利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.14】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22HK0041

利用課題名 / Title

金属材料の照射損傷組織の発達過程のモデリング

利用した実施機関 / Support Institute

北海道大学 / Hokkaido Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

照射損傷,電子顕微鏡/Electron microscopy,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

佐藤 裕樹

所属名 / Affiliation

広島工業大学 工学部 知能機械工学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

阿部陽介

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

大久保賢二,谷岡隆志

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),共同研究/Joint Research


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

HK-103:マルチビーム超高圧電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

超高圧電子顕微鏡を用いた電子照射下その場観察により,鉄と銅に形成される格子間原子集合体の一次元(1D)運動過程を調査するとともに,1D運動が集合体の形成と成長に与える影響を明らかにすることを目的としている.今年度は銅の格子間原子集合体の一次元(1D)に対する不純物の影響を調査した.

実験 / Experimental

 使用した材料は純度の異なる5種類の銅(公称純度9N, 6N, 5N, 4N, 3N)で,それぞれの材料から次の3つの方法で照射用試料を作製した.1)インゴットから切り出した小片を圧延して厚さ約0.1 mmのシートとし,そこから3 mmφディスクを打ち抜き,ひずみ取り焼鈍(950℃,1時間)を行った『標準試料』.2)インゴットから切断,機械研磨および電解研磨により厚さ約0.1 mmのシートを作製し,そこから打ち抜いた3 mmφの『熱処理なし試料』.3)インゴットから切り出した数ミリ角の小片にひずみ取り焼鈍(950℃,1時間)を行なったのち,上記2) の方法で作成した『バルク熱処理試料』.三者ともに電解研磨を行なって透過電子顕微鏡用薄膜試料とした.超高圧電子顕微鏡(北海道大学JEM-ARM1300)を用いて加速電圧1250kVで電子照射を行い,導入される格子間原子集合体の形成,成長と一次元(1D)運動をその場観察し,外部カメラを用いて動画として記録した.照射温度は室温(300 K),照射強度は0.007 dpa/sとした.

結果と考察 / Results and Discussion

高純度の9Nと6Nの熱処理なし試料では,標準試料に比べて,格子間原子集合体の数密度は1/10以下で,平均サイズは4倍以上であった.また1D運動の頻度は10倍以上で距離は2倍以上であった.したがって標準熱処理(厚さ約0.1 mmの試料の熱処理)は格子間集合体の形成促進と成長抑制,さらに1D運動の抑制効果をもつことを示唆している。一方でバルク熱処理試料と熱処理なし試料に顕著な差は見られないことから,バルク熱処理(数ミリ角のブロック試料の熱処理)は格子間原子集合体の形成・成長と1D運動挙動に著しい影響を与えないと考えられる.
一方で低純度の5N,4N,3Nでは,受け入れ材の強い歪みのため熱処理なし試料で実験はできなかったが,バルク熱処理試料と標準試料に顕著な差は見られなかった.また標準熱処理試料で5種類の純度の試料を比較すると格子間原子集合体の数密度,サイズ,1D運動挙動に顕著な差は見られなかった.
以上のことから,入手した材料に最初から含まれている残留不純物と試料作製の際の標準熱処理で導入される不純物の両方が格子間原子集合体の形成・成長と1D運動挙動に影響していること,特に高純度試料では試料作製時の熱処理で導入される不純物に注意を払う必要があることが示唆された.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 超高圧電子顕微鏡で電子照射した銅に形成された格子間原子集合体の1D運動距離分布を材料純度5種類と試料作製方法3種類で比較したもの.照射温度は室温(300 K),照射強度は0.007 dpa/s.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本実験を遂行するにあたり,北海道大学超高圧電子顕微鏡室の大久保 賢二氏,谷岡 隆志氏をはじめとするスタッフの皆様の支援を受けました.この場を借りて御礼申し上げます.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Y. Satoh, Variation in formation and migration of self-interstitial atom clusters in electron irradiated copper with material purity and specimen preparation method, Philosophical Magazine, 102, 1152-1172(2022).
    DOI: 10.1080/14786435.2022.2042610
  2. Y. Abe, Vacancy migration in α-iron investigated using in situ high-voltage electron microscopy, Philosophical Magazine, 102, 1173-1193(2022).
    DOI: 10.1080/14786435.2022.2041216
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 発表した成果 1次元運動挙動を用いた銅における微小格子間原子型転位ループの型の同定(口頭) ,発表者氏名 廣田将一 , 佐藤裕樹 , 大久保賢二 , 谷岡隆志,発表した場所 日本金属学会,発表時期 令和4年3月15日, 国内
  2. 掲載した論文 電子照射により導入された銅の微小格子間原子型転位ループの型の同定, 発表者氏名 廣田将一, 発表した場所 修士論文(広島工業大学), 発表時期 令和4年2月, 国内
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る