【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.25】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22TU0002
利用課題名 / Title
Zn,Y元素添加Mg合金の電子構造研究
利用した実施機関 / Support Institute
東北大学 / Tohoku Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
マグネシウム基合金, Mg基時効析出合金, 長周期積層規則Mg合金,電子顕微鏡/Electron microscopy,電子分光
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
佐藤 庸平
所属名 / Affiliation
東北大学 多元物質科学研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
次世代軽金属強化材料として注目されているMg合金では、遷移金属元素と希土類元素による短距離秩序クラスター構造の形成がその力学強化メカニズムに主要な役割を果たしていると考えられている。とくにLPSO型Mg合金では、六方最密構造のMgマトリックス中の積層欠陥にTM・RE元素が濃化した硬化層を形成し、TM元素およびRE元素によるTM6RE8クラスター構造が確認されている。近年、ZnとY元素を希薄に固溶したMg合金においても、LPSO型Mg合金と同等の力学特性があることが分かり、その強化メカニズムの解明が求められている。希薄Mg合金の濃化層では、Zn・Y元素の原子配置がLPSOに比べランダムであり構造の正確な決定には至っていなかった。本研究では、STEM-EELS測定を用いてZnおよびYの電子構造および組成比を評価し、LPSO型Mg合金との違いを明らかにすることを目的とした。
実験 / Experimental
希薄Mg合金(Mg99.2Zn0.2Y0.6)と組成比が明らかなLPSO型Mg合金(Mg75Zn10Y15)のZn-およびY-L2,3スペクトルの測定を行った。STEM-EELS測定は、透過型電子顕微鏡ARM200Fを用いて、加速電圧200kVにて測定を行った。電子プローブは0.8Å程度、エネルギー分解能は1eV程度であり、濃化層にのみ電子線を照射してスペクトルを取得した。
結果と考察 / Results and Discussion
希薄Mg合金のZn-L2,3スペクトルをLPSO型Mg合金と比較すると(図(a))、希薄Mg合金のほうが0.5eVほど高エネルギー側にシフトしている様子が観察され、希薄Mg合金中のZnの電荷がLPSOに比べわずかに減少していることが明らかになった。またY-L2,3スペクトルをL2ピーク強度で規格化して比較すると(図(b))、希薄Mg合金のL3ピーク強度がLPSO型Mg合金に比べ増加しており、Y元素の4d電子軌道の配置がLPSO型Mg合金とは異なっていることが示唆された。すなわち、希薄Mg合金のZnおよびYの電子構造がLPSO合金とは異なっていることが実験的に示された。
Zn-およびY-L3吸収スペクトル強度からMFS-Mg合金中の硬化層での組成比Zn/Yを、EELSにおけるkファクター法を用いて評価した。kファクターは組成比が明らかなLPSO型Mg合金(Zn/Y=0.75)から決定し、MFS-Mg合金の組成評価に適用した。その結果MFS-Mg合金の組成比はZn/Y~0.5と見積られ、LPSOに比べてZnが不足した組成であることが明らかとなった。
以上の結果から、希薄Mg合金中の濃化層のZnおよびYによるクラスター構造は、LPSO型Mg合金に存在するZn6Y8クラスターとは異なっていることが示唆された。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
希薄Mg合金(Mg99.2Zn0.2Y0.6)およびLPSO型Mg合金(Mg75Zn10Y15)の濃化層から測定した(a)Zn-L2,3および(b)Y-L2,3スペクトル。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究は、科学研究費補助事業新学術領域研究「ミルフィーユ構造の材料科学」(21H00089)の助成を受けて行われた。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Yohei K. Sato, STEM-EELS/EDS Chemical Analysis of Solute Clusters in a Dilute Mille-Feuille-Type Mg–Zn–Y Alloy, MATERIALS TRANSACTIONS, 64, 950-954(2023).
DOI: 10.2320/matertrans.MT-MD2022023
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Yohei K. Sato, Daisuke Egusa, Hidetoshi Miyazaki, Koji Kimura, Mitsuhiro Itakura, Masami Terauchi, Eiji Abe, "Electronic structure of Mg-Zn-Y cluster in dilute Mg alloys studied by STEM-EELS", LPSO/MFS2022, 2022/12/14
- 佐藤庸平、江草大佑、木村耕治、宮崎秀俊、板倉充洋、寺内正己、阿部英司, "STEM-EELSを用いたMg-Zn-Y合金の電子構造の研究", 日本金属学会2022年秋期大会, 2022/9/20-23
- 佐藤庸平、寺内正己、江草大佑、木村耕治、宮崎秀俊、板倉充洋、阿部英司, "電子線分光法によるMg-Zn-Y合金の電子構造の研究", 日本顕微鏡学会第78回学術講演会, 2022/5/11-13
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件