシウムを添加し、亜臨界水処理を行うと希少糖であるタガトースが生成した。反応温度を上昇させる、あるいは反応時間を延長すると希少糖収率は上昇した。一方、希少糖収率の上昇に伴い、有機酸収率も上昇し、反応液のpHが低下した。 亜臨界水処理に用いた卵殻を繰り返し反応に利用した。卵殻を3回繰り返し反応に用いると、タガトースの収率はやや減少したが、タガトースの選択率は増加した。SEMを用いて卵殻の表面構造を観察したが、繰り返しによる変化は確認されなかった。このことから、卵殻内部の構造が変化した可能性が示唆された。
実験 / Experimental
材料 ガラクトースおよび炭酸カルシウム(卵殻主成分)は富士フイルム和光純薬(大阪)より、卵殻はリーフコーポレーション(群馬)より購入した。
卵殻・炭酸カルシウム添加の有無が希少糖の生成挙動に及ぼす影響
希少糖の生成に関して、回分式反応器を用い、ヒートブロック中に反応器を入れ、加熱することで亜臨界水処理を実施した。ガラクトースを終濃度が5
wt%になるように蒸留水に溶解し、原料糖溶液とした。反応器であるネジ口試験管に原料糖溶液5
mL及び卵殻または炭酸カルシウムを0~500 mg加え、密閉した。反応器をヒートブロックに入れ、105~120℃で0~120 min加熱(反応)した。反応中は5 minに1回試験管をヒートブロックから取り出し、卵殻または炭酸カルシウムが分散するまで手で震盪した。反応後は氷浴を用いて急冷した。
卵殻および炭酸カルシウムの反復使用が希少糖の生成挙動に及ぼす影響
上述の手法に準じて、卵殻または炭酸カルシウム存在下でガラクトースの亜臨界水処理を実施した(120℃、60 min)。処理液をろ紙を用いてろ液と粉末を分離し、粉末をデシケーターで減圧乾燥した。この粉末を用いて再度、同様の亜臨界処理を実施した。この操作を3回繰り返し、希少糖の収率及び選択率を測定した。また、1~3回の繰り返し後に得られた粉末について、SEM観察を実施した。その際、卵殻粉末の表面構造を分析走査電子顕微鏡(SU-6600、日立、東京)で観察した。
結果と考察 / Results and Discussion
卵殻及び卵殻主成分がタガトース収率に及ぼす影響
図1に卵殻及び炭酸カルシウムがタガトース収率の経時変化に及ぼす影響を示す。105℃、120℃共に卵殻を添加すると炭酸カルシウムを添加した場合よりもタガトース収率が上昇した。そして、タガトース収率は最高で15.5%
(卵殻使用、反応温度120℃、反応時間120 min)を達成した。すなわち、卵殻がガラクトースの異性化に有効であると示唆される。また、卵殻には主成分である炭酸カルシウムの他に、微量成分が含まれており、それらがタガトースの異性化を促進していると考えられる。また、図2に反応液のpHの経時変化を示す。卵殻、炭酸カルシウムのいずれを用いた場合も反応時間が長くなるほどpHは低下した。その程度は、卵殻と炭酸カルシウムの間で有意な差ではなかった。
卵殻及び炭酸カルシウムの反復使用による表面構造の変化(SEM観察)
図3~10に亜臨界水処理前後の卵殻(処理前、1~3回処理)のSEM画像を示す。何れの亜臨界水処理回数の場合にも、破砕粉末状の卵殻が観測されたが、処理による粉末の大きさに明確な変化は認められなかった。また、卵殻粉末の表面構造ならびに気孔の存在が確認できたが、処理前後でのそれらの明確な変化は認められなかった。以上のように、いずれの倍率においても卵殻の繰り返し使用による表面構造の変化は認められなかった。
卵殻および炭酸カルシウムの反復使用が希少糖の生成挙動に及ぼす影響
卵殻および炭酸カルシウムによる処理を繰り返した際の、タガトース収率およびタガトース選択率の変化を図11に示す。使用回数の増加とともに、卵殻、炭酸カルシウムの双方においてタガトース収率は緩やかに減少した。一方、タガトース選択率は卵殻、炭酸カルシウムの双方で上昇した。すなわち、卵殻または炭酸カルシウム粉末を繰り返し反応に用いる程、反応に適した粉末に変化することを示唆している。この理由については現状、不明であり、卵殻の表面構造の変化には起因しないが、卵殻内部の構造が変化している可能性がある。これらは、今後明らかにしていくべき事項である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. 卵殻及び炭酸カルシウムがタガトース収率に及ぼす影響
図2. 卵殻及び炭酸カルシウムが処理液のpHに及ぼす影響
図3. 処理前卵殻のSEM画像 (×4000)
図4. 1回処理卵殻 (×4000)
図5. 2回処理卵殻(×4000)
図6. 3回処理卵殻(×4000)
図7. 処理前卵殻 (×20000)
図8. 1回処理卵殻 (×20000)
図9. 2回処理卵殻(×20000)
図10. 3回処理卵殻(×20000)
図11. 卵殻、炭酸カルシウムの反復使用がタガトース収率及びタガトース選択率に及ぼす影響(120℃、60 min)
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究は、2022年度旗影会研究助成により実施した。この場を借りて御礼申し上げる。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件