利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.16】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22BA0030

利用課題名 / Title

XPSを利用した窒素ドープカーボン触媒電極触媒反応における素過程の解明

利用した実施機関 / Support Institute

筑波大学 / Tsukuba Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

燃料電池/ Fuel cell,電極材料/ Electrode material


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

武安 光太郎

所属名 / Affiliation

筑波大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

林田健志,本間海斗,清水玲,藤田翔子,藤田周作,齋藤詳太

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

BA-015:X線光電子分光装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

ピリジン酸窒素(pyri-N)ドープグラフェンは、アルカリ性環境下で燃料電池の酸素還元反応(ORR)に高い活性を示すが、酸性環境下ではその活性が決定的に低下する。我々は、酸素吸着とpyri-Nの水素化の連動反応がORRキネティクスを支配しているというメカニズム的理解に基づき、活性低下を防止する方法について報告した。まず、不活性化はpyri-NH+の水和によるもので、酸化還元電位の低下につながる。疎水性籠状構造を導入することで、活性は向上した。一方、XPSによる評価から、籠状構造で活性点である窒素の個数および状態に変化はなかった。疎水性に導入によって阻害されたプロトン伝導を補うために、イオン液体ポリマー/Nafion®でコーティングしたSiO2粒子を導入したところ、酸性媒体でも高いオンセット電位を維持し、電流密度を高めることができた。

実験 / Experimental

NaCl 微結晶とグラフェンシートの混合溶液を乾燥させた後、固体混合物を 750 ℃で NH3 に曝露し、rGO に窒素を取り込ませることでNドープ還元グラフェン酸化物(NrGO)に疎水性を導入した。その後、水中でNaCl微結晶を選択的に溶出させることにより、3次元籠状構造を有するグラフェン複合体が得られ、ケージド窒素ドープ酸化グラフェン(caged-NrGO)と呼ばれるようになった。比較のため、NrGOも同様の方法で作製した。調製した粉末試料のX線光電子分光法(XPS)は、日本電子株式会社製JPS 9010 TRを用い、X線源はMgKα(1253.6eV)を用いた。

結果と考察 / Results and Discussion

図1aに試料調製の概要を示す。図1bおよび図1cに示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像からわかるように、caged-NrGOでは明確な籠状構造が見られるが、NrGOでは積層が観察された。caged-NrGOの細孔サイズは10~50μmであり、これは1~50μmのグラフェンシートのサイズと同程度である。caged-NrGOとNrGOでは形態が異なるが、図1d、1e、および図S3に示すように、ラマン分光法、X線光電子分光法(XPS)、およびX線回折で測定した化学組成と原子構造は似ていた。ドープした窒素中のpyri-Nの濃度は〜6 wt%であり、グラフェンシートの品質を示すID/IG比は1.1であった。NrGOとcaged-NrGOで測定した接触角はそれぞれ94°±1°と127°±1°であり(図1f, g)、caged-NrGOの方が高い疎水性を示すことがわかった。また、相分離法を用いて、NrGOとcaged-NrGOの疎水性の違いを確認した。化学成分が類似した触媒のマクロな疎水性の違いは、マクロなロータス効果に由来する疎水性であることを裏付けている。酸性溶媒では、caged-NrGOはNrGOよりも有意に高いORR活性を示したが、アルカリ性媒体では、両触媒は同様の活性を示した。NrGO、caged-NrGO、Pt/C触媒のオンセット電位(Eonset)は、それぞれ0.90、0.96、0.96 (V vs. RHE)であった。NrGO および caged-NrGO のアルカリ性媒体での活性は、N ドープグラフェン触媒の既報と同様に、Pt/C に近いものであった。一方、NrGO と caged-NrGO は 0.50 M H2SO4 水溶液中で ORR 活性が著しく異なり、オンセット電位は、それぞれ0.65 Vと0.86 Vであった。一方caged-NrGOのオンセット電位は0.86 Vと依然として高く、Pt/Cよりも0.1 V低い程度に留まった。酸性条件下では、NrGOとcaged-NrGOの電極触媒活性には、疎水性以外の触媒組成はほぼ同じであるにもかかわらず、明確な違いが見られる。caged-NrGOの活性は、メタルフリー触媒の中で最高レベルの活性を示した。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1. Preparation of the caged-NrGO catalyst, and its physical and chemical properties. (a) Schematic of the synthesis of 3D N-doped porous graphene (caged-NrGO) catalysts using NaCl crystals as spacers; (b)-(c) Scanning electron microscopy images illustrating stacked 2D graphene sheets of NrGO and the 3D morphology of caged-NrGO; (d) Raman spectra of NrGO and caged-NrGO depicting D (~ 1350 cm-1) and G (~ 1580 cm-1) peaks with an intensity ratio ID/IG of ~1.1; (e) N1s spectra of  NrGO and caged-NrGO illustrating the close percentage of doped pyri- and grap-N (~60 % and ~40 %);  (f)-(g) Contact angles of NrGO (CA: 92o ± 1o) and caged-NrGO (CA: 127o ± 1o).


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

2022年11月16日付日刊工業新聞 に掲載。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Santosh K. Singh, Activating Nitrogen‐doped Graphene Oxygen Reduction Electrocatalysts in Acidic Electrolytes using Hydrophobic Cavities and Proton‐conductive Particles, Angewandte Chemie International Edition, 61, (2022).
    DOI: 10.1002/anie.202212506
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:1件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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