【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.17】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22BA0048
利用課題名 / Title
金属ハライドペロブスカイト半導体の物性評価
利用した実施機関 / Support Institute
筑波大学 / Tsukuba Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
ラマン分光,電子分光,太陽電池/ Solar cell
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
松石 清人
所属名 / Affiliation
筑波大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
服部亮佑,Md. Abdul Karim,Shamim Ahmmed,圓道多起
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
非鉛系ペロブスカイト太陽電池材料の光・電子物性と構造物性の相関には不明な点が多く、変換効率向上と結晶安定化のためには基礎物性の解明が不可欠である。本研究では、顕微ラマン分光装置を使用して高圧力印加による局所構造の変化を調べた。また、Sn系ペロブスカイト太陽電池材料ではSn2+からSn4+への酸化並びにI-欠損が大きな問題となっている。本研究では、X線光電子分光装置を用いてSnイオンの酸化状態(価数の変化)とI-欠損について調べた。
実験 / Experimental
1) 顕微ラマン散乱測定(JASCO NRS-5100)
Cs₂AgInCl₆単結晶に対して、ヘリウムを圧力媒体として大気圧~24.6 GPaまで加圧しながら測定を行い、その後再び大気圧まで減圧しながら測定を行った。
2) X線光電子分光測定(JOEL
JPS-9010TR)
グアニジン系の1,3-ジアミノグアニジン塩酸塩を添加したSn系ペロブスカイト半導体膜のSnとIの価数状態を調べた。
結果と考察 / Results and Discussion
加圧過程のCs₂AgInCl₆単結晶のラマン散乱スペクトルの圧力変化を図1に⽰す。8.1 GPaまでは観測された3つのピークP1, P2, P3が高波数側へシフトしていき、8.4 GPa付近でピークが分裂した。このピーク分裂は、3つのピークから9つのピークに分裂する変化であり、P1(T2g:4個のClのはさみ(変角)振動)、P2(Eg:4個のClの反対称伸縮振動)、P3(A1g:4個のClの対称伸縮振動)がそれぞれ3成分に分裂していると考えられる。このピークの分裂は、X線回折測定で観測した8 GPa付近でのⅠ相(cubic Fm-3m)からⅡ相(tetragonalを基本構造とし、それにインコメンシュレートな変調構造が加わった構造)への構造相転移に対応していることがわかった。
Sn系ペロブスカイト半導体FASnI3(FA: NH2CHNH2)の前駆体溶液にグアニジン系の1,3-ジアミノグアニジン塩酸塩(DAGCl)添加剤を導入してSn系ペロブスカイト太陽電池を作製した。その結果、DAGClのDAG+とSnI2のI-が結合し、ペロブスカイト膜のI-欠損が抑制されることをX線光電子分光(XPS)から明らかにした。さらに、XPS測定から、Cl-イオンが配位不足のSn2+イオンと配位し、ペロブスカイト構造を安定化させ、Sn2+がSn4+に酸化されるのを効果的に抑制することもわかった。このSn2+の酸化とI-欠損の抑制によって、電力変換効率が向上し、安定性が改善した。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 加圧過程のCs₂AgInCl₆単結晶のラマン散乱スペクトル
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Md. Abdul Karim, Additive-Assisted Electronic Defect Passivation in Lead-Free Tin Perovskite Solar Cells: Suppression of Sn2+ Oxidation and I– Losses, ACS Applied Energy Materials, 5, 15038-15047(2022).
DOI: 10.1021/acsaem.2c02677
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 服部亮佑, 松石清人, 中野智志, 藤久裕司, “鉛フリーハライド系ダブルペロブスカイト半導体Cs₂AgInCl₆の高圧下光物性と結晶構造”, 第63回高圧討論会, 令和4年12月15日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件