【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.25】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22TU0016
利用課題名 / Title
機能性金属材料の構造解析
利用した実施機関 / Support Institute
東北大学 / Tohoku Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
配線, 銅基合金, 導電性銅基合金,集束イオンビーム/Focused ion beam
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
千星 聡
所属名 / Affiliation
東北大学 金属材料研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
小型電子機器を構成する電子部材の導電銅線材では強度と導電率の両立が求められている.強度と導電率の両立のためには適切な添加元素の選択や加工熱処理による組織制御が効果的である.我々のグループでは,Cu-In固溶体単相合金では伸線加工初期に高密度の変形双晶が生成し,更なる加工にて超微細粒組織となることを示した.Cu- 5 at.% In合金線材の引張強度は1420 MPa,導電率は23 %IACSであり,時効硬化型の実用高Be銅(強度1400 MPa,導電率20 %IACS)と同等以上の特性であった.Cu-In合金伸線加工材にて超微細粒組織となるのは,本合金の積層欠陥エネルギー(SFE)が極めて低いことが主要因と推察しているが,伸線加工に伴う銅合金の組織形成にSFEがどのように関与しているかは体系化されていない.ここで,Gallagherらによれば同組成のCu-Zn, Cu-Al, Cu-In合金単相材は,この順にSFEは低くなることを示唆している.本研究では,Cu-Zn,Cu-Al合金線材とCu-In合金線材の組織を比較・検証しながら,銅合金伸線加工材の強度に及ぼすSFEの影響を検討する.
実験 / Experimental
φ15 mmの丸棒状Cu-5X合金(at.%)(X = Al, In, Zn)を高周波溶解にて溶製した.これを700 ℃で72 hの均質化した後,熱間鍛造および冷間溝ロール加工にてφ3 mm材を得た.さらに,これを500 ℃で焼鈍後,水中に急冷して固溶体単相とした.各合金単相φ3 mm材をφ0.1 mmまで室温でダイス伸線加工し,線材の組織,機械的,電気的特性を電界放出走査型顕微鏡(FESEM),透過型電子顕微鏡(TEM),電子線後方散乱回折法(EBSD),ビッカース硬さ試験,引張試験,電気抵抗率測定(四端子法)にて評価した.
結果と考察 / Results and Discussion
焼鈍後のCu-5Zn, Cu-5Al, Cu-5In合金(φ3 mm)はいずれも結晶粒径が10~20 μmの等軸粒組織であった.これらをダイス伸線加工すると,加工初期はCu-5Zn, Cu-5Al, Cu-5In合金の順に変形双晶が高密度に導入された.さらに加工を進めると結晶粒が微細化していく.φ0.3 mm伸線加工材(減面率99%)の結晶粒径dではCu-5Zn合金で1.1 μm, Cu-5 Alで0.54 μm, Cu-5 Inで0.34μmとなり,SFEを用いて下記のように表すことができた.ln(d/b) = 14.3+1.14 ln(γ/Gb) … (1)ここで,γはSFE(mJ/m2),bはバーガースベクトルの大きさ(nm),Gは剛性率(GPa)である.また,いずれの合金の強度も伸線加工に伴って増加したが,Cu-5Zn, Cu-5Al, Cu-5In合金の順で増加分が顕著になった.強伸線加工材ではSFEが低い合金ほど転位増殖による強化よりも結晶粒径微細化による強化が優勢になることが見積もられた.つまり,固溶InはZn, Alよりも銅のSFEを低下させる効果が大きく,これに起因して,強伸線加工による結晶粒微細化が顕在化し,高強度化するといえる.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考文献 https://doi.org/10.1016/j.jallcom.2022.166124謝辞 FIBによるTEM観察用の試料作製はマテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)事業 兒玉裕美子氏のご協力を賜った.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Yasunori Abe, Mechanical Strength and Electrical Conductivity of Cu–In Solid Solution Alloy Wires, Metallurgical and Materials Transactions A, 54, 928-938(2022).
DOI: https://doi.org/10.1007/s11661-022-06938-1
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件