利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22HK0017

利用課題名 / Title

非線形超音波を用いた中性子照射脆化の非破壊的検出技術開発に関する研究

利用した実施機関 / Support Institute

北海道大学 / Hokkaido Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

軽水炉圧力容器鋼,分子動力学法,熱時効,電子顕微鏡/Electron microscopy,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

沖田 泰良

所属名 / Affiliation

東京大学大学院工学系研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

HK-301:環境セル対応透過電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

結晶性材料内部に形成する転位,析出物等のナノ組織を非線形超音波(NLU)応答により検出する技術は,様々な分野で適用が試みられてきた.また,NLUで頻繁に用いられてきた第2次高調波発生(SHG)よりも信頼性・再現性が高いことが期待される周波数混合も近年提案されている[1].科学的根拠に基づいた非破壊検査技術の構築には,ナノ組織と信号変化の関係を物理メカニズムに基づき解析することが求められる.特に,分子動力学(MD)法は原子レベルの挙動から同関係を把握することができる強力な手法である.本研究では,MDを用いて周波数混合とSHGのNLU応答の整合性を検証し,Feを対象とした完全結晶,並びに結晶欠陥導入時の混合周波数応答を定量化することを目的とする.

実験 / Experimental

MD計算はLAMMPを用い,Fe原子間ポテンシャルは[2]によって与えた.x[100] 217nm, y[010] 5.7nm, z[001] 5.7 nmでy, z方向周期境界,x方向自由境界,0Kで常圧のセルを設定し,x=0nm原子に時間強制変位を与えることで周波数の異なる2つの弾性波(周波数f1, f2,振幅a)を導入した.セル内には,0 ~ 1%の濃度で原子空孔をランダムに分布させた.波動伝搬後,原子面の変位時系列データに対して,それらの平均値を高速フーリエ変換等の周波数解析を行うことにより,周波数f1±f2成分の振幅a±を定量化し,非線形パラメータβ±を以下の式によって求めた.
β± = a± / 4a2k1k2xD
k1, k2: 導入周波数の波数,xD: 波の伝播距離

結果と考察 / Results and Discussion

弾性論ではβは周波数や伝播距離に依存しない一方,本計算では周波数・伝播距離の増大に伴って減衰が大きくなることがわかった.また,各々の伝播距離での振幅aを用いることにより,減衰を補正できることも明らかとなった(図1).更に,SHG,混合成分の各々の手法で算出されるβは良い一致を示した.これらの結果から,周波数混合はナノ組織発達を推定する非破壊検査技術となることが期待される.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 Nonlinear parameter β as a function of propagating distance


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] N. Li et al., NDT & E Int., 79, 63 (2016). 
[2] G. Bonny et al., Phil. Mag., 89(34-36) (2009)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. S. Hayakawa et al., Comp. Mater. Sci. 218 (2023) 11987.
  2. K. Tsugawa et al., Comp. Mater. Sci. 215 (2022) 111806.
  3. K. Tsugawa et al., Comp. Mater. Sci. 210 (2022) 111450.
  4. T. Okita et al., IFERC Workshop on GPU programming 2022/6/23
  5. 松田ら,日本原子力学会2022年秋の大会, 2022/9/7
  6. 山本ら,日本原子力学会2022年秋の大会, 2022/9/7
  7. H. Tagawa et al., Nuclear Materials 2022, 2022/10/18
  8. Y. Yamamoto, et al., Nuclear Materials 2022, 2022/10/18
  9. N. Matsuda, et al., Nuclear Materials 2022, 2022/10/21
  10. 沖田泰良, 第34回日本原子力研究開発機構システム計算科学センターワークショップ, 2023/2/24
  11. 佐藤ら,日本原子力学会2023年春の年会, 2023/3/14
  12. 田川秀明、”原子論的解析を用いたメゾスケール現象のモデル化手法”、修士論文、令和5年1月25日
  13. 松田那由多、”ナノ組織を検出する非破壊検査技術構築のための分子シミュレーション”、修士論文、令和5年1月25日
  14. 山本耀二郎、”逐次活性化探索を用いたkinetic Monte Carlo法によるメゾタイムスケールでの結晶性材料の材質変化シミュレーション”、修士論文、令和5年1月25日
  15. 熊坂一輝、”逐次活性化探索を用いたkinetic Monte Carlo法によるヘリウムバブル拡散現象シミュレーション”、卒業論文、令和5年1月31日
  16. <2022年度日本原子力学会計算科学技術部会,部会優秀学生講演賞>松田那由多、東京大学大学院工学系研究科、ミクロな材料劣化を検出するための分子シミュレーション手法構築に貢献した、2023.3.13
  17. <2022年度日本原子力学会計算科学技術部会,部会優秀学生講演賞>山本耀二郎、東京大学大学院工学系研究科、顕微鏡と比較可能な分子シミュレーション手法構築に貢献した、2023.3.13
  18. <2022年度ABS賞>山本耀二郎、東京大学大学院工学系研究科、金属材料中での軽元素の挙動を解析する手法の構築に貢献した、2023.3.23
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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