利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.24】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22TU0152

利用課題名 / Title

加工プロセスを用いた構造用金属材料の高機能化

利用した実施機関 / Support Institute

東北大学 / Tohoku Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

鉄鋼材料, チタン基合金, Co基合金,集束イオンビーム/Focused ion beam


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

山中 謙太

所属名 / Affiliation

東北大学 金属材料研究所

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

森真奈美

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

TU-507:集束イオンビーム加工装置
TU-508:集束イオンビーム加工装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本課題では、塑性加工・加工熱処理やAdditive Manufacturingにおける構造用金属材料の組織形成を明らかにし、複数特性を両立した高機能構造用金属材料の創製のための組織・特性制御の確立とそのメカニズム解明に取り組む。そのため、FIBを用いて作製した試料の透過電子顕微鏡観察を行い、材料特性との関係について検討した。

実験 / Experimental

本課題では鉄鋼材料、チタン合金、生体用Co-Cr合金を含むFCC系ハイエントロピー合金を対象に研究を行った。鉄鋼材料に関する研究では、耐摩耗性と耐食性を両立したCu添加高C鋼の開発に取り組んだ。先行研究[1,2]にて選定した基本組成Fe-16Cr-3W-1C-2Cu (mass%)に対して、焼入れ・焼戻し条件を検討し、最適化した。本課題では、焼入れ及び焼戻し状態における試料を対象にFIBを用いたサンプリングを行い、他施設のSTEM-EDSを用いた組織観察と合金元素分布の評価を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

図1に、Fe-16Cr-3W-1C-2Cu合金の焼戻し後の組織観察結果を示す。本合金においてマトリックスの耐食性を高める目的で添加しているCuはオーステナイト化の際にマトリックスに固溶し、その後焼入れることによりCuが均一に分布したマルテンサイトを得ることができる。図1に示したHAADF-STEM像では元素分配に起因した明確なコントラストは観察されないが、STEM-EDSによる元素マッピングの結果、焼戻しによりマルテンサイト相内に数nm程度のCuリッチ相が析出することがわかった。また、他の合金添加元素は析出相とマトリックスの間で明瞭な分配を示さないことから析出相は純Cuに近い組成を有すると考えられ、熱力学計算ともよく一致する結果が得られた。このようなナノCu相は炭化物とともに強化に寄与する一方、耐食性にも影響を及ぼすものと考えられる。今後、耐食性の観点から析出状態の最適化に取り組む予定である。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 焼入・焼戻処理後のFe-16Cr-3W-1C-2Cu合金のHAADF-STEM像とSTEM-EDSマッピング結果


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] C. Zhang, K. Yamanaka, H. Bian, A. Chiba, Corrosion-resistant carbide-reinforced martensitic steel by Cu modification, npj Materials Degradation, 3 (2019) 30.[2] K. Yamanaka, M. Mori, K. Yoshida, Y. Onuki, S. Sato, A. Chiba, Surface evolution and corrosion behaviour of Cu-doped carbide-reinforced martensitic steels in a sulphuric acid solution, npj Materials Degradation 5 (2021) 43.【謝辞】本研究は、ARIM事業、科研費基盤研究(B) (20H02472)、科研費学術変革領域研究(A) (22H05274)の支援を受けて行われた。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Kenta Yamanaka, Dislocation Density of Electron Beam Powder Bed Fusion Ti–6Al–4V Alloys Determined via Time-Of-Flight Neutron Diffraction Line-Profile Analysis, Metals, 13, 86(2022).
    DOI: 10.3390/met13010086
  2. Jiaxiang Li, Suzuki hardening and segregation in Co0.95Cr0.8Fe0.25Ni1.8Mo0.475 high-entropy alloys, Scripta Materialia, 226, 115260(2023).
    DOI: 10.1016/j.scriptamat.2022.115260
  3. Karri Sri Naga Sesha, Demonstrating a duplex TRIP/TWIP titanium alloy via the introduction of metastable retained β-phase, Materials Research Letters, 10, 754-761(2022).
    DOI: 10.1080/21663831.2022.2096419
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 山中 謙太, “合金設計と加工プロセスによる生体用金属材料の高機能化”, 第244回IBBセミナー 国際・産学連携インヴァースイノベーション材料創出プロジェクト第3回バイオ・医療機器材料分野研究会(オンライン), 2022年5月11日(招待講演)
  2. 山中 謙太, 李 家翔, 楊 程, 青柳 健大, 千葉 晶彦, “ハイエントロピー合金のAdditive Manufacturingにおける組織形成と材料特性への影響”, 日本金属学会2022年秋期講演大会(福岡), 2022年9月22日(基調講演)
  3. 山中 謙太, “Additive Manufacturingを用いた高機能構造用金属材料・部材の創製”, 日本金属学会2022年秋期講演大会(福岡), 2022年9月23日(招待講演)
  4. 山中 謙太, 崔 玉傑, 趙 宇凡, 森 真奈美, Jérôme Adrien, Eric Maire, Damien Fabrègue, 千葉 晶彦, “粉末特性と凝固メカニズムに着目した電子ビーム積層造形におけるポロシティの低減”, 日本金属学会2022年秋期講演大会(福岡), 2022年9月23日(基調講演)
  5. Kenta Yamanaka, “Metal additive manufacturing for improved properties”, The 6th Symposium for the Core Research Clusters for Materials Science and Spintronics/The 5th Symposium on International Joint Graduate Program in Materials Science (Sendai), 2022年10月26日
  6. 山中 謙太, 青田 昇哉, 森 真奈美, 佐々木 信之, Jérôme Adrien, Eric Maire, Damien Fabrègue, 千葉 晶彦, “電子ビーム積層造形法により作製したCo-Cr-Mo合金における凝固挙動と造形欠陥に及ぼすC添加量の影響”, 粉体粉末冶金協会2022年度秋季講演会(京都), 2022年11月17日
  7. 山中 謙太, 森 真奈美, 吉田 和男, 小貫 祐介, 佐藤 成男, 千葉 晶彦, “熱間溝ロール圧延による準安定ハイエントロピー合金の高強度化”, 日本塑性加工学会第73回塑性加工連合講演会(仙台), 2022年11月18日
  8. 山中 謙太, “放射光・中性子を用いたチタン合金の組織・塑性変形解析”, 日本鉄鋼協会チタンフォーラム「ポストコロナ社会を支える高機能チタン材料」R4年度講演会「測定技術の進歩によるTi研究の進展」(東京), 2022年12月23日(招待講演)
  9. 山中 謙太, 森 真奈美, 吉田 和男, 小貫 祐介, 佐藤 成男, 千葉 晶彦, “熱間溝ロール圧延加工とN添加を組み合わせた準安定ハイエントロピー合金の高強度化”, 日本金属学会2023年春期講演大会(東京), 2023年3月10日
  10. 山中 謙太, 青田 昇哉, 佐々木 信之, 千葉 晶彦, 森 真奈美, J. Adrien, E. Maire, D. Fabrègue, “Co−Cr−Mo 合金の電子ビーム積層造形における炭素添加の影響”, 国際・産学連携インヴァースイノベーション材料創出プロジェクト -DEJl2MA プロジェクト- 第1回公開討論会(東京), 2023年3月11日
  11. Kenta Yamanaka, Shoya Aota, Manami Mori, Jérôme Adrien, Eric Maire, Damien Fabrègue, Akihiko Chiba, “Alloy design approach for reducing powder-originated gas pores in electron beam powder bed fusion”, EBAM (International Conference on Electron Beam Additive Manufacturing) 2023 (Germany), 2023年3月23日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:1件

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