【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.18】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KT1138
利用課題名 / Title
酸化ガリウム表面におけるヘテロエピタキシー初期過程の研究
利用した実施機関 / Support Institute
京都大学 / Kyoto Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
走査プローブ顕微鏡,ワイドギャップ半導体,ヘテロエピタキシー,酸化ガリウム,蒸着・成膜/Evaporation and Deposition,パワーエレクトロニクス/ Power electronics
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
岡田 有史
所属名 / Affiliation
京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
山路法哉,山脇聡真,村上翔平,竹本利々子
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
竹内弥生
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KT-219:ダイシングソー
KT-220:真空マウンター
KT-221:紫外線照射装置
KT-222:エキスパンド装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ワイドギャップ半導体のβ-Ga2O3は高い絶縁破壊電界強度を持ち、融液から単結晶を成長させることができるため、次世代パワーデバイスの材料として注目されている。しかし、この物質はn型になる一方でp型にすることがきわめて困難であるという短所を持っている。β-Ga2O3を用いたデバイス構造を作製する上で、別の物質をp層としたヘテロエピタキシーが有望な方法と考えられる。ヘテロエピタキシーで結晶性が良く欠陥が少ない構造を作製するには、成長初期過程に着目し、基板表面のモルフォロジーと欠陥生成を関連付けて理解することが重要である。今回の研究では、六方晶に適した(-201)表面より安定性の高いβ-Ga2O3(001)表面に着目し、酢酸ニッケルを用いてNiOを生成させ、成長過程を観察することとした。研究を行うにあたり、β-Ga2O3の結晶は[010]方向にきわめてへき開しやすい性質を持つので、ダイシングソーを用いて切断加工を行った。
実験 / Experimental
Snドープβ-Ga2O3(001)ウエハの表面にフォトレジストを塗布して保護し、ダイシングソーを用いて超高真空装置に導入できるサイズにカットした。カットした試料は洗浄後、電気炉を用いて大気中で熱処理し、ステップ-テラス構造を作製した。このときの熱処理条件は温度と時間を変化させ、試料の酸素取り込みによる導電性の消失が起こらない範囲で最適化を行った。熱処理後の試料に、2-メトキシエタノールを溶媒とした酢酸ニッケル溶液をスピンコートし、溶媒蒸発、反応および結晶化の3段階の熱処理を行った。このうち、溶媒蒸発と反応を1セットとし、このサイクル数で膜厚を制御した。
結果と考察 / Results and Discussion
β-Ga2O3(001)は(-201)表面の場合に400℃でステップ-テラス構造が生成した[1]のに対し、ステップ-テラス構造の生成には800℃が必要であった。この表面に溶液からNiOを生成させると、表面は10~20nmの粒子で覆われ、別の方法(ミストCVD法)で成長を行った場合と同様のモルフォロジーが得られた。図1にβ-Ga2O3(-201)基板に対し、Niを蒸着した表面像の一例を示す。光透過スペクトルから、生成物はNiOの光学バンドギャップを持っていることがわかった。表面を被覆していた粒子のサイズはNiOとβ-Ga2O3(001)の格子ミスフィットに影響を受けていると考えられ、成長モードは(-201)表面の場合と類似していると考えられた。図2に予想した原子配列の構造モデルを示す。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 β-Ga2O3(-201)基板に対し、Niを蒸着した表面の一例。蒸着時間は30 s。トンネル条件は試料バイアス+6.0 V、トンネル電流0.1 nAでスキャン。
図2 Ni/Ga2O3(-201)について予想した構造モデル。左から清浄表面の構造最適化前、最適化後、Niを並べたもの、そしてその構造最適化後の原子配置。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
[1]Arifumi Okada,, Masahiro Nakatani, Lei Chen, Romualdo A. Ferreyra, Kohei Kadono, "Effect of annealing conditions on the optical properties and surface morphologies of (-201)-oriented β-Ga2O3 crystals", Appl. Surf. Sci., 574, 151651 (2022).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Yusuke Seki, Arifumi Okada, Yuki Kajita, Hiroyuki Nishinaka, Kohei Kadono, "Effect of Surface Orientation and Morphology of β-Ga2O3 Substrates on the Initial Stage of NiO Epitaxial Growth", THE 22ND INTERNATIONAL VACUUM CONGRESS (札幌), Tue-PO1B-10, 令和4年9月13日
- Arifumi Okada, Ririko Takemoto, Kohei Kadono, "STM Observation and Theoretical Study of Ni-Deposited β-Ga2O3(-201) Surfaces", THE 22ND INTERNATIONAL VACUUM CONGRESS (札幌), Tue-PO1C-15, 令和4年9月14日
- 村上翔平, 關裕介, 岡田有史, 角野広平, "β-Ga2O3(001)表面のステップ-テラス形成およびエピタキシーへの応用", 第83回応用物理学会秋季学術講演会(仙台), 23a-P06-3, 令和4年9月23日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件