利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22TU0189

利用課題名 / Title

陽極酸化TiNbSn合金の生体適合性

利用した実施機関 / Support Institute

東北大学 / Tohoku Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

チタン系生体材料,集束イオンビーム/Focused ion beam,バイオアダプティブ材料/ Bioadaptive materials,抗菌・抗ウイルス材料/ Antibacterial/antiviral materials


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

正橋 直哉

所属名 / Affiliation

東北大学 金属材料研究所

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

久保田真彩

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

TU-507:集束イオンビーム加工装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

申請者等はインプラントチタン合金の生体機能を改善するために、表面に電気化学にて酸化膜をコーティングし、その機能と機能発現機構の解明の研究を行っている。本申請では、インプラント用に申請者グループが開発した低ヤング率TiNbSn合金(以下TNS)基板[1]に、陽極酸化法でTiO2をコーティングした試料に対し、摩耗と腐食の両機能を同時に測定できるトライボコロージョン試験を行う。TiO2コーティングのトライボコロージョン機能に及ぼす効果を明らかにすることを目的に、摩耗面の断面観察をFIB-SEM法にて行う。なお比較材として純Ti(cpTi一種)にも同様の陽極酸化を施して、その違いを調査した。

実験 / Experimental

TNSおよびTi基板に対し、酒石酸Naに過酸化水素を添加した電解浴中にて、定電流条件下で陽極酸化処理を行う。トライボコロージョン試験機は電気化学セル(作用極を試料、対極を白金電極、参照電極をAg/AgCl電極とした三極法)をBall-on-Flat型往復摺動式摩擦摩耗試験機に取り付け、摩耗試験中の動摩擦係数(COF)と開回路電位(OCP)をin-situで同時に測定する。試料の相手材には4.76 mmφのSiC球を用い、細胞培養用の平衡塩溶液であるHanks’ Balanced Salt Solution(HBSS, GIBCO, USA)中にて、垂直荷重10 N、ストローク幅200 µm、往復回数2000回のFretting条件で2400秒間のfretting摩耗を行った後に、FIBでカーボンコーテイングを施し断面サンプリングをする。 

結果と考察 / Results and Discussion

摩耗痕(Fig.1 (a)(d))の赤線部をFIBにて加工しサンプリングする。断面観察の結果、TNS上二酸化チタンは摩耗後も残存するが (Fig.1 (b))、Tiでは一部が剥離していた(Fig.1 (e))。この原因はTi基板上二酸化チタンがTNS基板上二酸化チタンより密着強度が低いことに起因する[2]。EDXマッピングからSi摩耗粉がTNS上酸化膜では表面近傍に分布するが(Fig.1 (c))、Ti基板上酸化膜では膜厚方向に均一に分布し(Fig.1 (f))、酸化膜の内部まで浸透していることが明らかになった。すなわち前者では多孔質構造の酸化膜のポアのみにSiが圧縮されて分布するが、後者は酸化膜の摩耗損傷が激しく、Si摩耗粉が内部まで入り込んだと考察する。以上から、TNS上二酸化チタンは基板密着力が高いために試験後も形態を維持するが、比較材のTi上二酸化チタンは密着力が低いために一部が剥離すること、またアブレッシブ摩耗により発生したSi摩耗粉は前者では表面ポアに分布するのに対し、後者は内部まで浸透することが明らかになった。本研究によりTNS上陽極酸化膜がfretting摩耗に対し、高い耐摩耗性を有すると結論できる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig.1  TNS (a-c), Ti(d-f)基板上二酸化チタンのfretting摩耗試験後の摩耗痕(a, d)、断面組織(b, e)、およびSi(c, f)のEDXマッピング


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

【参考文献】
[1] S. Hanada, N. Masahashi and T.-K. Jung, Mater. Sci. Eng. A 588 (2013) 403–410.
[2] M. Hatakeyama, N. Masahashi, Y. Michiyama, H. Inoue, S. Hanada, Mat. Sci. Eng. A 825 (2021) 141898.
【謝辞】本申請を行うにあたり相談にのって頂いた今野豊彦特任研究員、ならびにFIB加工ならびにSEM観察を行って頂きました兒玉裕美子学術研究員に感謝申し上げます。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 日本金属学会2022年秋季講演大会「インプラント用陽極酸化TiNbSn合金のトライボコロージョン特性」
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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